「地鉄電車」の愛称で親しまれる富山県のローカル線、富山地方鉄道。地域の大切な交通機関としてだけではなく、宇奈月温泉や黒部といった有名観光地を結ぶ観光鉄道としての側面を併せ持つ鉄道路線です。
そんな富山地方鉄道には、今では懐かしい雰囲気のレトロな駅舎が多く残っており、映画のロケ地として登場することもしばしば。今回は富山地方鉄道にある個性的な駅舎たちの中から、厳選して紹介いたします!
田園風景に溶け込む木造駅舎、下段駅

富山地方鉄道立山線の駅のひとつである下段駅。昭和11年の開業当時の駅舎が残る駅です。かつては駅員さんのいる駅でしたが、現在は富山地方鉄道の多くの駅と同じく無人駅となっています。
駅の出入り口は線路の伸びる方向と同じ。平行した向きとなっているため、線路に対して直角に出入り口がある他の地鉄の多くの木造駅舎とは少し外観のスタイルが異なる特徴的な駅です。少し傷んだ木の外壁が長年の風雪に耐えてきたであろう駅舎の物語を語っているかのようです。

時刻表を見ると一時間に二本程度しか列車が来ない駅舎の中は、非常に静かでゆったりとした時間が流れています。
ホーム上のベンチも年期が入った木製のものが、今でも使われています。

北陸らしい田園風景が広がる景色の中にある下段駅。駅の周辺にも民家が数件ある程度で、最寄りの集落までも少し距離があります。
観光客の方が下りるであろう機会がほとんどない駅ではありますが、古い木造駅舎とともに北陸の地方らしい風景を十分に感じられる駅です。
<下段駅の基本情報>
住所:富山県中新川郡立山町榎42-2
※終日無人駅のため駅員さんはおりません
アクセス:電鉄富山駅から富山地方鉄道立山線で約30分
アニメ映画『未来のミライ』にも登場!越中中村駅

ホタルイカで有名な富山県滑川市にある富山地方鉄道本線の無人駅、越中中村駅。構内には一つのホームと待合所しかないシンプルな駅舎で、目の前を並行して走るあいの風とやま鉄道とも接続が全くなされていない小さな駅です。
この駅は2018年の夏に公開された細田守監督のアニメ映画『未来のミライ』に登場した無人駅のモデルになったことから話題になりました。

富山県出身の細田守監督自身が以前にこの越中中村駅を見た時にその雰囲気の良さや物語性を感じたと語っており、実際に作中の重要な場面に主人公が訪れる無人駅のモデルとして登場しています。
周辺の景色は作中のものとは異なりますが、実際に映画を見た後に訪れると駅舎やホーム、電柱までもがそのまま再現されていることがわかります。この風景を見て、映画のワンシーンを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか?
<越中中村駅の基本情報>
住所:富山県滑川市中村319-1
※終日無人駅のため駅員さんはおりません
アクセス:電鉄富山駅から富山地方鉄道本線で約50分
立山山麓に佇む幽玄な駅、有峰口駅

立山黒部アルペンルートの玄関口である立山駅よりも麓よりにある富山地方鉄道立山線の有峰口駅。この駅はダム湖である有峰湖や黒部五郎岳などの立山山系への登山口である折立への玄関口であり、夏時期には駅前から有峰湖や折立方面へ路線バスも出ています。
かつては駅のある集落の名前から小見駅という名前の駅でありましたが、後に有峰湖への観光客誘致のため有峰口駅に改称されました。しかし、駅舎の上の駅名の表記は小見駅のままです。

有峰口駅も無人駅なのですが、かつて駅員さんが切符を販売していた出礼口が塞がれずそのまま残されているなど有人駅時代の雰囲気が他の地鉄の駅よりも多く残されている駅です。

