(更新:)
ORICON NEWS
芋洗い坂音楽ストリート『「1993」歌が世代を超える時、バトンの役目をするアルバムの誕生』
大人向けの音楽ほどCDとの相性が抜群
レコード会社が持つ過去の音源を再発見し、ユーザーに提案しようという業界をあげてのキャンペーンである“エイジフリー・ミュージック〜大人の音楽”の第10弾キャンペーンの決起集会が行われたのだ。そこにはレコード会社だけでなく、ラジオテレビ関係者も多く集まり、業界をあげてユーザーに良い音楽をアピールしていこうという熱い想いがみえる決起集会だった。
世界的には低迷するCDセールスだけれど、世界で一番CDが売れている国日本では、昨年は一昨年よりCDセールス額がアップ、相変わらず音楽がユーザーに伝わる手段としてナンバー1の位置を占めている。
レコード会社の国際的団体であるIFPI調べの、2012年各国のメディア別のセールス比率の資料を見ていると面白いことがわかる。パッケージの比率が50%以上で高いのは日本、ドイツ、フランスなど、逆に配信の比率が50%を超えているのがアメリカ、インド、中国など。つまり、国土の広い国は、物の形で売るよりも効率の良い配信にシフトしているが、実は国土面積の狭い国はまだまだパッケージで売っているということがわかる。
なかでも、大人向けの音楽ほどパッケージとの相性が良いと言われいる。その理由は簡単。小さい頃から音楽をレコードやCDで聴いてきた人たちにとっては、物の形で音楽が手元にないと我慢ができないからなのだ。
カバー曲ブーム到来、注目される1990年代
まずは過去のオリジナル作品を売ることがキャンペーンの中心だった。でも、その再発作品も底をついてくる。そこに彗星のごとくあらわれたのがカバー曲ブーム。火付け役は徳永英明。良い作品と心地よいボーカルが合体したことで空前のセールスとなり、その後多くのミュージシャンが後を追うことになる。
基本は60年代、70年代のヒット曲。それは、当時ヒット曲を積極的に購入した団塊世代が、カバー作品となって鮮度が増した当時の作品を購入してくれるだろうという読みからだ。そしてその戦略がズバリ当たったという訳だ。
さて、そのムーブメントもここで一段落。次のステップとしていま注目されているのが1990年代の作品なのだ。1990年代は言わずと知れたメガヒットブーム。団塊ジュニア世代がリードした90年代の大ヒットの数々もあれから20年が経過して、再度聴きたい気持ちが増してきているところだろう。これからは間違いなく90年代のヒット曲カバーのニーズが高まるだろう。
大人のミュージシャンたちが生み出すグルーブ感
取り上げられた曲は「ロード」、「慟哭」、「時の扉」、「このまま君だけを奪い去りたい」、「すれ違いの純情」、「MELODY」、「島唄」、「Get Along Together」、「TRUE LOVE」、「夏の日の1993」の10曲。そのどれもが1993年のヒット曲で、心に馴染んでいる曲ばかり。心憎い選曲なのだ。
1曲目「ロード」で思わず小さくガッツポーズ(古い!)。オリジナルの楽曲が持っている演歌的な色彩が消えて、ちょっとブルージーな大人の音楽になっている。大人のミュージシャンたちが生み出すグルーブ感が心地よく届いてくるところが、若者向けのアルバムとは異なる色彩をこのアルバムに与えている。2曲目の「慟哭」もそう。工藤静香が歌った作品とは思えない大人のグルーブ感にあふれて、これまでにない新鮮さが印象的なのだ。これも面白い、あれも面白いと、ついつい最後まで聴いてしまう魅力があった。
classのメンバーが20年目に歌う「夏の日の1993」が話題性もあることからリード曲にはなっているが、そんな小手先の話題では本質が見えなくなってしまうかもしれないと感じるほど内容の濃い作品集だと思う。
このアルバムを企画したkoさんはこんなことを話している。
「1993年、たくさんの名曲が街にあふれていた……。そんな時代の珠玉の作品を集め、ちょっとオトナに、ちょっとおしゃれにアレンジしたカバーアルバムが完成しました。あの頃を思い出しながら、子どもたちへ……。青春を思い出すプレゼントとして、両親へ……。伝え合い、楽しみ合って聴いてもらえたら、すごく嬉しいですね」
確かに音楽は、そうやって世代を超えていくもの。このアルバム『1993』は、間違いなく歌が世代を超えていくバトンの役目をするアルバムになるのではないだろうか。
関連リンク
・classのプロフィール/CD売上ランキング
・class with Battle Cryアルバム『1993』特設サイト