浜田省吾の新曲「光と影の季節」は、前作「君に捧げるlove song」以来1年半ぶりとなる、まさに垂涎の作品。昨年は朋友のサウンド・プロデューサー水谷公生、新進の作家・春嵐との音楽制作ユニット“Fairlife”として、多彩なボーカリストと交流しながら平和への強い祈りを込めた楽曲を届けてくれたが、ソロとしての表だった活動は行っていなかった。それだけに、ビッグネーム浜田省吾の始動は、ファンの渇きを潤すだけでなく、ミュージック・シーン内外の大きな注目を集めるのだ。そしてその気になる中身だが…。
アコースティック・ギターの力強いストロークで幕を開け、シンプルで、だけど骨太なバンド・サウンドが追随するイントロが流れ出した瞬間、背筋に電気が走るほどの衝撃に見舞われる。なぜなら、あらためて原点に回帰したかのような、浜省テイスト全開の王道的ロック・チューンだからだ。そこに小細工はない。耳馴染みのよいメロディからは揺らぐことのない自信が漲り、“君に逢いたくて戻ってきたよ/〜長い旅の途上で夢見た季節”と歌う言葉に、今の彼の偽らざる心境が表れている。そう、彼はいまだ“on the road”、つまり旅の途中にいるのである。どれほどのキャリアや、他に真似のできない実績を積もうとも、彼はライブを通して新たな出会いや見果てぬ夢を追い求めて再び旅に出るトラベリンマン。さらにc/w には、1978年にリリースした3rdアルバム『Illumination』のラストを飾った、彼のステージには欠かすことのできない名作「Midnight Blue Train 」の2005年バージョンを収録。そうした、新旧の佳曲をとおしてミュージシャンとしての基本姿勢をことさらに打ち出したところに、ただならぬ決意を感じ取ることもできる。
この新作の意味合いは、単なる久々の新曲発表にとどまらない。資料によれば、今年2005年は彼がバンド“AIDO”としてデビューしてから30年目にあたり、来年2006年が、ソロ・アーティストとしてデビューして30年目にあたるという。その大きな節目にもなりそうなアニバーサリー・イヤーという事実が、彼をどれほど駆り立てているのかは定かではないが、今作の発表以降、6月には早くも新曲を、夏にはオリジナルとしては約4年ぶりとなるアルバムをリリースし、9月には全国ツアーもスタートさせるなど、ここ数年の中ではもっとも躍動感に溢れている。そんな浜田省吾の今年、そして来年を占う意味においても、この新曲の存在はとてつもなく大きい、そんな気がする。