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町おこしとの連携で独自に進化する音楽フェス

 「フジロックフェスティバル」や「ライジングサンロックフェスティバル」の成功により、全国各地へと音楽フェスは広がっている。地元自治体やボランティアが主催するフェスも回数を重ね、大規模化が進む。こうした町おこしも兼ねた地域連携という点は、音楽シーンの発展においても、大いに重要となる。

■地域特性も感じることができるサーキット型フェス

 数万人を収容できる場所で、複数のステージで邦楽アーティストが、ずらりと名を連ねるメガフェスに対するカウンターの1つとして発展してきたのが、アメリカの「サウス・バイ・サウス・ウエスト」や「CMJ ミュージック・マラソン」などを先駆けに、日本でも00年代から様々な町、地域で開催されるようになった「サーキット型フェス」だ。オーディエンスはパス代わりのチケットを購入すれば、そのエリアのライブ・ハウスを出入り自由に見て回ることができる。スタンプラリーのようなスリルやスピード感、町中で買い物をする感覚にも似た遊び心も手伝い、参加者には概ね好評だ。

 なかでも、大阪心斎橋界隈で毎年秋に行われているFM802主催の「MINAMI WHEEL」は日本最大級の規模を誇る。メジャーメーカーや事務所などが関わっていることから新人ショウケースとして認識されている側面もあり、各地から業界関係者が駆けつけるイベントともなっている。

 かたや、同じ大阪の心斎橋界隈で夏に繰り広げられる「見放題」は、有志による実行委員会が企画制作をしていることもあり、目線はあくまでインディー・ベース。だが、08年の第1回目こそ小規模だったものの、出演アーティスト、会場数は年々増え、今や関西の若い音楽ファンからの信頼も厚いイベントに成長している。前売3500円(+1ドリンク代)という低価格も良心的で、関西拠点のアーティストが多くなることから、その地域の音楽シーンのその時々の特性をあぶり出す結果となっているのも面白い。なお、関西では71年に大阪で生まれた野外コンサート「春一番」も、サーキット型ではないものの、同エリアの特色を活かした老舗イベントとして、地元音楽ファンから愛されている。

■町おこし的な目的を掲げたフェスも増加傾向に

 地域性と言えば、町おこし的な目的を掲げたフェスの増加も近年の大きなトピックだろう。そもそも「ライジングサンロックフェスティバル」が北海道、「ARABAKI ROCK FEST.」が宮城県、「夏の魔物」が青森県…と大型フェスのほとんどが地方開催となっており、「TAICO CLUB」(長野県)や「朝霧JAM」(静岡県)などクラブ・ミュージック系中心の野外フェスは、山海が近いエリアが似合うため、おのずと都市から離れた場所が選ばれることが多い。だが、その町に人を集めることを最初から目標にしたフェスには、アーティストも好意的に力を貸そうとする傾向があるようだ。

 長野県松本市で開催されるようになった「りんご音楽祭」は、実際に信州大学出身で信州に暮らす主催者が“松本の街の活性化”を掲げてスタートさせたが、9月半ばに2日間開催される今年度は、ハナレグミ、ZAZEN BOYZ、ヒップホップのSIMI LABなど曲者アーティストの名前がズラリと並んでいる。決して地の利のいい場所ではないだろうし、何かと勝手が悪いこともあるだろうが、志のあるアーティストは、そうした志あるフェスに出たがるものだ。最近は旅行代理店と組んだツアーも取り入れている。

 くるり主催の「京都音楽博覧会」、10-FEET主催の「京都大作戦」など多くのフェスを擁する京都では、毎年秋開催の「ボロフェスタ」が10年以上の歴史を重ねている。主催者はすべて有志たち。学生ボランティアの手も借りながらの運営は一貫してハンドメイドだが、出演したがる若手バンドは年々増えていて、主催者は嬉しい悲鳴をあげていると聞く。同じ京都には「いつまでも世界は」という名のサーキット型フェスも近年誕生。“学生の町”のイメージ・アップに一役を買っている。

 一方、東京に目を移すと、町ごとの規制もあるのか、大規模なものは意外とまだ見当たらない。「下北沢インディーファンクラブ」は、東京・下北沢にあるライヴ・ハウス、カフェ、CDショップなど、様々な店が全面的に協力をして行われた人気サーキット・フェスで、チケットは毎年即完するほどだったが今年は主催者の意向で開催が見送られた。曽我部恵一やcero など話題のアーティストが集結、インディー・バンド好きには堪らないフェスだっただけに再開が望まれる。

 とはいえ、その代わりに東京ではほぼ毎週末に話題のアクトが揃うイベントがあちこちで行われている。渋谷のライブハウス「WOMB」で、昨年1年間マンスリーで開催されていた「月間ウォンブ!」は、ブッキングから当日の進行までほぼ1人の手で開催されたものだったが、その手作り感と親密な雰囲気が人気を呼んだ。昨今はアイドルとバンドをミックスさせたフェスも増えており、これからはますます、独自企画のフェスや地域性が感じられ、ビジョンが明確なイベントが音楽ファンの支持を集めていきそうだ。(岡村詩野)

(ORIGINAL CONFIDENCE 14年9月8日号掲載)



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  • 知名度の有無やジャンルに関係なく主催者が「観たい! 呼びたい!」と思うアーティストをブッキングする「ボロフェスタ」。100人以上のボランティア・スタッフと主催者によって、会場設営からイベント運営までを行う、典型的なインディフェスだ。今年は10月24日から26日まで、京都KBSホール/METROにて開催する
  • 大阪・ミナミの21ヶ所のライブ会場で開催されるサーキット形式では日本最大級の規模である「MINAMI WHEEL」

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