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空がある、海がある〜四国遍路で歩きたい「土佐遍路道」5選


平安時代にまで遡る歴史を持ち、現在も数多くの人々が歩いている四国遍路。弘法大師空海にゆかりの深い八十八箇所の霊場を巡って四国を一周する、世界的にも類を見ない環状巡礼路です。
その道のりは全長1400kmにも及び、現在は車道となっている区間が少なくないものの、昔ながらの風情を残す遍路道も少なからず存在します。
今回は高知県内を通る「土佐遍路道」のうち、特にオススメしたい5つの区間を紹介します。

亜熱帯植物が茂る室戸岬の遍路道「最御崎寺道」

写真:木村 岳人

徳島県最後の札所である第23番札所「薬王寺」からはるばる75kmあまり、どこまでも続く海岸沿いの国道55号線をひたすら歩き、ようやくたどり着くのが室戸岬です。
室戸岬は若き日の空海が修行に励み、悟りを開いた場所だと伝わっています。空海は御厨人窟(みくろど)という岩窟に住み、その内部から見えるのは空と海の景色に感銘を受けて空海と名乗る様になったという逸話は有名です。

写真:木村 岳人

高知県最初の札所である第24番札所「最御崎寺(ほつみさきじ)」が位置しているのは室戸岬の山の上。その境内へと上る遍路道は、室戸岬のやや東寄りから続いています。
山門までの道のりはゆっくり歩いても30分足らず。やや急な上り坂が続きますが、周囲を覆う木々は亜熱帯性の植物が多く、徳島県の遍路道とは一味も二味も違った印象です。これは温かな黒潮が室戸岬を通っているためで、四国では珍しい植物も生育していることから国の天然記念物に指定されていると共に、室戸阿南海岸国定公園の特別保護地区にもなっています。その南国的な雰囲気に、改めて高知県に入ったのだと実感できるでしょう。

土佐漆喰に水切り瓦、安芸ならではの町並みが残る「旧土佐東街道」

写真:木村 岳人

高知県東部の安芸地方において、遍路道は主に「旧土佐東街道」を辿ることとなります。その道中には国の重要伝統的建造物保存地区に選定されている「吉良川(きらがわ)」を始め、野根山街道との分岐点である「奈半利(なはり)」および「田野」、全国的に有名な土佐鶴などの酒蔵が集まる「安田」や城下町であった「安芸」など、昔ながらの伝統家屋が残る町並みが数多く存在します。それらを眺めながら遍路道を歩くのも一興でしょう。
いずれも実に独特な様相で、他の地方には見られないユニークな町並みが続いています。室戸に始まる安芸地方は毎年いくつもの台風が通り過ぎる台風銀座。強烈な雨風から家を守るための様々な工夫が凝らされているのですが、その最たるものが「土佐漆喰」と「水切り瓦」です。

写真:木村 岳人

「土佐漆喰」は消石灰に“ネズサ”と呼ばれる発酵した藁すさを混ぜることで強度を増した漆喰で、普通の漆喰に用いられる糊の類は含まれていません。そのため雨に濡れても糊の成分が溶け出すことがなく、雨に強い漆喰となっているのです。
また「水切り瓦」は外壁に直接水が掛かるのを防ぎ、漆喰の寿命を延ばすために設けられる小庇です。その段数は家の格を表しているとされ、それぞれの家がまるで競い合うかのように数多くの水切り瓦を備えているのが印象的。壁の腰は瓦を貼った海鼠(なまこ)壁とするなど、台風にびくともしない堅固な造りとなっています。

よさこい節のお馬も歩いた五台山「竹林寺道」「禅師峰寺道」

写真:木村 岳人

高知市中心部の南東に聳える五台山の山頂には、第31番札所の「竹林寺」が存在します。竹林寺まで上る五台山の遍路道は複数ありますが、現在、主に遍路道として使われているルートは、北側の大島集落から上る登山道です。果樹園から始まる山道を一気に上がり、高知県立牧野植物園の敷地を通り抜けるのですが、その途中には石積みで雛壇状に整地された僧坊跡が残されています。
よさこい節で唄われている「土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし 買うを見た」という歌詞のモデルとなった僧侶「純信」は竹林寺の僧房に住んでおり、遍路道は鋳掛屋の町娘「お馬」が純信の元へと通い、そして二人で駆け落ちしたルートでもあるのです。

写真:木村 岳人

また竹林寺の山門を出て第32番札所「禅師峰寺(ぜんじぶじ)」へと向かう五台山の南側にも、昔ながらの風情を残す遍路道が続いています。他の参道よりも道幅が広くて立派な石段や石畳が連なっており、まさに山寺の参道といった歴史の重みをたっぷりと感じられる遍路道です。
五台山は観光地として親しまれていることもあり、全体的に公園としての整備が進んでいる印象です。しかしながら、そこに残る遍路道は意外なほど昔ながらの風景を保っており、道筋を辿ることで五台山の新たな一面を知るきっかけになることでしょう。

