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世界的ブームの兆し「KENDAMA」 レトロ玩具・けん玉が“主役”になる日はくるのか?

 けん玉が「KENDAMA」として世界的ブームの兆しを見せている。海外での盛り上がりが“逆輸入”されるかたちで、日本でも数年前から若者の間で人気を集めており、オリジナルけん玉で観光振興を図る自治体なども現れた。大正時代から日本の庶民の遊びとして親しまれ、根強いファンを持つけん玉。その名前を誰もが知る一方で、ブームとしてはこれまで“一過性のトレンド”で終わってしまった感も否めなかった。今回のブームは、一大ムーブメントへとなることができるのだろうか。

日本の若者の間でも注目が高まっているけん玉 (C)oricon ME inc.

日本の若者の間でも注目が高まっているけん玉 (C)oricon ME inc.

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■近代化に成功していない「けん玉」

 日本でのけん玉の歴史は古く、原型となった玩具が伝わったのは江戸時代と言われている。大人の遊びから子どもの遊びへと変化していくなかで、大正時代に「日月ボール」が発売されたことで、現在の見慣れたけん玉の形状が確立。1970年代半ばに日本けん玉協会が設立されたことや、競技用けん玉が発売され規格が統一されたことで、認知が飛躍的に高まった。しかし、過去に何度かのブームはあったものの、いずれも認知の高さほど普及と呼べるまでには至らなかったように感じる。近年のけん玉ブームは、一部の競技者と愛好者などを除いては、一過性のトレンドに留まってしまったのだ。

 ではなぜ普及しなかったのだろうか? 同じくレトロ玩具として人気を集める「ヨーヨー」「ベーゴマ」と比較しながら探っていきたいと思う。まずは、単純に玩具としての難易度の高さがある。「ヨーヨー」「ベーゴマ」はシンプルな動作で見た目にも派手な技を繰り出せるが、「けん玉」は基本技でもコツをつかむまでが難しい。それにも関わらず、技としては地味だ。そこが味でもあるのだが、現代の“子供の遊び道具”としては、やや面白みに欠ける部分もある。さらに、大人もコツをつかめなければ「つまらない」と感じてしまうのだ。

 また、いまだに“近代化”が成功していないという点も理由のひとつだろう。「ヨーヨー」は近未来的なデザインと技の自由度が高い競技用の「ハイパーヨーヨー」が発売され、大ブレイク。また、「ベーゴマ」はタカラトミーが現代版ベーゴマ「ベイブレード」を商業展開したことで、小学生の間で大流行した。ピーク時より規模は縮小したものの、子どもの玩具として定着している。しかし、「けん玉」は統一規格が定められたことにより、公平に競技ができるようになった一方で、紐の長さは1ミリの誤差も許されないなど、自由度は狭まってしまった。そのため、繰り出せる技も限られてしまい、近代モデルが発売されてもなかなか浸透しにくいのだ。

■一過性のトレンドからの脱却

 3つ目の理由としては、ドラマや映画、アニメなど、「けん玉」がいまだに映像作品の主役になれていないことも挙げられるだろう。「ヨーヨー」はドラマ『スケバン刑事』シリーズ、「ベーゴマ」はアニメ『ベイブレード』シリーズで作品の“顔”となり、ストーリーやテーマに大きな影響を与えた。一方で、「けん玉」は前述の通り、動作としてはやや派手さが少ないこともあって、主役となる映像作品のヒットは生まれていない。さらに大きなムーヴメントとなるには、「けん玉」を軸としたメディアミックスの成功が必要なのだ。

 とはいえ、昨今の盛り上がりは、今後「けん玉」が“主役”になる可能性を秘めている。海外で流行中の「エクストリームけん玉」はストリートカルチャーと融合し、技を繰り出すときの動作の激しさを追及したり、カラフルな海外製けん玉が発売されたりと、ファッション性が高い。オシャレな海外製けん玉は日本にも輸入されており、日本国内の若者の間でも「スタイリッシュでカッコいい」というイメージが広がっているようだ。従来の概念にとらわれず、技を開発するなど自由なスタイルで楽しむ人も。また、TBSテレビがこの3月に新事業「エクストリームけん玉推進プロジェクト」を新設するなど、国内企業の期待感も高まっている。ブームを超え“ムーブメント”として新たな価値観を提示する可能性は十分にあるのだ。

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