90年代前半のアウトドアブームを凌駕する“爆発前夜”の今を『BE-PAL』発行人が語る
アウトドアブームの背景に“人生100年時代”、余暇時間への意識と自然回帰志向の高まり
【大澤氏】本誌は新規読者の獲得が順調なので、部数が伸びています。出版業界全体では、昨対90%ほどの推移なのですが、『BE-PAL』は前年を超える状況が近年ずっと続いています。
――さっそくですが、現在は“アウトドアブーム”と言われていますが、日本のアウトドアを40年近くつぶさに見てきた『BE-PAL』としては実際のところどう捉えているのでしょうか。
【大澤氏】今もブームとは言われていますけれど、90年代のブームとは迫力が違いますね。キャンプ人口が年間1800万人もいて、パジェロが飛ぶように売れて、世界中のアウトドアブランドが続々日本法人を作ったり、96年には観月ありさ主演・主題歌ドリカムで『7月7日、晴れ』というアウトドアムービーが公開されたりと、そりゃもう大騒ぎで。そう考えると今アウトドアが流行っていると言っても、まだブームはすごく小さい。むしろ今は、その大ブーム直前の80年代後半から90年代前半にすごく似ているんです。まだまだこんなもんじゃない、もっと大きいブームがこれから来る、“爆発前夜”と言っていいかもしれません。
――どのような部分が“似ている”のでしょうか。
【大澤氏】まず、90年代のアウトドアブームは、3つの要因から巻き起こったと考えています。1つ目は、バブルが崩壊して、夜な夜なクラブ活動や高級レストランで湯水のように金を使うバブリーなライフスタイルにつかれた人々の間で自然回帰志向が高まったこと。ファッション面でも、ヤングサラリーマンがアルマーニを着たりすることがステータスだったのが金の使い方や意識が変わってきた。元々、80年代後半のアメカジブームのなかで育ってきた世代ですから日本のアウトドアファッションは一気にアメカジ化します。“着るだけアウトドア”ですね。つまりファッションとしてアウトドアを楽しむ人々が急増したのです。このアメカジとアウトドアの融合が2つめの要因です。そして、一番大きかったのが92年から始まる公務員の「完全週休二日制」です。当時は企業の収益も良かったので CSR の活動も非常に盛んだった。環境意識の高まりも追い風でした。
一方、今は原発事故、度重なる自然災害によって「自然回帰志向」が高まっています。そして街中でも、老若男女が「アウトドアファッション」を楽しんでいます。今年からは「働き方改革」で年5日の有給休暇取得が義務づけられる。これはもう休まないと、遊ばないと。社会的要因はもう出そろっていますね。オリンピック後の日本で、抜け殻のようになった日本人を救うのがアウトドアなんじゃないかなあと、私は考えています。