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明大学長特任補佐に就任して約1年。楽観視できない大学スポーツの現状。

2017年4月3日に行われた就任会見。右は明治大学学長・土屋恵一郎氏。

みなさん、大学のスポーツ選手にはどのような印象を持っていますか。
私の知人に、アメリカの名門UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のアメリカンフットボール部に所属する男性がいます。彼は、将来NFL入りを目指せるほど高いレベルで競技をしながら、授業とは別に毎日かなりの時間勉強をしています。
話を聞いてみると、アメフト上達のために食事を考えるようになり、それが環境への関心につながり、環境学に興味を覚えたそうです。その勉強が高じて、次はNASAの取り組みや就職にまで興味を持つに至ったといいます。
アメリカでは、大学のスポーツ選手のことを“Student Athlete”と呼びます。
基本はあくまでも学問を重んずるStudent。その両立への努力を社会が認めていることも、現地の大学アメフトや大学バスケットボールが社会や地域で絶大な人気を誇る根底にあります。
日本も同様かといえば、残念ながらそう言えません。
「部」という枠に収まり、スポーツさえできれば許される風土が根付いている。注目される競技や試合もごく限られたものです。

日本の大学スポーツには……楽観視できない現状がある。

昨年のラグビー早慶戦や、六大学野球などを観戦して、日本における大学スポーツへの関心の低さを実感しました。スタンドにいるのは50代以上の方ばかり。それ以下の年代は少なく、そもそも学生があまり応援に来ていません。
日本の大学スポーツには、楽観視できない現状があるのです。
私は今年より、鈴木大地長官に声をかけていただき、スポーツ庁の参与になりました。スポーツ庁は、アメリカの大学スポーツを管理している「NCAA(全米大学体育協会)」の日本版組織を確立できるように動いています。
また、私は昨年から明治大学の学長特任補佐として、大学スポーツ振興に携わるようになっていました。
これらの縁から、先日、明治大学のマスコミ交流会で鈴木大地長官の講演と、明大・土屋恵一郎学長&スポーツ庁・仙台光仁参事官&私のシンポジウムが開催されました。そこで改めて思ったことがあります。

米国では大学スポーツを経営のプロが運営している。

鈴木長官は、「大学スポーツの世界に、経営のプロがいなかった。アメリカでは教授ではなく、プロが大学スポーツの経営をやっている」ということを、その日の講演でも言っていました。私に参与を打診してくださった理由の1つも、その危機感の表れだと思います。
10カ月ほど大学に特任補佐という肩書で関わって、私も危惧を抱いています。
私も、NCAAのような組織は日本に絶対に必要だと考えます。NCAAとは、アメリカの大学スポーツを統括する組織であり、学生の練習時間、学業成績、試合の放映権料、指導者の質などに厳しい基準を設けています。
さらに各大学には「アスレチック・デパートメント」という部署が設置され、大学のブランド力向上、地域との関係性の確保、選手の安全管理や会計管理を行っています。
日本は「部」の自主性を重んじているため、真逆の形態とも言えるでしょう。

大学スポーツの現状の仕組みを本質的に改革したい!

この10カ月の間で、明大にNCAAやアスレチック・デパートメントの仕組みを導入できないかと考え、勉強や取材を行い、設計図と組織図を作って大学に提出しました。シンポジウムなどでもその内容を発表してきました。
しかし、組織が設計図通りの変換を遂げられるかは私には分かりません。
大学スポーツの現状の仕組みからの本質的な変化が求められるため、トップ人材の決断が大切なのです。
ここが特任補佐の限界で、私は発言しかできません。実践に移すのは、大学教授の方々です。
私の提案に対して、土屋学長が「外部からの意見が大切」とおっしゃられました。
正直に申し上げますと、「外部」と毎回呼ばれるのはとても悲しいことでもあります。

大学スポーツ改革を、最初にどの学校が始めるのか……。

今回のことは結局「外部」の人間ですから、参考程度に話を聞いてもらうに留まるでしょう。しかし、明大のスポーツを統括する新組織が、日本の大学スポーツを牽引するモデルになってもらいたい、と私は切に願っています。
かつて長嶋茂雄がいた六大学野球や、'90年代の大学ラグビーが人気だったように、アメリカでは今もアメフトやバスケットが圧倒的な支持を受けているように、大学スポーツが持つ可能性は大きいと信じています。
1校が突き抜けた改革を実現できれば、それをモデルに他校へ一気に展開していくはず。
そのリーダーがどこの大学になるのかは、まだまだわかりません……。
(構成:二瓶仁志/Number編集部)

提供元:Number Web

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