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『凪のお暇』Pが明かす制作秘話 オリジナル結末の賛否に「凪はいつかまた2人と会う」

 19年7月期に放送された主なドラマを対象とした、エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』発表の「第17回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」が決定し、金曜ドラマ『凪のお暇』(TBS系)が最優秀作品賞のほか、助演女優賞を三田佳子、助演男優賞を中村倫也が受賞。現代女性の“空気読み疲れ”や“人生のリセット”を描いた本作が、今期最多となる3冠に輝いた。

ドラマが当たり前にやっていることを少し違う形にしたい

 本作は、数々の漫画賞を受賞したコナリミサト氏による同名コミックが原作。他人に合わせ、場の空気を読みすぎてついに倒れた28歳OL・大島凪が、仕事も家も恋もすべて捨てて人生のリセットを図ろうとする物語を描く。主人公を演じる黒木華のほか、彼女に高圧的な態度で接しながらも実は真摯な愛を抱いていた元彼・我聞慎二役を高橋一生、凪の隣人で天性の人たらしにして“メンヘラ製造機”と称されるも凪に本気の恋をしてしまう安良城ゴン役を中村倫也、ハローワークで知り合ってから凪の親友となる坂本龍子役を市川実日子。メインキャラクター4人が織りなす、ほのぼのと温かくもときに切ない人間ドラマが、女性層を中心に高い支持を得た。

『コンフィデンス』誌のドラマ満足度調査「ドラマバリュー」では、第1話が19年7月期ドラマNo.1の初回満足度となる94Pt(100Pt満点)でスタートして以降、ぐんぐんと満足度を上げ、概ね90Pt台後半の高水準をキープ。第3話および第9話で7月期ドラマおよび2019年放送ドラマ最高となる99Ptをマークするなど、4月期の作品賞受賞ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)が最終話で獲得した97Ptを上回る満足度を獲得していた。
 そんな本作を手がけたTBSの中井芳彦プロデューサーは、その企画意図をこう語る。
「誰もがすべてを捨てて生まれ変わりたいという願望は誰しも持っていると思います。女性の主人公も魅力的だったのですが、すごく読者の間口が広い原作だと感じました。そして、“空気を読む”というキーワードがおもしろい。誰もが日ごろ感じていることでありながら、口にはしない。潜在的にいろいろな層に届くポテンシャルがあると思いました」

 ドラマは、そのストーリー性や“夏のお暇感”が画面からあふれだす音楽と映像、キャスト陣の好演などが、放送開始とともに大きな人気を得たが、毎話劇中のいろいろな場面に現れる遊び心のあるオープニングタイトルや、一枚で出してしまうエンドクレジット、次回予告がないことなど、その巧みな構成も話題になった。それらを中井氏は「ドラマが当たり前にやっていることを少し違う形にしたいと思っていました」と語る。

凪がいつかまた2人と会うだろうという雰囲気だけを残したかった

 本作には、“空気を読むこと”や“女性の生き方”など現代社会へのメッセージが込められているのかと思いきや「よく聞かれるんですが、とくにそういうものはないんです(笑)。金曜の夜にドラマを楽しんでもらいたいだけ」。中井氏は、同世代でドラマを観ている人が少ないことに危機感を持ち、「とにかくドラマを楽しく観てもらい」というモチベーションでドラマ制作に向き合っている。

「本作は内容的に説明しにくいドラマなので、観て楽しいと感じてもらうのが一番と考えていました。そのために武田真治さんにオネエのママを演じてもらったり、バルスなどの小ネタを入れたり、とにかく楽しさがあるドラマにしたいと思っていました。金曜夜の放送だからあそこまで振り切れたという面もあります」
 本作が放送開始直後から近年のドラマシーンで稀に見る支持を受けたことについては、その要因をこう分析する。
「先ほども申し上げましたが、現代人には“人生リセット欲求”があるのではないかと思います。でも、社会で生きるなかでそれは簡単にできることではない。それをやってのけた凪にある種の憧れや願望を抱き、彼氏との付き合いも含めて、その後の生活がどうなるかに関心を持っていただけたのではないでしょうか。会社を休んで六畳一間に住んで、バイトだけで生活してみたいという思いに共感していただけた方も多かったと思います」

 ドラマの第7話以降は、原作にはないオリジナル。凪が慎二とゴンのどちらも選ばない結末には、さまざまな声が寄せられたようだ。
「慎二と戻るという結末もあったんでしょうね。ドラマを観た周囲からはそうなったほうがよかったとも言われました(笑)。でも、ぐるっとまわって同じ地点に戻ったように見えるよりは、凪がいつかまた2人と会うだろうという想像の余地だけを残したかった。ただ、凪があのあと2人といっさい会わないわけではないんだろうなと。慎二がたまに立川に来たりしているその先を思い描きながら結末を作りました。もしかしたら、あのあと2人はまた付き合うのかもしれませんし、そこは観た人たちの想像にお任せしたいです」
 続編が作れる終わり方ともとれるが、それについては「そういう意図はまったくありません。女性の生き方として、一回リセットして、またいちから出直したほうがいいと思っただけ。一緒にいるのは扇風機だけです」。3人のその先が気になるという声は多いが、いまのところ予定はないそうだ。

 最後に中井氏は、物語の舞台となったアパート・エレガンスパレスが最終話で取り壊されるシーンのエピソードを教えてくれた。
「取り壊す予定があり、誰も住んでいないアパートだったのですが、物語の舞台として理想的だったので、大家さんに撮影で使いたいとお願いしたら、快く取り壊しを待ってくれました。最終回までの構想では、アパートを壊すシーンはなかったのですが、後半に入り、第9話、第10話でやり残したことがないかを打ち合わせしたときに、劇中で取り壊そうという話になりました。本当は、住人たちが見守る前で吉田羊さん演じるみすずがショベルカーで壊すシーンを撮りたかったのですが、残念ながらスケジュールが合いませんでした(笑)。それでも凪のリセットの象徴的なシーンになったと思います」

 キャスト、スタッフの尽力のほか、放送タイミングなども含めたさまざまな偶然も重なって生まれた名作だったようだ。
(文:編集部・武井保之)

提供元: コンフィデンス

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