ORICON STYLE

2010年10月27日
その勢いは留まるところを知らず、エンターテインメントシーンを突き進むAKB48。 そんな彼女たちが、これまでとは異なるスタイリッシュさのなかに 深くて強い、そしてリアルでシリアスなメッセージを込める 18thシングル「Beginner」をリリースした。そこで届けようとする想いとは……!?

メンバーの心情とシンクロするリアル

 みんなで遊んでいた遊園地の真ん中で、首筋に何かが押し当てられた。
 金属片なのか、鋭利なものなのか。
 見えない何かのひんやりとした感触と痛みの予感が背筋を凍らせる。
 背中でそれを差し出しているのは、笑っていたはずの前田敦子か、篠田麻里子か、それとも……。

 AKB48のニューシングル「Beginner」。
“じゃんけん大会”が行われた日本武道館でPVが初公開され、客席をどよめかせた。映画『嫌われ松子の一生』『告白』の中島哲也監督による「痛みを通して“生”の意味を問う」映像。“生”を問いかけるメッセージは、もちろん曲にも息づいている。
 <僕らは生きているか? 明日も生きていたいか?>

 国民的アイドルグループとなり、「ポニーテールとシュシュ」「ヘビーローテーション」と明るく楽しいアイドルソングを立て続けに大ヒットさせた後で、このシリアスな曲。
 大ブレイク前に、いじめと自殺をテーマにしたシングル「軽蔑していた愛情」を出したりもしているが、まさか耳目を集めたタイミングで、またこっちのカードを切ってくるとは誰も思わなかっただろう。

 アイドルの歌はメディアである。メッセージを形にするための装置。
 だが、フロントに立つアイドル自身がそのメッセージとシンクロしなければ、伝わることはない。
 いつになくキツめの目元にメイクしたメンバーたちのジャケットやPV。
 冒頭<In your position set!>と高橋みなみが送るサインにより、センターのメンバーが異なる6バージョンのフォーメーションが用意された「Beginner」は、単調な旋律がリピートするAメロから、ボーカルのむき出し感が強い。
 スタイリッシュなメロディに不穏な空気を醸すアレンジ。
 そして、重厚に歌い上げるサビでは装飾が取り払われ、一途な想いが真っすぐ突き抜ける。
 <僕らは夢見てるか?> <支配された鎖は引きちぎろう>

 これはAKB48の歌であって、AKB48の歌ではない。
 日本中を席巻し天下を獲ったグループとしてのAKB48ではなく、個々のメンバーの心情とシンクロするリアル。
 大ブームの張本人でありながら、メンバーは「CDが何10万枚売れたと聞いても、“誰が買ってるんだろう?”って不思議」「横浜アリーナのときも本気で“絶対埋まらないよね”と話していました」などといっている。初コンサートの客席がガラガラだったトラウマ。

 そもそもAKB48は、各メンバーにとってゴールではないはず。選抜総選挙の開票イベントで、高橋みなみが「夢はソロ歌手としてデビュー」と語ったのが象徴する通過点。グループは大ブレイクしても、1人ひとりの夢はまだ始まったばかりのBeginner……。
 <古いページは破り捨てろ さあ 始めようぜ!>

 AKB48のライブは楽しい。大人数の壮観なダンスと歌による極上のエンターテインメント。そして、メンバーたちのキラキラした笑顔。だが、ステージに立つまでには……。
 山下達郎はかつて、歌謡曲全盛のなかでポップスを歌い続けた時代を、「すごく硬派な気分で軟弱な音楽をやっていた」と語っていた。
 強靭な意志に裏づけられた明るさとハイクオリティ。
 アイドルも笑顔をファンの前で見せ続けるためには、強くならなければいけない。
 <何もできない> <それがどうした?>

 強くなろうとし続けるAKB48だから歌えるメッセージ。それが痛みとして突き刺さるのは、こちらが強くなろうとするのを止めていたからだろう。
 でも、まだチャンスはある。生まれ変われば誰もがBeginner。
 首筋に押し当てられた冷たさが熱さに変わっていく――。

(文:斉藤貴志)

Beginner【初回完全限定生産盤/Type-A】
AKB48

Beginner【初回完全限定生産盤/Type-B】
AKB48

発売日:2010/10/27
[シングル] 
価格:\1,600(税込)
キングレコード 
品番:KIZM-90063/4

発売日:2010/10/27
[シングル] 
価格:\1,600(税込)
キングレコード 
品番:KIZM-90065/6

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Beginner【Type-A】
AKB48

Beginner【Type-B】
AKB48

発売日:2010/10/27
[シングル] 
価格:\1,600(税込)
キングレコード 
品番:KIZM-63/4

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発売日:2010/10/27
[シングル] 
価格:\1,600(税込)
キングレコード 
品番:KIZM-65/6

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2005年、秋元康による新たなアイドルプロジェクトとして『会いにいけるアイドル』をコンセプトに誕生。専用劇場である“秋葉原48劇場”で毎日ステージを行いながら、全国区デビューを目指す。
2006年2月1日、シングル「桜の花びらたち」でCDデビュー。10位を獲得。
以降、「会いたっかた」「制服が邪魔をする」「軽蔑していた愛情」などをリリース。
2009年10月21日、シングル「RIVER」をリリース。1位を獲得。
2010年2月17日、シングル「桜の栞」をリリース。1位を獲得。
2010年4月7日、アルバム『神曲たち』をリリース。1位を獲得。
2010年5月26日、シングル「ポニーテールとシュシュ」をリリース。1位を獲得。
2010年8月11日、シングル「ヘビーローテーション」をリリース。1位を獲得。
2010年10月27日、シングル「Beginner」をリリース。

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