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水野美紀とユースケの会話、台本に書かれていたのは!?

──つながりといえば、水野美紀さんも戻ってきましたね。 【本広】 嬉しかったですね。彼女が登場するシーンのユースケのアドリブがまたひどく適当でね(笑)。

──あのキャッチボール、最高でした(笑)。それにしても、ユースケさんのセリフは台本ではどう書かれていたんですか? 【本広】 あのシーンは“「ママだよ」ってやり取りする感じ”って書かれていて(笑)。僕はユースケが何かしゃべるまでカットはかけないんです。で、今回はボルシチとかピロシキとか食べ物が入ってきて、それを水野さんが受けるという。ああいうアドリブは“踊る”メンバー、全員うまいんです。

──ということは織田さんも? 【本広】 織田さんもめちゃくちゃうまいですよ。スペシャルドラマ『踊る大捜査線 THE LAST TVサラリーマン刑事と最後の難事件』(9月1日放送)は織田さんのアドリブのオンパレードになっていますから。

──そのなかでも監督のお気に入りは? 【本広】 最後に王(ワン)刑事(滝藤賢一)と一緒に王刑事の両親に「どーもすみませんでした、大騒ぎしちゃって……」と言うくだりがあるんですが、あれアドリブなんです。あの一連の織田さんのアドリブは素晴らしかったですね。

──もう一度観たくなりました。そんな織田さんが青島役に抜擢された起用理由を、監督の口から改めてうかがいたいです。 【本広】 僕が織田さんを指名したのではなく、織田さんからの逆指名なんですよ。“踊る”の前に、ドラマ『お金がない!』で僕はディレクターのひとりとして参加していたんですが、織田さんがそのときの演出や、僕が最初に撮った映画『7月7日、晴れ』を気に入ってくれて、そのとき「何か一緒にやりたいね」と話していたんです。その後、織田さんが亀山さんに“踊る”の監督として僕を推薦してくれたんです。

──そう考えると、“踊る”とともに歩んできた15年は監督にとって特別な15年なんですね。 【本広】 ほんとうに。こんなに大ヒットするとは思っていなかったですし、下世話な例えですけど、パチンコにある確変──333とか777になると次も必ずフィーバーするように、“踊る”はまさに確変の連続で、何年かごとに作品を作るとフィーバーする。役者さんはすでに名のある方が揃っていますが、“踊る”に参加したスタッフはその後いい仕事が回ってきたり、みんなのブランドを上げてくれるコンテンツなんですよね。

青島に出会って…彼以上のヒーローは考えられない

──素晴らしいですね。素晴らしい作品がゆえに「本当にファイナルですか?」って聞かれますよね? 【本広】 聞かれますね(笑)。

──監督としては、どう答えているんですか? 【本広】 僕はもうできないけれど、若手がやると言えば……勢いのあるプロデューサーが出てきたら可能性はありますよね。

──亀山さんも同じことをおっしゃっていました。 【本広】 やっぱり(笑)。海外の昔の有名なヒットドラマや映画は、みんなそういう経緯で作られているんですよ。たとえば、『スタートレック』は“The Next Generation”として『新スタートレック』ほか何本も作られていますからね。“踊る”もその方式で、日本初の試みとして新しいものが生まれたらいいですよね。とにかく、この『踊る大捜査線』というタイトルは秀逸なので使わない手はないです。でも、僕には無理。青島というヒーローと出会ってしまったので、彼以上のヒーローは考えられないです。

──監督にとって青島はどんなヒーローですか? 【本広】 等身大のスーパーヒーローですね。アナログ世代もデジタル世代も、老若男女どこにでも対応できるヒーロー、しかも下手(したて)なヒーロー(笑)。普段はフワフワしているのに、いざというときの決断能力がすごくて、こうと思ったら突き進んでいく。あれは格好いいですね。

