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“歌手兼女優”で大成するポテンシャル持つ大原櫻子 王道スタイルの正当な後継者

 薬師丸ひろ子、小泉今日子、原田知世……かつて、ソロアイドル全盛の1980年代には当たり前だった“女優兼歌手”という立ち位置。昨今でも歌手デビューする女優や、女優に挑戦する歌手はいるものの、どちらかに活動の比重を置かなければならないために“片手間感”は否めず、両方の分野で大成している若い人は少なくなってしまった。そんな中、女優兼歌手の“正統派の後継者”とも言うべき活躍をしているのが、大原櫻子だ。歌手としては昨年の『NHK紅白歌合戦』に初出場する一方で、月9ドラマ『恋仲』出演、岸谷五朗・寺脇康文の演劇ユニット「地球ゴージャス」公演で舞台デビューを果たすなど、女優としても順調にキャリアを重ねているのだ。

昨年11月、ORICON STYLEのインタビューに応じた大原櫻子(写真・尾鷲陽介)

昨年11月、ORICON STYLEのインタビューに応じた大原櫻子(写真・尾鷲陽介)

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■片手間ではなく“歌手兼女優”として両軸で評価される大原櫻子

 2013年に映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』のヒロインの座を射止め、さらに劇中バンドのボーカルとしてCDデビューと、絵に描いたような“シンデレラガール”として、無名の新人から一気に知名度を上げた大原。歌手としては、2014年に入ってからは全国各地でのフリーライブを通して人気を伸ばし、6月に「大原櫻子(from MUSH&Co.)」名義でカノ嘘スピンオフ・シングル「頑張ったっていいんじゃない」、同年11月に1stソロシングル「サンキュー。」を発売。映画の役柄を超えてソロ歌手として同年代の女性から絶大な支持を受けるようになった。その人気を決定づけたのは、昨年の「第93回全国高校サッカー選手権大会」決勝戦、埼玉スタジアム2002での「瞳」の歌唱だ。大原が初めて作詞にも参加した同作は多くの共感を呼び、同曲で『紅白』初出場に至った。

 それと並行して、女優としても、『カノ嘘』のあと、2014年4月に出演した『死神くん』(テレビ朝日系)で注目を集め、同年7月期の『水球ヤンキース』(フジテレビ系)にて連続ドラマに初のレギュラー出演。昨年7月期に主演・福士蒼汰の妹役で出演した『恋仲』では、地味な見た目だった中学生時代と、成長して綺麗に垢抜けた上京後の姿を演じ分け、“ギャップがすごい”と話題を集めた。『カノ嘘』でのデビュー以降、音楽プロデューサー・亀田誠治氏も絶賛する【歌声】の力やほんわかしたキャラクターで、特に同世代の支持を受けてきた大原だが、前述の「瞳」歌唱や『恋仲』などを通して、30代以上にも認知が拡大。昨今、女優が歌手デビュー、または歌手が女優に挑戦する事例は多いが、両方の分野で評価を受けている若手の“歌手兼女優”としては、彼女は一歩抜きん出ている印象がある。

■歌手&女優として活躍できることがトップアイドルの条件だった

 今でこそ「女優が歌手デビュー」「歌手が女優に挑戦!」というと、“どうせ本業の片手間にやるんでしょ”と、“副業”的な扱いとされることが多いが、1980年代のソロアイドル全盛期までさかのぼれば、歌手、女優の両面で芸能界において活躍することは珍しくなかったし、事例はいくらでもあった。その代表格と言えば、やはり薬師丸ひろ子だろう。1978年に映画『野生の証明』でスクリーンデビューした薬師丸は、1981年に主演した映画『セーラー服と機関銃』で歌った主題歌「セーラー服と機関銃」が映画とともに大ヒット。その後も映画『Wの悲劇』の「Woman“Wの悲劇”より」など、映画主演&主題歌が立て続けに大ヒットを飛ばし、“歌手兼女優”の筆頭格に。なお、「Woman "Wの悲劇"より」は発売から30年を経た2014年、初出場となった『紅白』で歌唱が実現した。

 また、『あまちゃん』で薬師丸との共演で感動を呼んだ小泉今日子も、歌手、そして女優として大成したひとり。今でこそ活動の比重は少なくなっているものの、『スター誕生!』をきっかけに1982年、シングル「私の16才」でアイドルとしてデビューした小泉は、「渚のはいから人魚」「なんてったってアイドル」など、次々とヒットを飛ばし、一躍トップアイドルに。一方で、ドラマ、映画などへの出演で女優としても活躍し、年齢を重ねた今では実力派女優として、今でも“同世代の憧れ”として君臨している。

 もちろん、大原はアイドルではないのだが、もともと持っている耳に残る声質、まだ未知数ではあるが評価が高い演技力、素朴で可愛らしいルックスは、どこか1980年代のアイドルも彷彿させる。さらに、“シンガー・ソングライター”ではなく、彼女が日々考えていることや言葉を、プロデューサー・亀田誠治というフィルターを通して世に送り出していることが、客観性を生み、多くの若者から共感を得るのかもしれない。これも、自ら作詞・作曲を手掛けるのではなく、専業作家が質が高く普遍的な楽曲を提供し、ヒットしていたアイドルに通じるところがある。そういった意味では、大原は昨今少なくなった“歌手兼女優”という王道スタイルの、正当な後継者なのかもしれない。

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