2014-6-2

オリコン2014年 上半期“本”ランキング発表 1位は『人生はニャンとかなる!』オンライン発の書籍化からヒット作も登場!

BOOK:世相を反映して…癒やし、自己啓発、健康法が上位に

 猫の愛らしい表情が印象的な『人生はニャンとかなる!−明日に幸福をまねく68の方法』が上半期のBOOK部門1位を獲得した。ユーモラスなタイトル同様、内容もまた猫の様々な表情、しぐさの写真とともに、ぴたりとはまったキャッチコピーで心をほぐしてくれる。さらに、古今東西の偉人・有名人の格言やエピソードを加え、笑いのなかにも元気を与えてくれる、さながら“読むサプリメント”といったもの(ちなみに、同じ著者による同じカテゴリーの“犬編”にあたる『人生はワンチャンス!−「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法』は、2013年の年間44位)。

 先行きの見えない景気状況や少子高齢化がもたらす不安の影、遅々として改善が認められない外交面など、国内を包み込む負の要素によって心にストレスを溜め込んでいる現代人は少なくない。そんな世相を反映してか、“自己啓発”要素の高い本が上位にランクされた。世界で3000万部を売り上げた、スティーブン・R・コヴィーによる自己啓発本のベストセラー『7つの習慣』をマンガ化し、そのエッセンスをまとめ上げた『まんがでわかる7つの習慣』が3位。亡き父が遺した店でバーテンダー見習いとして働く女性の行動を通して、「7つの習慣」を説明している。

 『人生はニャンとかなる!〜』も『〜7つの習慣』も、自己啓発というともすれば難しくイメージしてしまいがちな題材を、わかりやすく、自然な形で心にストンと落ちるように作られていることが、多くの支持を集めた。アプローチはやや異なるが、9位の『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』も実話に基づく自己改革に焦点を当てた作品。多くの人に勇気と感動を与えてくれる。

 小説関連では、今年も本屋大賞受賞作の勢いがすごい。和田竜『村上海賊の娘』は上巻が6位、下巻も11位にランクイン。10位の村上春樹『女のいない男たち』とともに、年間ではさらなる上位ランクインが予想される。

 健康ものも変わらず人気が高い。2位にランクインした『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』は、ふくらはぎをもむという手軽な行為に着目し、話題となった。下半期ではどんな健康法が登場するのだろうか。

コミック:定番3作品がミリオン超え!新たな学園もの注目作も登場

 電子書籍に関する著作権の改正が進み、今後はWEB上での拡がりにも注目が集まるコミック部門だが、変わることなく上位作の売上数はものすごい。もはや説明不要、絶対王者の『ONE PIECE』、昨年から今年にかけての大ブレイクによって『ONE PIECE』最大の“ライバル”へ名乗りを上げた『進撃の巨人』、安定度の高さは随一の『NARUTO―ナルト―』の3作がミリオン超えを果たした。

 それでも、『ONE PIECE』の280万強という部数は群を抜いている。主人公・ルフィだけに頼らず、その他のキャラクター(悪役をも含む)を掘り下げ、それぞれにスポットを当てたストーリーを構築していく奥深い展開が、入門者からマニアまでを魅了してやまない。ただ単なる勧善懲悪に終始していない濃密で爽快な読後感が、世代を越えて支持を集めているのだろう。

 数々のイベント、アニメ映画化、実写映画化と話題が途切れることなく、未読の人々にも「何だろう?」と思わせる間口の広さを誇るのが『進撃の巨人』だ。人によってはエグいと感じる描写もあるなど、老若男女不問というわけにはいかない“刺激”が含まれてはいるものの、主人公たちが「得体の知れない驚異」に知恵と勇気を振り絞り団結して立ち向かっていく様は、現代を生き抜くことに汲々としている人々にカタルシスを与えるはず。アニメ&実写映画の公開によって、この先も“進撃”が続くだろうか。

 これら“2強”に、上記の『NARUTO―ナルト―』『君に届け』『銀の匙 Silver Spoon』を加えた“定番”作品が並ぶなか、注目すべき存在なのが10位にランクインした『坂本ですが? 2』だ。第1巻が2013年の年間ランキングで27位に入った実績をこの上半期にも引き継ぎ、堂々のTOP10入りを果たした。“クーレスト”と称されるほどの冷徹さを宿す主人公・坂本が巻き起こす騒動を描く、新たな学園漫画。ぜひともチェックしておきたい。

文庫:オンライン小説、ニコ動…WEB発の書籍化というヒット図式

 2013年の年間ランキングを制した百田尚樹『永遠の0』が、2014年の上半期も引き続き王座を守った文庫部門。しかも、同書が昨年1年で記録した188万部の約7割にあたる130万部弱の数字を計上してのぶっちぎりのNo.1である。

 その背景にあるのが、お正月作品として劇場公開され、今年の邦画部門でNo.1の大ヒットを記録している実写映画の影響であることは否めないところ。だが、ややもすると重いイメージを抱かせる“戦争もの”であるにもかかわらず、原作者の百田氏のメディアで見せる歯に衣着せぬ毒舌ぶりや、関西人ならではのユーモアあふれるしゃべりによって作品との間に生まれるギャップの一方、放送作家ならではのポイントを押さえたストーリーテリングも加わり、あらゆる角度から作品に接していけるおもしろさが、ここまでの広がりを生み出したのは間違いない。

 3位に入った『幸福な生活』は、昨年12月に文庫化された百田尚樹の短編集。『永遠の0』や『海賊とよばれた男』で百田を知ったファンが、次に手にする作品までのワンクッションとして手軽な短編ものへと動いたのだろうか。こちらも映像化次第でさらなる“大化け”が期待される。

 2位にも映画化が話題となった湊かなえの『白ゆき姫殺人事件』がランクイン。『告白』『夜行観覧車』など映画・ドラマ化が相次いでなされてきた湊作品のなかでも、ミステリー度やSNSをはじめとする素材などを含め、エンターテインメント性の高さが光る作品。百田、湊をはじめ、池井戸潤、東野圭吾、三上延など、文庫部門でもコミック部門同様、人気作家への読者の集中が見られる。“ブランド”の持つ安心感がランキングに直結しているこの時代において、新しい力の台頭はあるのだろうか。

 文庫におけるもうひとつの流れが、WEB発の書籍化→ヒットという図式だ。2013年の年間ランキングでもTOP20入りを果たしていた『カゲロウデイズ』『ソードアート・オンライン』の最新巻が上半期のTOP10を形成した。オンライン小説からスタートした『ソードアート〜』、ニコニコ動画での楽曲発表に端を発したマルチメディアプロジェクトの小説である『カゲロウ〜』と世に出る始まりは異なってはいるものの、インターネットでの圧倒的な支持を背景に、紙媒体においても高い人気を集めていることは事実であり、目を離すことのできない存在と言える。とりわけ、音楽面でもアルバム『メカクシティレコーズ』が1位を獲得するなど、各メディアを席巻している「カゲロウプロジェクト」の動向には要注目だ。

(文:田井裕規)