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「海外展開」への転換期到来、J-POPの海外プロモーション

 「クールジャパン」というキーワードのもと、海外で日本文化が再評価され始めて久しいが、ことコンテンツ分野での「輸出」に関しては、一部の領域をのぞき、その波に乗ることができているとは言いがたい。音楽分野も例外ではないが、Perfumeきゃりーぱみゅぱみゅらの例を筆頭に、ライブの領域では、確実に「海外展開」が進み始めている。

日本のコンテンツの輸出額(11年3月発表の文化庁『日本のコンテンツの海外展開促進に関する基礎調査』より))

日本のコンテンツの輸出額(11年3月発表の文化庁『日本のコンテンツの海外展開促進に関する基礎調査』より))

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■「国内需要」依存から「海外展開」への構造転換

 ORIGINAL CONFIDENCE13年7月8日号で、IFPI「RecordingIndustry In Numbers 2013」に基づく12年の世界の音楽市場規模レポートを掲載したが、日本の年間音楽市場規模は44.2億ドルで、同44.8億ドルだったアメリカに匹敵し、シェア第3位だったイギリスの同13.3億ドルを大きく引き離している。全世界的な規模でのパッケージ市場の縮小傾向の中で、日本の場合は相対的にその縮小スピードが抑えられている結果という側面もあるわけだが、いずれにしても、これまでのところ、日本の音楽産業は世界有数と言える国内需要に支えられてきたと言っていいだろう。

 一方、今年4月、総務省が発表した12年10月時点の人口推計によれば、65歳以上の人口が調査開始以来、初めて3000万人を超えて総人口のほぼ4分の1を占め、総人口自体の前年同期に対する減少幅も28.4万人と、過去最大となった。少子高齢化、人口減ともに拍車がかかっており、音楽に限らず、あらゆる産業で前述のような「国内需要」をいかに維持していくのかという課題とともに掲げられているのが、活路としての「海外進出」という課題だ。

 近年、「クールジャパン」というキーワードのもと、「食」や生活様式などを含めた日本文化全般が海外で注目されており、コンテンツ関連では、特にアニメ、コミックの人気が高いとされている。実際、フランスの「JAPAN EXPO」、アメリカの「Anime
Expo」や「Otacon」など、日本のポップカルチャーの紹介に特化した大型コンベンションイベントが毎年、十数万人規模を動員していることも日本国内で広く報道されているが、コンテンツ関連の中で、現時点で輸出産業として成立しているのは、ゲーム分野だけである。

 「クールジャパン」として注目されること自体は日本にとって大きなチャンスだが、特にゲーム分野以外のコンテンツ産業にとっては、今後、その魅力を理解してもらった上でコンテンツを海外で販売し、対価を回収する仕組みまで構築できるか否かが焦点となっており、政府もそのための戦略的なバックアップを開始している。特に今年、大きく動き出そうとしているのが、放送番組の海外展開に関する施策だ。

 総務省が13年6月に取りまとめた「ICT(情報通信技術)成長戦略」では、重点的に取り組むべき7つの事業の1つに「放送コンテンツの海外展開」を掲げ、日本芸能実演家団体協議会らが09年に設立していた映像コンテンツ権利処理機構(aRma)や日本レコード協会の協力のもとで、権利処理を迅速化。8月には放送、音楽、映像の各事業者や商社、政府関係者などが参画する社団法人を設立して、オールジャパン体制で海外展開を促進し、5年後には放送番組の輸出額を現在の3倍に増やすという目標値も設定している。

■ライブの領域では急速に進む海外進出

 一方、放送番組同様、国内の市場規模に対し、輸出額が極めて低い音楽分野でも、一昨年あたりから、再度、「海外展開」というキーワードを耳にすることが多くなった。特にライブの領域での海外展開が急速に拡大しており、例えば、今年2月から5月にかけて開催されたきゃりーぱみゅぱみゅのツアー「100%KPP WORLD TOUR 2013」では、全18公演のうち、8公演を欧米及びアジア各国で開催。Perfumeも昨秋、アジア各国をまわった「Perfume WORLD TOUR 1st」に続き、今年7月にはヨーロッパを舞台とする「Perfume WORLD TOUR2nd」を開催しており、これらの成功はテレビや新聞などを含む多くのメディアで伝えられた。

 日本音楽事業者協会、日本音楽出版社協会、日本音楽制作者連盟の3団体が共同で運営する海外プロモーションのためのプロジェクト「SYNC MUSICJAPAN」によれば、12年の1年間に海外でツアーもしくはライブを開催したJ-POP系アーティストは73組(ワールドツアー:9組/欧州:35組/北南米:18組/アジア:11組)。これに、世界各地のコンベンションイベントや音楽フェスへのライブ出演なども含めれば、海外でライブパフォーマンスを行った日本のアーティストはのべ177組に上る。

 今年はまだ7ヶ月しか経過していないが、13年の場合はすでに43組(ワールドツアー:5組/欧州:15組/北南米:12組/アジア:13組)が海外ツアー/ライブを開催し、イベント等へのライブ出演を含めれば、のべ123組が海外でのライブパフォーマンスを行っている(開催予定を発表した段階のアーティストを含む)。昨年の数値をさらに上回りそうな勢いを示しており、マス媒体で広く報道された前述のきゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeのケース以外にも、実に多くのアーティストが海外への展開を行っているのがわかる。

■ZEPPライブエンタテインメントの新たな取組みも

 一方、これらの傾向と軌を一にするもう一つの最近のトピックとしてあげられるのが、ZEPPライブエンタテインメントの取組みだ。

 現在、国内6ヶ所でZeppを運営し、特に昨年のホールネットワークから現社名への改称を伴う組織再編以降、ライブプロモート事業にも注力している同社は、今年度から主にそのライブプロモートの領域における海外展開を本格化させている。5月に香港でライブイベント「Kawaii POP Festivalーsupported by @JAMー」を現地のプロモーター、PuffinEntertainmentと共催したのを皮切りに、9月にインドネシアで、11月にシンガポールで開催される「アニメ・フェスティバル・アジア(AFA)2013」に出資し、実行委員会に参加。その他、アジアを中心とする海外での音楽・カルチャーイベントへの出資参加、企画・運営等を次々に行っていく予定だ。ライブハウス・Zeppの将来的な海外展開も視野に入れたもので、それらインフラ面と、ライブプロモーターとしての側面双方から、日本のアーティストによる海外での活動をサポートしていく。

 ライブの領域では、以上の通り、最近の事例だけでも、すでに活発な動きが見られるが、これらの「熱」を受け入れ側である海外各地に伝えるべく、各音楽団体も様々な新しい試みを開始している。日本の音楽・アーティストが海外に進出するための後方支援として、本格的な海外プロモーションを行う各団体に共通するのは、情報発信そのものを活動の中心としながら、アーティストやレーベル、プロダクションらが前述の「回収」の仕組みをいかに構築するかまでをも視野に入れ、活動を展開しているという点だ。(ORIGINAL CONFIDENCE 13年7月29日号掲載)

関連写真

  • 日本のコンテンツの輸出額(11年3月発表の文化庁『日本のコンテンツの海外展開促進に関する基礎調査』より))
  • 2012年、2013年に海外ツアーを行った(行う)主なアーティストのリスト
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