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亀山千広「仕掛ける若手が現れたら……先は分からない」

連載第2回は、踊るシリーズの生みの親であり、数々のヒット作を世に放ち続けてきたエグゼクティブ プロデューサーの亀山千広さんが登場!盟友である脚本家の君塚良一さんとのドラマスタート時のいきさつや、伝えたかった青島イズム、亀山さん=青島?室井?の関係性(!?)まで、ファイナルを迎えるにあたってシリーズのすべてを語ってくれました!

踊るシリーズで得た「方程式はない」という答え

──いつかは終わりが来ると分かっていても、本当に終わりを告げられると寂しいものです。なぜ、劇場版第4作目というタイミングでシリーズを終わらせようと決めたのでしょうか? 【亀山】 『踊る大捜査線』は、ドラマという大枠としてはフィクションで作品が作られているとしても、役職やキャラクター設定など細部では嘘はつかないでいこう、リアリティを大切にしよう、そういうルールのもとでスタートしました。ですから、所轄で15年ものあいだ同じメンバーが居続けるというのはありえないわけです。そういう理由もあって『3』では湾岸署が引っ越しをして、青島も係長に昇進しています。また、劇場版『2』から『3』を作るまでに7年かかってしまった理由のひとつには、和久さん役のいかりや長介さんが亡くなったこともありました。オリジナルのメンバーのひとりが欠けてしまった後に『3』を作るのであれば、『新・踊る大捜査線』にしなければならないなと。そして、“新シリーズ”にするのであれば、1本では終わらせたくない。テレビドラマ1本と劇場版2本(『3』と『4』)の3本柱でいきたいということを、『3』の制作のときに決めていたんです。

──15年という長きにわたって愛され続けているシリーズをふり返ってみて、亀山さんにとって『踊る大捜査線』とはどういう存在でしたか? 【亀山】 たくさん勉強させてもらいましたし、勉強しようと思って作ってきたシリーズでもありました。もの作りに携わる者として、ありとあらゆるテストケースをこの作品にブチ込んできた気はしますね。それが身になっているのかどうかは分からないですけど、ただひとつ言えるのは「方程式はないんだ」という答えを得たこと。アニメだったらまた違うのかもしれないですが、人が演じているものに関しては、方程式はないんです。加えて、自分自身のポジションもプロデューサーから製作に変わり、僕はいま青島のポジションにいないわけで。今回は青島と同年代のプロデューサーを立てています。

──それは、亀山さんが青島から室井さんの立場になったということですか? 【亀山】 違いますよ(笑)。僕は室井さんほど偉くなったわけではないです。ただ、青島みたいな部下に早く会いたいとは思っています。かつての自分は上司に向かって、青島みたいに「俺を信じてくれ!絶対に当てるから!」と言っていましたから。もちろんコケたこともありますけど(笑)、そういうタイプの人間でしたね。だからこそ、青島みたいな部下に会いたい。パッと目を見て「コイツは信じられる」と思えたら、「お前に託す、責任は俺が取る」って言えるのは格好いいじゃないですか。基本、『踊る大捜査線』はその繰り返しを描いていますからね。上司が部下に説教をたれても誰もついてこない。やっている姿=後ろ姿を見せるしかないんですよ。

“青島イズム”を見せきって終わらせるのがベスト

──今回の『THE FINAL』でも“背中”がキーワードになっていますね。 【亀山】 そうですね。これまで描いてきた“青島イズム”をきっちり見せることがファイナルに相応しい、それを見せきったところで終わらせるのがベストではないかなと。そして、その青島イズムのコレというものは何なのかをずっと議論しました。それは何かというと──正義感ではなく「責任感」。仕事に対する責任感ですね。青島もかつてはすみれちゃんに「事件に大きいも小さいもない!」、和久さんに「正義なんて言葉を簡単に口に出すな!」と正されたことがありますが、そのセリフを言えるのは、彼らが責任感で動いているからなんです。青島もまたそれを訴え続けてきた。迷いもあるし、刺されるし、撃たれるし、市民から恨まれることもあるけれど、それをひっくるめて人々を守るという仕事を全うする責任感、それが青島イズムなんです。僕が『THE FINAL』のなかで一番好きなセリフが室井さんのものであるのですが……“青島イズム”を最大限に認めたあのセリフ、それは……劇場で確かめて下さい(笑)。

