SNS発ブレイクバンド・Novelbright、強烈な波及力の背景にある”歌”としたたかなデジタル戦略
“路上ライブ=カッコよくない”という風潮も…“必ず刺さる”という自信があった
「フェスに出たこともないし、プロモーションしてくれるスタッフもいない。自分たちの力でどうにかしないといけない状況のなか、路上ライブをやることを思い付いて。路上ライブをやっているバンドはほとんどいなかったし、むしろ“カッコよくない”という風潮だったんですが、“自分の歌を不特定多数の人に聴いてもらえれば、必ず刺さる”という自信もあったので」(竹中/以下同)
路上ライブの場所は大阪の難波。「1回目は事前告知もせず、直前にインスタで“路上ライブやります”と発信しただけ」で、集まったファンは5〜6人。しかし、ライブ動画をTwitterに上げたことで、状況は大きく変わり始める。アップしたのはメンバーの圭吾(B)。自身でアパレルブランドを運営し、SNSを使った情報発信に長けたメンバーだ。
「圭吾が一般人のふりをして“あいみょんの『マリーゴールド』、男の人が歌ってる。上手すぎん?”みたいなツイートをしたら、4万くらい“いいね”がついて。圭吾はメンバーのなかでTwitterのフォロワー数がいちばん多かったし、SNSの発信が得意なんですよ。女性アーティストやキーが高い曲など、歌の凄さが伝わる曲を選んだのもよかったのかなと」
SNSや動画配信を巧みに演出…時代にあった自己プロデュース
「ミュージックビデオが話題になって再生数が伸びるのもいいことだけど、路上ライブの動画を見てもらってほうが“生でこれだけ歌えるんだ? ライブを観てみたい”という動機につながりやすいと思うんですよ。あと、自分たちはバンドスタイルのライブ動画はほとんどアップしていなくて。それもライブハウスに来てもらうための方法ですね」
路上ライブ動画をSNSで発信することで知名度を上げたNovelbright。その効果はLINE MUSIC、AWAなどのストリーミング・サービスにも反映されて、TOP10入りを果たした。このときもやはり、SNSでの発信が大きな効果を発揮したという。
「ストリーミングに関しても、TOP100に入った時点から“いま〇位。もっと上に行きたいから、みんな聴いて!”と煽ったんです。Spotifyのバイラルチャートで1位になったときは、順位の上昇をリアルタイムで共有して、1位なったときの“おめでとう”ツイートもバズって。路上ライブを観てくれた人も多いし、親近感を持って、近いところで応援してくれるんですよね。ストリーミングのチャートにはあいみょんさん、米津玄師さん、back numberさん、菅田将暉さんなどが並んでいるので、“なんで俺らがランキングに入ってるんやろう?”と不思議な気持ちになりますけどね(笑)」
地上波“初”登場、フェスへの“初”出演など、一発目を大事にしたい
「Twitterのフォロワー数が増えて(現在、竹中のTwitterフォロワーは8万を突破)、“伸びるアカウント”になったので、影響力も強くなっていて。見出しを工夫することで拡散力が違ってくるので、かなり意識していますね。YouTuberやインフルエンサーも好きで、自分たちに取り入れられることはないか、日々チェックしてます」
「テレビにも出たいし、ドラマの主題歌などもやりたい。地元のお年寄りにも知ってもらえるような、わかりやすい売れ方をしたい」と将来のビジョンを語る竹中。この先はメジャーデビューや大規模のワンマンライブなども視野に入れているようだが、その際のポイントとして「一発目、“初”を大事にしたい」という。
「地上波“初”登場、フェスへの“初”出演など、一発目を大事にしたいんですよね。いずれはメジャーデビューもしたいですが、1作目が重要だと思っていて。“最初がダメだったら、後がしんどい”という話もよく聞くので、しっかり届く状況を作ってからメジャーに行きたいなと。…こうやって話していると、全部計算づくでやってるように思われるかもしれないけど、めちゃくちゃマグレ当たりもあります(笑)」
“歌を伝える”という軸を持ちながら、楽曲やライブの良さをTwitter、TikTokを通して伝えることで、セールスやライブ動員につなげる。Novelbrightのプロモーション戦略は、今後のバンドシーンにも大きな影響を与えることなりそうだ。
(文/森朋之)