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作品賞受賞『トクサツガガガ』のP語る NHK本気のドラマ制作

 19年1月クールに放送されたNHK総合ドラマ10『トクサツガガガ』が、『第15回コンフィデスアワード・ドラマ賞』で作品賞を受賞した。同作は、特撮をこよなく愛する隠れオタクの主人公・仲村 叶(小芝風花)が前向きに生きる姿や、好きなものを通して出会った人々との交流を描いたコメディードラマ。続編を望む声も多く、急遽ファンミーティングも行われるほど、人気を得た。「NHKが本気で作っている」とSNSで大きな話題を集めた本作について、同番組の制作統括を務めた吉永証氏に話を聞いた。
第15回『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』受賞者一覧

特撮に対するリスペクトを大事にした結果、「NHKが本気だ!」とコメント殺到

――『第15回コンフィデスアワード・ドラマ賞』で作品賞を受賞しましたが、まずは率直なお気持ちをお聞かせ下さい。
吉永 私自身様々な気づきをもたらしてくれたドラマです。SNSをはじめ大きな反響があり、大河ドラマや朝ドラではない枠で、これだけ多くの方に愛してもらえたことは、本当に嬉しく思っております。

――予想以上の反響だったということでしょうか?
吉永 はい。私も放送中、番組のTwitterを見ていましたが、次々とメッセージが投稿されていく。その言葉を見て、視聴者の方と同じ気持ちを味わっているような感覚になり、心に響きました。

――視聴者の声を聞き、ドラマのどういったところが受け入れられていると感じましたか?
吉永 放送開始時は、原作コミックを知っている特撮好きの方がご覧になっているように感じました。原作者の丹羽庭さんは特撮への深い愛がある方なので、ドラマを制作するからには、特撮に対するリスペクトを大事に、しっかりと作らないといけないと考えました。そこで本家である東映さんにご協力いただき、通常の特撮番組とほぼ変わらない制作方法で進めました。小道具など細部に渡り、いつも特撮を手がけているスタッフの力もお借りして、丁寧に制作しました。お蔭様で「NHKが本気で作っている」といったような声もいただきました。

――確かに「NHKが本気だ!」という視聴者のコメントをたくさん見ました。
吉永 もう1つは“あるある感=共感”ポイントがあること。特撮が好きな方にもそうでない方にも共感できる、そこが視聴者の皆さんに刺さったと思っています。

――特撮の作り込み、クオリティに対しての高い評価が寄せられています。特撮へのこだわりが違っていたら、ドラマへの評価も変わっていたかもしれません。
吉永 特撮をリスペクトして制作しているドラマなので、特撮シーンが中途半端になってしまうと、視聴者にちゃんと伝わらないと思っていました。

人間模様をしっかりと描き、若い世代に共感してもらえるドラマに

――そうしたこだわりは、特撮ファンだけでなく、一般層にもどんどん広がっていきました。ドラマの視聴者ターゲットはどの辺りを想定していたのでしょうか?
吉永 「ドラマ10」は、もともとシニアの女性層がターゲットでしたが、昨年から30代、40代向けの番組制作を意識するようになっています。これまでの「ドラマ10」ではやらないような企画でも、若い世代の方に共感してもらえると思って制作を進めましたが、チャレンジでもありました。

――若い世代に向けて制作するうえで、なぜ“特撮”だったのでしょうか?
吉永 誰もが何かしら好きなモノを持っているのではないでしょうか。今回のドラマは特撮ですが、視聴者がそれぞれ好きなモノに置き換えて、自分自身と重ね合わせられると考えました。

――登場人物がそれぞれの思いを受け止め、次第に仲間になっていくところも受けたのかなとも思います。
吉永 『トクサツガガガ』の制作を進めるうちに、若い世代が感じている友達関係を描けたらと思いました。主人公の仲村叶は、親しくなっても、気軽に自分の家に友達を呼びません。倉科カナさん演じる吉田久美さんも叶の家に入っていません。

――「友達なのかな?」と叶が心のなかでつぶやくシーンが何度もありました。『トクサツガガガ』では、人間関係の在り方が繊細に描かれているのも魅力です。
吉永 1つひとつの台詞でも登場人物の距離感を細かく描いています。原作の丹羽さんにもずいぶんアドバイスをいただきました。“特撮”がフックにはなっていますが、いろいろなことを考えさせられる部分が多い。さまざまな人間模様から、私自身いろいろと発見のあったドラマでした。

――主人公と母親がレストランで対決するシーンは、カタルシスもありました。そのやり取りがその後の展開にも繋がり、ラストで涙を誘う。
吉永 叶と母親が安易にわかりあえることはないと丹羽さんは考えています。喧嘩した叶が、最終回に実家を訪れて、母親に好きなぬいぐるみを渡すシーンがありますが、それがギリギリの表現でした。

小芝風花なしでは、この作品は今の形にならなかった

――また主演の小芝風花さんをはじめ、キャスト好演も見どころです。キャスティングはどのように決めたのでしょうか?
吉永 演じる役柄には、役者さんが持っている性格や人柄、雰囲気がにじみ出てきます。そうしたことを踏まえて、素直で誰からも好かれる小芝風花さんに演じていただきたいとオファーしました。小芝さんなしでは、この作品は今の形にならなかった、本当に感謝しています。

――寺田心君の演技も目立ちました。大人のような冷静さ、彼の台詞が強く心に響いた視聴者も多かったと思います。
吉永 背伸びしている大人っぽい言動や行動が、すごくハマっていました。名言を言う場面など、心君が言うと観ている人の琴線に触れる……あの若さですごいなと感心します。

――最近のドラマシーンでは、良質な作品が多数生まれています。今のドラマ制作について、吉永さんはどのように考えていますか?
吉永 皆さんすごく頑張っていますよね。何を題材にしたら楽しんでもらえるのか? 観てもらえるのか? を考えているがゆえに、良質な作品が生まれていると思います。テレビ以外の楽しみも増えるなか、制作者としては観てもらえなくなるのではという危機感を常に持っています。

――これだけの反響があると、民放では続編や映画化されますが、そういう展開は今後ありますか?
吉永 最終回で原作に話が追いついてしまったので、続編をすぐに制作するのは難しいんです。ただ、続編やスペシャル番組の放送を望む声もあり、何かできたらいいなと思っています。私自身も叶のその後を観てみたいですね。

提供元: コンフィデンス

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