ORICON STYLE

2005年09月28日
宇多田ヒカル ニューシングル「Be My Last」に込めた祈り
  ずっと聴きたかった宇多田ヒカルの音楽がここにある

 感情的で野性味があって、とにかく力強い。宇多田ヒカルのニューシングル「Be My Last」。Utada名義で発売したアルバム『EXODUS』を経て、世間の注目の中、久々に発売された楽曲としてはみじんの計算もない、魂の叫びを感じさせる音楽だ。これまで聴いてきたどの宇多田ヒカルとも異なる新鮮味を感じさせながら、ずっと聴きたかった宇多田ヒカルの音楽がここにある。つくづく彼女の何にも揺るがない芯の強さと、本質的な賢さを実感した。
 シンプルなサウンドは、自身初「ギターのみを使って作った曲」なのだという。そのせいか、耳元で弾き語りをされているような生々しさを感じさせる。シンプルなメロディ、コード、ギター。歌声は天に向かって何かを祈るかのように、感情的で・・・。
 主題歌にもなっている映画『春の雪』にインスパイアされ、輪廻をテーマにした歌詞は「母親は子供を育てながら、壊してもいる存在」だと歌う。たしかに親子とは互いに育てあう、壊しあう関係だ。すべての生物のベースにある、親子間のそんな性こそが、生き物の歴史であり、輪廻にもつながるというのだ。そんな深い深い意味を、荒々しい楽曲や叫び声のようなボーカル、シンプルな言葉の中に込めている。ちゃんと宇多田ヒカルらしいポップさをもって、誰の心にも届く楽曲に仕上げている。
  三島由紀夫原作で話題のこの映画の、この上なく美しいラストシーンに続いて、<母さんどうして> というインパクトの強い歌声が流れる――。せつない物語に、この歌が濃厚な後味と胸が高鳴るような興奮をもたらしてエンドロールは幕を閉じる。宇多田ヒカルの物語への深い理解力、音楽による意味の色付け方に驚いた。

三島作品への深い理解力

 三島文学との見事なコラボレーションは、彼女自身、作家の三島由紀夫が好きだからだというのも理由だろう。彼女は、三島由紀夫の魅力についてこんな風に語っている。

「やっぱすごいでしょ。もうこんなふうに書ける人いないっていうか・・・。最初『金閣寺』読んだんだよね。で、すごーい好きで、うん!こんなに病的な人間心理を誰でも共感できるように書くっていうか、なんかすごい才能がある人とかこそ、その自分の中での万人が共感するものをわかっていたり、すごい自覚があると思うのね。で、それがちょっと嫌な時もあったり・・・「なんて俺って普通なんだろ?」みたいな感じもありつつ、でもやっぱり「俺は特別」って気持ちもあるし、そういうのが作品になった時に見て面白い。ようするに、天才というものをまったく別の次元で見ちゃうと、それだけだと誰も共感しないハズじゃない? だから、みんなが読んでスゴイと思うとか、読んで「ギクッ」ってきちゃうっていうのは、ようするにほんと、一般の人が感じることを感じられるものを自覚して、逆にまた自分の中から・・・自分のことって一番わかりにくいじゃない?・・・それを出して魅せられるというのがスゴイなぁ・・・って」

 以上。同じく三島ファンとしては、彼女の考察は大いに納得のいくものなのだけれど。それは三島だけでなく、そのまま宇多田自身にあてはまるものだとも感じた(彼女自身に自覚があるかどうかは分からないけど)。普通はなかなか達することのできない“思考と感情の深み”をたぐりよせて、それを音楽につむぎながらも、みんなの本能を呼び覚ましたり、共感を呼ぶ。だからこそ、宇多田はやはり日本の音楽を牽引しうる存在なのだろう。やはり、流行りに乗る人なのではなく、流行りを作る人なのだ。  
                                 (文:芳麗)
PV
 
RELEASE
Be My Last
宇多田ヒカル
2005/09/28[シングル]
東芝EMI
【CD+DVD】
\1,320(税込)
TOCT-5002
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東宝配給映画「春の雪」主題歌
  【CD】
\660(税込)
TOCT-5001
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「Be My Last」特設サイト
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PROFILE
1983年1月19日、ニューヨーク生まれ。
1998年12月9日、シングル「Automatic/time will tell」でデビュー。FM局を中心に火が付き一躍話題に。じわじわとチャートを上昇し発売7週目で2位を獲得。
1999年2月17日、シングル「Movin'on without you」で初登場1位を獲得。
1999年3月10日、1stアルバム『First Love』リリース。2週連続1位を獲得。また800万枚という驚異的なセールスを記録しこの年の「第32回 日本レコードセールス大賞」受賞。
以降、「Addicted To You」「Can You Keep A Secret?」「SAKURAドロップス/Letters」を始めとする多くのシングルとリリースしたアルバム全てで首位を獲得、またセールス記録も次々と塗り替える。
2002年2月21日、米国で“Island Def Jam”との契約を発表。
2002年9月6日、紀里谷和明氏との結婚を公式HPにて発表。
2003年3月28日、宇多田ヒカル翻訳の絵本「エミリー・ザ・ストレンジ」発売。
2004年4月21日、シングル「誰かの願いが叶うころ」リリース。3月リリースのベスト・アルバム『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1』と合わせて、初の2週連続シングル・アルバム同時首位獲得。
2004年10月5日、“Utada”としてアルバム『EXODUS(エキソドス)』でIsland Records より全米デビュー。
2005年9月28日、ニューシングル「Be My Last」リリース。
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