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北方の文明開化を建物に知る〜弘前近代建築めぐり〜


明治期に入り、西洋の文化を次々と吸収していった日本ですが、本州の北方の街にもその波は押し寄せました。とりわけ、弘前はお雇い外国人を抱えて北方における文明開化の拠点となっているため、ここでは“押し寄せた”というより“率先して”変化していった、と表現した方が正しいかもしれません。
そして、そんな弘前には当時の空気感を漂わせる近代建築が今もなお複数残されています。今回はそんな弘前近代建築のご紹介です。

温かみある空間を内包する「旧東奥義塾外人教師館」

写真:小谷 結城

まずは弘前城追手門からほど近い場所に立つ旧東奥義塾外人教師館です。周辺は旧藩校の建物を引き継いで開校された私立学校の東奥義塾の敷地内でした。名が示す通り、こちらも東奥義塾の遺構。ここに外国人教師を住まわせていました。
こちらは明治33(1900)年の再建です。木造2階建て、屋根は赤いトタン葺き。外側に出した木骨や窓枠を緑色に塗り、下見板張りはクリーム色で塗装されています。土台部分と煙突はレンガ造りです。陽の光を多く取り込もうと背の高い長方形の窓が多く並んでいます。

写真:小谷 結城

1階は大部分が喫茶スペースとして活用されていますが、2階は雰囲気が分かるように家具や調度品を置いています。主寝室、書斎、子供部屋、物干し場、ベランダ、そして展示室。1階には、喫茶室と事務スペースらしき部屋以外にトイレと浴室と納戸。いずれも温かみのある空間です。西洋の家は照明の光の扱い方に長けていることが実感されます。
<基本情報>
住所:弘前市下白銀町2-1
電話番号:0172-37-5501
アクセス:JR弘前駅前より土手町100円循環バス「市役所前公園入口」下車すぐ
開館時間:9:00〜18:00
入館料金:無料

ドームのあるヨーロピアンな「旧弘前市立図書館」

写真:小谷 結城

旧東奥義塾外人教師館に隣接しているのは明治39(1906)年に建てられた旧弘前市立図書館です。こちらも東奥義塾の遺構になります。木造3階建て。八角形のドームを乗せる双塔を持ち、外壁は白漆喰で仕上げられています。外観の木製部分は緑色よりも濃いビリジアンで塗られ、屋根は赤よりもちょっと濃そうな紅色をしたトタン葺き。ビリジアンと紅色が白漆喰と強い対比を成しているのが特徴です。
<基本情報>
住所:弘前市下白銀町2-1
電話番号:0172-82-1642
アクセス:JR弘前駅前より土手町100円循環バス「市役所前」下車すぐ
開館時間:9:00〜17:00
入館料金:無料

カフェに再利用されたドイツ風建築「旧第八師団長官舎」

写真:小谷 結城

旧弘前市立図書館から西へわずか100メートル少々。こちらにも大正6(1917)年に建設されたレトロな建築物があります。
屋根はドイツ屋根の桟瓦葺きで、壁面はダークグレーのドイツ壁にハーフティンバーの要素も入り、とことんドイツ風になっています。日本陸軍は明治期、ドイツ陸軍を模して改革が進められました。ドイツ風を模す日本陸軍の方式が軍の施設にも及んだ、ということでしょう。内部はモダンなテイストに一新されていますが、格天井や、庭園を臨むガラス戸のあたりは往時の姿を留めていそうです。
現在は、スターバックスコーヒー弘前公園前店として利用されています。
<基本情報>
住所:弘前市上白銀町1
電話番号:0172-35-1111
アクセス:JR弘前駅前より土手町100円循環バス「市役所前」下車すぐ
営業時間:07:00〜21:00

