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裁判で「ヤクザ以下」など暴言 名誉毀損で弁護士同士が訴訟…百万円の支払い命じる

画像はイメージです。

法廷での発言や準備書面の内容をめぐり、弁護士(A)が別の弁護士(B)を名誉毀損で訴えるという珍しい訴訟の判決がこのほど、東京高裁であった。一審判決がおおむね支持され、B弁護士には、請求額220万円のうち約100万円の支払いが命じられた(一審は約120万円)。

法廷で対立する関係上、舌戦がヒートアップすることは大いにあり得るが、弁護士に限らず、発言には注意が必要になりそうだ。

●準備書面に「ヤクザ以下の行為である。人倫にもとる」

事件の発端になったのは、ある夫婦の離婚問題。A弁護士が原告の妻側、B弁護士が有責配偶者(不貞)である夫側の代理人を務め、訴訟・調停で争った。

一連の離婚問題の中で、A弁護士(妻側)は、次の3つの段階でB弁護士(夫側)から名誉を毀損される言動を受けたと主張した。

(1)別居中の生活費(婚姻費用)をめぐる訴訟での口頭発言

第2回口頭弁論期日で、B弁護士から「弁護士として不適当、向いていない」「あなたのような人が修習生を教えていることが問題」などと言われた。

(2)同訴訟の準備書面中の表現、(3)離婚調停の準備書面中の表現

たとえば、A弁護士が、夫の浮気相手の女性と交わした和解契約書に言及。損害賠償金300万円(初月5万円、以降月2万円ずつ/支払いが遅れれば計500万円)が高すぎるとして、「ヤクザ以下の行為である。人倫にもとる」と記載した。

このほか、「(浮気相手の女性は)脅されて和解契約書に署名、捺印させられた」「弁護士として存在すること自体、許されない」などの記述もあった。

なお、浮気による離婚の慰謝料で300万円という額は著しく高額とまでは言いがたい。ただし、後にこの浮気相手の女性は訴訟を起こし、30万円を支払うことで和解している。

●法廷内での口頭発言の有無をどうやって証明するか

準備書面は、裁判所に送付しているのだから記載内容の証明は容易だ。問題は、法廷での発言があったかどうか。

A弁護士は、これを証明するため、発言があった日のうちに内容を文書にまとめ、翌日に公証役場で確定日付を取得した。裁判ではこの文書のほか、自身が当日取っていたメモも証拠として提出している。

裁判所は、これらの文書やメモの内容が、被告のB弁護士が提出していた準備書面の内容と類似すると指摘。さらに、A弁護士が期日の4日後に、裁判所に対して、各発言を口頭弁論調書に記載するよう求める文書を提出していたことから、発言はあったと認定した。

●違法性は阻却される?

裁判所は、B弁護士の発言や書面の記載について、A弁護士の社会的評価を低下させ、「名誉毀損」ないし「名誉感情の侵害」に相当すると判断した。

一方で、法廷での発言すべてに責任を負わせてしまえば、訴訟活動の萎縮につながってしまう。そこで裁判所は、「争点の判断のために必要であり、表現方法も不当とは認められない場合には、違法性が阻却される」として、それぞれの発言を精査した。

たとえば、「ヤクザ以下の行為である。人倫にもとる」については、慰謝料の多寡を議論する必要性は認めたものの、この部分は、A弁護士の人格を攻撃するもので、表現方法が不当だとして、違法性は阻却されないと判断している。

一方、「(浮気相手の女性は)脅されて和解契約書に署名、捺印させられた」については、必要性があり、表現も不当ではないとして、違法性が阻却された。

●金額の判断は?

それでは金額はどう判断されたのか。

(1)法廷での発言、については、今回問題になったような婚姻費用の裁判では傍聴者は少ないと考えられるため、慰謝料を30万円と認定した。

(2)裁判の準備書面、については、訴訟記録は何人でも閲覧できるとして、精神的苦痛への慰謝料を50万円と認定した。

(3)調停の準備書面については、一審と二審で判断が変わった。離婚調停は、通常非公開で第三者が準備書面を閲覧する可能性は低い。一審は慰謝料を30万円としたが、二審では慰謝料が10万円になった。

結果、トータルは一審より約20万円減額となったが、計約100万円(弁護士費用約10万円を含む)と名誉毀損の裁判では比較的高い慰謝料が認められた。

B弁護士は、一連の発言などによって、実際にA弁護士の社会的評価が低下したとは認められないなどとして、一審の金額が高すぎると主張していたが、二審判決は、発言などの内容から「高額に過ぎるとはいえない」としている。

(弁護士ドットコムニュース)

提供元:弁護士ドットコムニュース

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