塚地峠を越える「青龍寺道」と横浪三里の船旅

写真:木村 岳人

第35番札所「清瀧寺」のある土佐高岡からの遍路道は、塚地峠を越えて浦ノ内湾の湾口に位置する宇佐へと至り、そこから対岸の横浪半島に位置する第36番札所「青龍寺」へと向かいます。そのうちの塚地峠には昔ながらの古道が良好に残っています。
しかも塚地峠には江戸時代の道標が残るのみならず、宇佐側の入口付近には中世にまで遡る摩崖仏が残されているのです。四国遍路が庶民に広まったのは江戸時代に入ってからですが、この塚地峠はそれ以前より信仰の道として利用されていたというから驚きですね。
また塚地峠を越えた遍路たちは、かつては宇佐から「竜の渡し」と呼ばれる渡し船で対岸の井尻集落に渡り、そこから山を越えて青龍寺へと向かってました。現在は宇佐大橋を渡って海岸沿いの県道47号線を歩くのが一般的となっていますが、井尻からの古道は今もなお残っていますので、塚地峠と併せて歩くことをオススメです。

写真:木村 岳人

現在、青龍寺を後にした遍路は、そのまま横浪半島の尾根道を辿る県道47号線を行くか、あるいは宇佐まで戻り、浦ノ内湾の北岸を通る県道23号線を歩くのが一般的です。一方、かつてこの地を訪れた空海は浦ノ内湾を船で横断したと伝わっており、遍路もまたそれに倣って船で行くのが一般的でした。川などの渡し船を除けば、四国遍路で唯一船の使用が許されている区間なのです。
現在も浦ノ内湾では須崎市営の巡航船が一日4便運航しており、宇佐西端の「埋立」から湾奥に位置する「横浪」まで約一時間で辿り着くことができます(ダイヤ等の詳しい情報は文末のリンクをご参照ください)。浦ノ内湾は古来より横浪三里とも称され、その名の通り奥行きが三里にも及ぶ内海です。波の立たない穏やかな水面に浮かぶ山々や空を眺めつつ、束の間の船旅を楽しみましょう。

四国遍路の最長区間!「足摺遍路道」に残る古道群

写真:木村 岳人

高知県東部の室戸岬に四国遍路の札所ががあるのと同様、高知県西部の足摺岬にも第38番札所の「金剛福寺」が存在します。長く険しい道のりであるのも同様で、第37番札所「岩本寺」からの距離は距離はなんと約80km。室戸岬をしのぐ四国遍路の最長区間です。
とはいえ海沿いを延々と歩く室戸岬とは異なり、足摺岬への遍路道は山あり谷ありとバリエーション豊か。特に足摺岬を間近に迫る海岸段丘には数多くの古道が残っており、非常に歩き甲斐のある遍路道です。
足摺岬への本格的なアプローチが始まるのは、四万十川を渡って伊豆田峠を越えたところにある市野瀬という集落。そこに鎮座する「真念庵」は、江戸時代前期に『四國辺路道指南』というガイドブックを出版するなど四国遍路の大衆化に貢献した僧侶“真念”が創建したお堂で、かつては足摺岬へと向かう遍路の拠点として宿や荷物置き場として利用されていたといいます。
現在、真念庵には鍵が掛けられていて内部に入ることはできませんが、そのお堂の前からは苔むした石仏と石畳が連なる古道が続いており、まさに足摺岬へ入口にふさわしいたたずまいを見せています。

写真:木村 岳人

真念庵からの遍路道は海沿いを通り、浜辺と河岸段丘を交互に繰り返しつつ進んでいきます。江戸時代には足摺岬まで計350もの丁石が築かれており、地図のない時代の道標として遍路を導いていました。現在はそのうち55基が残るのみですが、随所に残る古道と共にかつての遍路道の様相を今に伝えています。

満喫しよう!険しくも楽しい土佐遍路道

四国遍路において高知県は「修行の道場」と位置付けられており、その名の通りまさに長く険しい道のりです。前半は主に海沿いを歩くのですが、札所は山の上にあることが多く、最後はおおむね山登りとなります。後半の遍路道はアップダウンが激しくなり、いくつもの山を越えなければなりません。体力的にも精神的にもキツイ道のりです。
しかし山が多いということは、それだけ車道として整備されていない、未舗装の古道も多く残っているということです。太平洋の荒波が打ち付ける海岸や緑の濃い山といったダイナミックな景観と相まって、険しくも楽しい遍路道が続いています。
すべてを歩き通すのは日程的、体力的に難しいという方でも、高知県の観光を織り交ぜながら、今回ご紹介した区間などの遍路道を部分的に歩いてみるのはいかがでしょうか。きっと忘れられない体験ができると思いますよ。

■関連MEMO
須崎市営巡行船情報
http://www.city.susaki.lg.jp/life/detail.php?hdnKey=340

【トラベルjpナビゲーター】
木村 岳人

提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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