駅には特急列車も停車し、列車の行き違いも行われる駅ですが、列車が過ぎ去ってしまうとあたりは雄大な立山に迫る自然の空気と静寂に包まれます。
昔からの木造駅舎の姿を色濃く残す幽玄な駅舎を持つ有峰口駅、立山の自然を楽しむ傍らにぜひとも訪れたい駅です。
<有峰口駅の基本情報>
住所:富山県富山市大山町小見362
※終日無人駅のため駅員さんはおりません
アクセス:電鉄富山駅から富山地方鉄道立山線特急列車で約40分
神社のような荘厳な駅舎、岩峅寺駅

尊厳な雰囲気の瓦屋根が特徴である岩峅寺駅は富山地方鉄道立山線と上滝線の接続駅であり、地鉄の中でも主要な駅のひとつとなります。
この駅は平成21年に公開された映画『劒岳 点の記』のロケ地にも使用されており、物語の設定である明治末期の富山駅として登場しています。

駅舎の特徴である瓦張りの屋根と木造の梁が支える正面口。まるで神社や仏閣を思わせる重厚な作りになっています。駅のすぐ近くには霊峰立山を神体とする雄山神社の前立社壇があり、駅舎にはその意匠を感じることができます。

駅舎内には映画『劒岳 点の記』のロケ地に使用された際の様子が写真で展示されており、映画の世界観を演出するために大掛かりな撮影が行われたことがわかります。木製の改札も元は鉄製だったものを映画に登場する際に木製に作り直し、それが現在でも残されています。荘厳な駅舎とともに、映画のレトロな雰囲気も感じられる駅です。
<岩峅寺駅の基本情報>
住所:富山県中新川郡立山町岩峅寺2-2
アクセス:電鉄富山駅から富山地方鉄道立山線特急列車で約25分
電鉄富山駅から富山地方鉄道上滝線で約35分
レトロモダンな雰囲気満載、西魚津駅

魚津市内にある小さな駅舎、西魚津駅。魚津市街からは北西部に離れた所にあり、少し歩けば蜃気楼で有名な魚津から見る富山湾が広がっています。昭和11年に開業した際に造られた駅舎ですが、他の木造駅舎とは異なり上屋の作りやコンクリート製の柱など西欧風の意匠が見られるレトロモダンな駅舎となっています。

駅舎の上に書かれている駅名は右からの旧表記となっています。文字の形も特徴的なものであり、上屋の作りとともに開業当時はかなりおしゃれな駅舎であったと思われます。

駅舎の中も木造のレトロな作り、改札口周辺も昔ながらの駅舎の雰囲気をよく残しています。駅は地元の方の利用が多いのか付近の小学生による案内地図なども掲示されており、地元の人々の温かみも感じられます。西魚津駅は魚津の観光名所、魚津水族館やミラージュランドの最寄り駅となっているので、これらの施設を訪れる際はぜひとも西魚津駅にも立ち寄っていきたいです。
<西魚津駅の基本情報>
住所: 富山県魚津市住吉3363-7
※終日無人駅のため駅員さんはおりません
アクセス:電鉄富山駅から富山地方鉄道本線で約1時間
まだまだあります!富山地方鉄道沿線を彩る個性的な駅舎たち
富山地方鉄道の駅舎はまさに十人十色、駅によって異なる様々な見どころがあります。今回は地鉄電車に乗るのであれば一度は行っておきたいおススメな駅を厳選させていただきましたが、他にも立山連峰を見渡す駅や昭和の雰囲気満載のターミナル駅、様々な映画に登場した駅など魅力的な駅舎が多くあります。
木造駅舎で古き時代を思いながら感傷に浸ったり、映画に登場した駅舎でその世界観に入り込んだり、そんな地鉄の個性的な駅にローカル線の旅をする際は途中下車してみてはいかがでしょうか?
■関連MEMO
富山地方鉄道株式会社
https://www.chitetsu.co.jp/

【LINEトラベルjp・ナビゲーター】
清水 克樹