──ラストシーン、倉庫に向かっていく姿も格好良かったですね。 【本広】 格好いいんですけど、あのシーンはギャグでもあるんです(笑)。台本に「バナナ」って書いてあって――あまりにも堂々と書いてあるから誰も「何でバナナなんですか?」とは君塚さんに聞けなくて。柳葉さんも「バナナ」のセリフに戸惑っていて、本番のときに何度も吹き出してNG出しちゃったんですよ。室井さんはすべてを青島に託したわけじゃないですか。だから青島に「バナナ、バナナ、バナナ!」って言われると、室井さんもああ言わざるを得ないという(笑)。

──たしかに、真面目なのに滑稽で、そして名シーンですよね(笑)。 【本広】 (笑)僕は僕で、バナナの看板をどうしようとかノイローゼになりそうでした。

──“バナナ”の笑いはもちろん、青島と室井さんの友情がどうなるのか、ファイナルにふさわしいふたりの結末にもこだわりがあったと思います。 【本広】 基本的には、青島さんと室井さんの関係も、青島さんとすみれさんの関係も“同僚”としてずっと変わらないと思うんです。ただ、上がいなくなったことでちょっと新しいことができるようになって、それが青島さんたちが望んでいた拓かれた世界であって、その世界がどういうものなのかを想像するのがおもしろいんです。エンドロールの最後に“その後”をかき立てる画を差し込んでいるので、そこから観客それぞれの解釈で未来を感じてもらえたら嬉しいですね。

──最後に、監督が『ファイナル』で一番気に入っているシーンをひとつ選ぶとしたらどのシーンを挙げますか? 【本広】 そうですね……とくにこだわったのは、青島さんとすみれさんのラストのシーン。ふたりが愛情を確かめ合った後に、向こうから真っ赤なサイレンを光らせたパトカーがワーッと流れ込んでくるんですけど、その前に和久くん(伊藤淳史)が出てきてふたりを見て驚くんです。そのシーンがすごく好きなんですよね。“踊る”の基本に第三者の視点というのがあって、感情が高まるシーンでは必ず誰かが見ている、そう描くことによって感情を表しているんです。今回は伊藤淳史に「お前が失敗したらこのシーンは総崩れだからな!」って何度も言ってプレッシャーをかけました(笑)。最後は美しい画で終わらせたかったので、サイレンの赤色が印象的なシーンで締めています。

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(文:新谷里映)

プロフィール

本広克行 1965年7月13日生まれ。香川県出身。
1997年のドラマ版より『踊る』シリーズの演出に携わる。映画からドラマ、演劇までアンテナを張り巡らし、常に斬新なテーマの作品を開拓し続けている。主な監督作品は、映画『踊る大捜査線1・2・3』(1998・2003・2010年)『スペーストラベラーズ』(2000年)『サトラレ』(2001年)『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)『交渉人 真下正義』(2005年)『UDON』(2006年)『少林少女』(2008年)『曲がれ!スプーン』(2009年)など。

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踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

 湾岸署管内で開催中の国際環境エネルギーサミット会場で誘拐事件が発生。数時間後に被害者は射殺体で発見される。使用されたのは、警察が押収した拳銃。緊急招集された捜査会議では、全ての捜査情報を管理官・鳥飼へ文書で提出することが義務付けられ、所轄の捜査員には一切の情報が開示されない異例の捜査方法が発表される。

 そんななか、第2の殺人が発生。そして、捜査員たちを嘲笑うかのように起こった第3の事件。「真下の息子が誘拐された……!」――疑念を抱きながら必死に真実を突き止めようと捜査する青島。その捜査こそが、青島、最後の捜査になるとも知らずに……。

監督:本広克行
脚本:君塚良一
出演:織田裕二 深津絵里 ユースケ・サンタマリア柳葉敏郎
伊藤淳史 内田有紀 小泉孝太郎北村総一郎 小野武彦 斉藤暁 佐戸井けん太真矢みき
筧利夫小栗旬 香取慎吾

2012年9月7日(金)全国東宝系ロードショー
(C)2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

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