『SUMMER SONIC 05』で大穴的存在だったのが、当時は日本デビュー前だったジョニー・パニックであろう。サウンドも、ビジュアル(タータンチェック&モヒカン)もロンドン・パンクの醍醐味を凝縮したそのパフォーマンスも、“パンクってこうだよ!”と感じさせる音楽としての強力な文体を滲ませ、そこに居たオーディエンスのすべての心をわしづかみにしていった。その意味では正に“待望”の名に相応しいデビュー作『ヴァイオレント・ダズリング』をひも解きながら、バンドが考えるパンクについて迫ってみた。
――元々のパンク・ロックとの出会いは?
【ロブ】 お姉さんがザ・クラッシュ、セックス・ピストルズ、バズコックスなんかが好きで、自然と耳に馴染むようになっていたんだ。今考えると、パンクとの出会いは運命みたいなものだったと思う。それらのバンド達に共通して感じたのは、音楽がそのまま生き方を語っているということだった。彼等は、何と闘うべきかとか、何かを変えることの大切さを教えてくれた。パンクと出会う前の僕は悪夢的な状況にあったんだけど、パンクと出会ったことで救われた気がしたんだ。居場所が見つかったという意味でね。
──英米で有名な『ジョニー・パニックと夢の聖書』というサイコセラピー小説からバンド名がとられたそうですが。
【ロブ】 小説のジョニー・パニックとは夢や希望のような存在だけど、“僕達があのジョニー・パニックだ”と言いたい訳ではない。“そうありたい”と言った方がいいかな。夢や希望を抱くことの大切さをキッズ達に教えたいから。どの世界でもキッズ達はいつもエネルギーを持てあましている。それを如何にしてポジティブな方向に持っていってあげられるか…っていうことを僕達は音楽を通して伝えようとしているんだ。たとえネガティブなことを歌っていたとしても、写真のネガ/ポジの関係のように、そこには必ずポジティブな解決策が示されている。そう、かつて僕がパンクに生きる姿勢を教わったようにね。
──1stアルバム『ヴァイオレント・ダズリング』ですが、ロンドン・パンクと50's、60'sポップの狭間にサウンドがあるような印象を受けました。
【ロブ】 僕はロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」がとにかく好きなんだ。すべての面で完璧だからね。少ない程に多い・・・っていうのかな、わずかな尺なんだけどサウンド的には深い。それと同じことを僕達はパンクのフォーマットでやろうとしているんだ。
──作品にはウィノア・ライダーを扱った曲がありますよね。ジョニー・パニックが歌うと、かつての恋人ジョニー・デップの影が自然に浮かんでくるのですが。
【ロブ】 それは深読みし過ぎだよ(笑)。ウィノア・ライダーはあくまでもセレブの象徴的存在として挙げただけで、その行動を逐一報道する風潮に対してくさびを打ち込んでやろうとした曲だ。ウィノアでもマドンナでもいいんだけど、セレブがどういう服を着ていただの、どういうレストランで食事をしただの、そんなことどうだっていいことだろ。街の裏側では、シリアスな事件が多発しているのに、何も知らされない。僕らはそういう社会に対して疑問を持ち、それをパンクという形で発表している。だから聴いてくれるキッズ達にも、何かを問うことの大切さを知ってほしいんだ。
──社会に対する皮肉は「バーン・ユア・ユース」のPVにも表れているような気がするのですが。
【ロブ】 あれはロンドンのシティというところが舞台なんだ。お金が絶えず生み出されている金融の中心地なんだけど、そこで僕達がゲリラ的にライヴをやる姿をシューティングしたんだ。パンクな画だと思うけど、観た人の気持ちをプッシュできたらいいよね。曲自体も、キッズ達に向けて、自分を大切にしろ、ということが歌われているから。
(文:安部薫) |