ORICON STYLE

2006年03月29日
globe Special interview
“近い将来”を見据えた音

 あれだけ90年代を席巻したことを思えば、現在のglobeは色褪せて映るかもしれない。そりゃまあわからなくもないけども、実は音楽的には目茶目茶面白くて、“新しいポップ・ミュージック”を具体化しつつあるのだ。今のうちに聴いておかないと、絶対後悔する――と、45歳音楽評論家は大きなお世話で書いておく。わはは。
 昨年夏にリリースされた前作『globe2 pop/rock』の、オーディオ端末が携帯電話に移行する“近い将来”を見据えて、音数をぐんとシェイプアップした、まるで1980年前後の英国ニューウェイブ・サウンドのようなシンプルなポップ&ロック感は、実に心地好かった。そして今回の『maniac』は、前作で編み出した音色やレイアウトを駆使しつつ、一気に“ポップ・ミュージックとしての精度”を高めてきた観があるのだ。
「前作も本作も、ここ15年ぐらいずっと実行してきたインダストリアルの呪縛を外させてもらったという事で、昔の“洋楽好きの自分”にシフトできてるのが大きいですね」
 まさにTKが嬉しそうに語ってた通り、曲毎にイーノと組んでた頃のU2やら何やら、80年代の恰好良くてポップだったあのセンスが、2006年のボキャブラリーで表現されている。
「“U2がTOTOやジャーニーになっちゃうよねー”とか言いながら、作ってましたね(嬉笑)。自分の好きな洋楽フレーバーを散りばめながら」
「アルバムが出来上がった直後ぐらいかな、MARCがちょっと酔っぱらってウチに遊びに来て。「今回の、TK自分で好きでしょ?音も曲も並びもぉ?」ってずーっと言い続けてましたね、絶対憶えてないと思うけど(失笑)」

未来が見えるニュー・ポップス

 しかし、ただ懐かしいだけではない。確かに洋楽ポップスが一番賑やかだった頃の匂いをひねった“裏80's感”も愉しいけれど、実は細かい音作りはまさに“新時代のロジカル・ポップ”に相応しいのだから。
 象徴的なのは「from the beginning」で、音の感触や並びも“ニュー・ポップ”に相応しいのだが、それ以上に――。
「自分の中でも、かなり好きな曲ですね。唄い出しがサビではあるんだけど、サビアタマではないという(苦笑)。唄の始めって一番記憶に残るとこではあるんだけど、それをサビと呼ぶ必要はないんですよね」
 確かに我々は、いつから「サビアタマ→Aメロ→Bメロ」とか形式にこだわるようになったのか。素人までもが、サビがいいだの悪いだのと平気で口にする。でもよく考えたら、そんな“J-POPヒットの公式”を作り“日本の流行歌”を完成させたのは、他ならぬTK本人なのだ。
「サビアタマを作っちゃった自負と、責任感の背中合わせな感じがありますよね(笑)。だから今回、もう1回考え直してみようかなと思ってますね」
 そういう意味では、TK自ら“J-POP解体”にも取り組んだ愉しい実験作でもある。と同時に、未来が見えるニュー・ポップスと成立してるのだから、文句ないだろ。
「前回は“ポップ&ロックですよぉー”と言ってはいたけど、ロックのデッド感にこだわってリバーブも一切無くして。そこまでやっておけばサラからできると思ってたんで、今回は解き放たれて風通しもいいし」
「だから前回買わなかった方は正解で、すぐ修正した今回の方がいいですよ――とまで自分で言えるというね(嬉笑)」
 その通りである。ちなみに「About Me」の、TK十八番の“清楚な少女は美しい”ワールド満載の歌詞は、もう圧倒的なまでに突き詰められていて、グウの音も出ない。というか、さすがです。マジで。

(文:音楽評論家 市川哲史)