Sではなく、イライラしている感じ――警備犬や彼らを訓練するハンドラーという役割の人が実在することを本作で初めて知りました。国内ナンバーワンの一流ハンドラーを演じるうえでどんな準備をしましたか? 【戸田】 クランクイン前に時間を設けて、夏希を演じる準備をしました。心構えとしては、撮影の初日から一気に集中力を高めていこうと思っていました。主演の市原隼人さんやほかの皆さんはすでに撮影を始めていて、わたしは途中から参加することになっていたので、皆さんが集中されているなかに急にポン!と入ることになるわけですからね。 ――後半に火を使う爆破のシーンもありましたが、ヒヤヒヤする瞬間はありましたか? 【戸田】 それはまったくなかったですね。安全をしっかり考えた徹底した管理のもと、火を使うプロのスタッフが手がけていましたので。ただ、シロ(市原演じる早川の警備犬)がものすごく怯えていたので、シロに危険が及ばないように気をつけていました。わたしはまったくケガもなく乗り切れました。 ――主人公・早川を演じた市原さんは、イメージ通りの熱血漢役ですが、現場での取り組み方はいかがでしたか? 【戸田】 仕事に本当に真っ直ぐに向き合う方で、演技に集中されていましたね。本番直前には声を出して撮影に臨むという集中力の高め方で。そうじゃないときは何でもないような話をよくしていました(笑)。でも皆で笑っていながらも、芝居の瞬間になると笑顔がピタッと止まるんです。メリハリをしっかり持たれている方だなと思いました。私は集中していない時間はないものだと思っていて、本番じゃないときも30%は集中している感覚だったりするのですが、市原さんの集中力の100%への高め方がすごかったです。とくに今回は犬たちのことも考えなくてはいけなかったので、すごいなと思って見ていました。 ――夏希は冒頭で右も左もわからない状態の早川に、噛まれてもいい訓練服を「着ろ」って渡しますよね。性格的にSっぽい女性の印象を受けましたが、そういう設定でしたか? 【戸田】 いえ、あのシーンは、「こいつ、ダメだな」って呆れているところですね(笑)。Sっぽさというよりも、自分にも厳しいし、仕事をまっとうしていない人間に腹が立っているんです。口ばっかりの早川のことが嫌いなんですよね。ウチの部に配属されたのに警備犬と警察犬の違いさえわかっていないから、「とりあえず、着ろよ!」と怒っているんです。監督(七剛)からも「夏希、イライラしている感じで!」と演出されていましたね(笑)。 弱みや失敗を告白するから強く印象に残る――実際、たとえば仕事などで不真面目な態度を取られたら誰だって不愉快ですからね。 【戸田】 そうですね。仮に自分が集中してお芝居しているのに、ゆるい感じでこられたら嫌だと思います。自分が夏希と似ているというより、誰でも同じ感情になると思うんです。そういう意味では演じやすかったです。ただ、彼女との共通点はわからないですが、少なからず重なっていたと思いますし、だからこそ夏希の想いに共感するのかもしれないです。 ――また、夏希の「感情に流されて冷静な判断を欠いた」というセリフも印象的でした。 【戸田】 人が生きていくうえで、それがほとんどだと思うんですよね。自分の感情を抑えられなくなって錯覚することって、誰にでもあることだと。自分が正しいと思って突き進んできたことを誰かに否定されたときも、自分を見失うことがある。でも、人間ってそういうものだよねって言えることはなかなかなくて、素直な感情を言わずに閉じることも多いじゃないですか。だから素直に気持ちを言える夏希は強いなあと思いましたし、弱みや失敗を初めて告白するシーンだったので、だからこそ強く印象に残るのでしょうね。 ――確かにそうですよね。戸田さんご自身も夏希のように失敗をしてしまった経験は? 【戸田】 冷静な判断を欠いていることに気づかないままでいて、過ぎ去って、振り返ってから後々に気がつくということが多いです(笑)。そういう点以外でも、性格は夏希とかなり似ているところがあるかもしれませんね。 ――夏希はクールに見えますが、実は人間臭くてハートがありますよね。酒豪ですし(笑)。 【戸田】 そうですね。でも、それを言うなら早川のほうがもっと人間臭いのかもしれないです。夏希は芯がしっかりあって自立心が強い人だと思いました。ただ、あの酒場のシーン、わたしの初日だったんです(笑)。「夏希ってこんな感じ(のキャラ)でいいの?」って思いながらも飛ばして、笑いながら撮影していました。撮影していてもすごく楽しかったです。 ――そんな『DOG×POLICE 純白の絆』ですが、最後に戸田さんからメッセージをひと言お願いします! 【戸田】 映画のモデルであり指導もしてもらった警視庁の警備犬チームの方たちも、震災が起こった後に、実際に被災地で救助活動をしていたそうなんです。そのことを知って、いつも以上に責任感を持ってやらないといけないと思い直したことをよく覚えています。そういう熱い想いを監督以下スタッフ、キャスト全員が共有して、撮影しながらもひしひしと感じていたので、こういう作品になったのかなと思います。熱い人間ドラマに期待してほしいです。 (文:鴇田 崇/撮り下ろし写真:片山よしお) PROFILE
戸田恵梨香 DOG×POLICE 純白の絆【STORY】 |