──亀山さんの心に響いた室井さんのセリフをはじめ、このシリーズには数多くの名セリフがありました。それを生み出してきた脚本家の君塚良一さんとの出会い、タッグを組むまでの経緯も聞かせてください。 【亀山】 前々から気になっていて声をかけていた方ではあったんです。流行語にもなった“冬彦さん”のドラマ『ずっとあなたが好きだった』の頃に、この人とホームドラマをやれたらいいなと思っていて。でも、なかなかきっかけがなく……。そうこうしているうちに時間は流れて、織田くんで刑事ものをやるということが決まった。ちょうどその頃、君塚さんは『コーチ』というドラマをやっていたんですが、そのキャラクターの書き分けがものすごく上手くて。刑事ものは登場人物が多く、キャラの書き分けが上手い人と仕事がしたいと思い、君塚さんに「一緒にやりませんか?」と、ようやく誘うことができたんです。結果、スピンオフが何作もできるほどのキャラクターを作ってくれました。君塚さんの素晴らしいキャラクターの書き分け、本広監督の理解力、それを受け取る織田くんはじめ役者陣の演技力──初めて組む人たちばかりでしたが、ものすごく新鮮で楽しかったですね。

──本当に素晴らしいコラボレーションと言えますね。亀山さんといえば、ドラマから映画へというスタイルの仕掛け人でもあり、『踊る大捜査線』はその先駆けでした。 【亀山】 フジテレビの映画部門にいる人間として、テレビ局のコンテンツを劇場に持っていくというのが僕の仕事です。連ドラを作っている人間には申し訳ないんですが、映画部門としてはドラマは予告だという考え方もあります。3ヶ月ものあいだ予告を見てもらっている、という発想でもあるんです。ただ、ドラマと違って映画はわざわざ家から出て、電車やバスに乗って、劇場でお金を払って観なくてはならない。観客の方々に劇場まで足を運んでいただくために、映画にするべき“何か”がこの作品にはあるんだ、と感じていただくことが必要なんです。それは何かといえば、キャラクターです。コイツが劇場で大暴れしてくれるんだ!と、観に行きたくなるヒーローの存在が不可欠なんです。『踊る大捜査線』の青島俊作、『HERO』の久利生公平、『ガリレオ』の湯川学、『SP』の井上薫──劇場版になっているキャラクターはいずれもヒーローで、そのヒーローたちの“責任感”を見て、僕らは感動するんですよね。

──たしかに、どのヒーローも背中で責任感を見せているキャラクターですね。最後に今作のタイトル“新たなる希望”に込めた想いを聞かせてください。また、ファンのみんなが聞きたいことだと思いますが、「本当にファイナル」ですか? 【亀山】 僕らというか、僕が『スター・ウォーズ』シリーズが大好きなので、『踊る大捜査線』の劇場版が4作目までいったら『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』にちなんで「A New Hope」というサブタイトルをつけたいとずっと思っていたんです。著作権上の問題はないのかなど確認も取りました(笑)。この4作目でファイナル、というのが決まってから「本当にこれで終わりなんですか?」という質問が多いのは当たり前のことではあるんですが……例えば、若いプロデューサーが出てきて、本広監督と君塚さん、織田くんほかキャストをのっけちゃって、「僕に任せてください!」って言ってきたら、「分かった、責任は俺が取る」って言うかもしれない。僕が仕掛けるのではなく、そういう若手が現れたとしたら先はどうなるか分からないですよね。それも“希望”です(笑)。

(文:新谷里映)

プロフィール

亀山千広 1956年6月15日生まれ。静岡県出身。
株式会社フジテレビジョン常務取締役総合メディア開発映画事業局長。早稲田大学卒業後、1980年にフジテレビへ入社。『踊る大捜査線』をはじめとした多数の人気テレビドラマのプロデュースを手掛ける。編成制作局長などを経て、2003年より映画事業局の局長に就任。以降、フジテレビの映画製作全般に携わっている。
〈主な作品〉
映画『踊る大捜査線 1・2・3』(1998・2003・2010年)、ドラマ『あすなろ白書』(1993年)『ロングバケーション』(1996年)『ビーチボーイズ』(1997年)など。

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

 湾岸署管内で開催中の国際環境エネルギーサミット会場で誘拐事件が発生。数時間後に被害者は射殺体で発見される。使用されたのは、警察が押収した拳銃。緊急招集された捜査会議では、全ての捜査情報を管理官・鳥飼へ文書で提出することが義務付けられ、所轄の捜査員には一切の情報が開示されない異例の捜査方法が発表される。

 そんななか、第2の殺人が発生。そして、捜査員たちを嘲笑うかのように起こった第3の事件。「真下の息子が誘拐された……!」――疑念を抱きながら必死に真実を突き止めようと捜査する青島。その捜査こそが、青島、最後の捜査になるとも知らずに……。

監督:本広克行
脚本:君塚良一
出演:織田裕二 深津絵里 ユースケ・サンタマリア柳葉敏郎
伊藤淳史 内田有紀 小泉孝太郎北村総一郎 小野武彦 斉藤暁 佐戸井けん太真矢みき
筧利夫小栗旬 香取慎吾

2012年9月7日(金)全国東宝系ロードショー
(C)2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

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