弘前が誇る実業家の別邸もドイツ風「藤田記念庭園・洋館」

写真:小谷 結城

旧第八師団長官舎からさらに西へ100メートル弱。大正10(1921)年の風変わりな建築があります。日本商工会議所の初代会頭として知られる実業家・藤田謙一が構えた別邸になります。
桟瓦葺きの木造2階建てで、壁面はダークグレーのモルタル掃き付け仕上げ。ドイツ壁です。キャットスライド屋根の上部は破風側にも屋根を拵えた“ドイツ屋根”こと袴腰屋根の仕様。まさにドイツ風建築です。そして、このキャットスライド屋根部分が、隣接する切妻造りの平入り部分と接続し、その間からは八角形をした階段塔が突き出します。
ちなみに、階段塔と出窓の屋根は赤のトタン葺き。建物の大部分がグレー系統の中にあって、このトタン屋根が良いアクセントになっています。内部も大理石のマントルピースやステンドグラスの窓、精緻なプラスター細工などが見られ、見応え十分です。
<基本情報>
住所:青森県弘前市上白銀町
電話番号:0172-37-5525
アクセス:JR弘前駅前より土手町100円循環バス「市役所前」下車、徒歩5分
開館時間:9:00〜17:00
入館料金:無料

弘前が誇る“白亜の殿堂”「青森銀行記念館」

写真:小谷 結城

さて、藤田記念庭園・洋館より東へ戻ります。旧東奥義塾外人教師館よりも東へ150メートルほどの場所に最後の目的地である青森銀行記念館があります。こちらが弘前市の誇る近代建築のハイライトです。
明治37(1904)年、青森県で最初に設立された第五十九国立銀行を前身とする第五十九銀行の本店として建てられ、戦前に青森銀行の弘前支店になった後、昭和40(1965)年に弘前支店が新築移転。そして、記念館として再出発を始め、現在に至っています。
設計は旧弘前市立図書館も手掛けた堀江佐吉。木造二階建ての桟瓦葺き、平入りの寄棟造りをした和洋折衷の様式になります。瓦は日本海側でよく見られる黒の釉薬瓦を使用していますが、瓦屋根でも耐えられるよう色々と工夫した特異な仕様になっています。
壁面は白の下見板張りっぽく見えますが、下地板の上に素焼きの瓦を張り詰め、この上に漆喰を塗り重ねた“張り瓦”という工法です。ドアや窓もスライド式の土戸で塞ぐことができ、抜群の耐火性能を誇ります。重厚感抜群の“白亜の殿堂”です。

写真:小谷 結城

内部には、木の風合いを活かしたカウンター。コーニスは内部も重厚で、持ち送りも優美。営業室のローゼットや照明器具も瀟洒です。旋盤加工の細いバラスターを持った曲がり階段を上ると、扣(ひかえ)所と小会議室と柱の無い約15メートル四方の大会議場。大会議場の天井は空色の格縁天井に金唐革紙を貼ったもので、白い壁とフローリングの床と相まって独特な空間が出来上がっています。
<基本情報>
住所:弘前市元長町26
電話番号:0172-33-3638
アクセス:JR弘前駅前より土手町100円循環バス「下土手町」下車、徒歩約5分
開館時間:9:30〜16:30
入館料金:200円

弘前は近代建築の宝庫です

いかがだったでしょうか。地方都市でこれほど優れた近代建築が徒歩圏内にいくつもあるというのは、なかなか珍しいことです。しかも、弘前には今回ご紹介したもの以外にもまだまだ近代建築がひしめいています。建物を観に弘前へ、そんな旅もありです。
2018年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

■関連MEMO
旧東奥義塾外人教師館(青森県観光情報サイト)
http://www.aptinet.jp/Detail_display_00000227.html
旧弘前市立図書館(青森県観光情報サイト)
http://www.aptinet.jp/Detail_display_00000023.html
旧第八師団長官舎(青森県観光情報サイト)
http://www.aptinet.jp/Detail_display_00002218.html
藤田記念庭園・洋館(青森県観光情報サイト)
http://www.aptinet.jp/Detail_display_00004834.html
青森銀行記念館(青森県観光情報サイト)
http://www.aptinet.jp/Detail_display_00000022.html

【トラベルjpナビゲーター】
小谷 結城

提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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