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目指すは“国産webtoon”の大ヒット、日本のマンガが再び国境を超える日「過去作に新たな価値」生まれる可能性も?

 スマホの普及とともに広がったマンガ文化「webtoon」(縦スクロールマンガ)が、グローバル市場で急速に拡大している。2000年代初頭に誕生し、すでに20年近くの歴史があるwebtoonは、新たなカルチャーに意欲的な若手クリエイターの参入、各国のマンガ文化との融合、映像化作品の世界的大ヒットといったプロセスを経て成長してきた。マンガ大国・日本が、次の未来に進むためにも見過ごすことができないwebtoon。その現在地について、キーマン2人に話を聞いた。

「マンガの未来を切り拓く」、キーマン2人が明かす“日本発webtoon”への熱意

 LINEマンガを運営するLINE Digital Frontier株式会社の代表取締役に、NAVER WEBTOON社でwebtoonのグローバル戦略をリードしてきた金信培(キム・シンベ)氏と、電子書籍販売サイトebookjapanを牽引してきた株式会社イーブックイニシアティブジャパンの代表取締役・高橋将峰氏(※高=はしごだか)の2名が共同代表として就任した。共にミッションに掲げるのは「マンガの未来を切り拓く」ことだ。

 「日本には歴史的に豊かなマンガ文化があり、プロ・アマチュアともにクリエイターの質量は世界でも類を見ません。一方で今は、webtoonが世界のマンガ人口を広げています。私たちが取り組みたいのは、日本の優秀なクリエイターと世界標準のフォーマットであるwebtoonを掛け合わせた“日本独自スタイルのwebtoon”を生み出すこと。過去にも世界の読者を魅了してきた日本のマンガ文化、そこをベースとして発展させた“日本発webtoon”は現代の読者をさらに幅広くつかみ、映像化などを通して作品の価値を最大化させていくはずです」(金氏)

 今年5月にはLINE Digital Frontierとドラマ『愛の不時着』などを手がける韓国のドラマ制作スタジオ・スタジオドラゴンが提携した合弁会社「スタジオドラゴンジャパン」の設立が決定。日本オリジナルのwebtoon作品の映像化を推進することを発表している。また、同じく5月にNAVER WEBTOON社、TBS、SHINE Partnersとの3社合弁で、韓国にwebtoon制作の新会社「Studio TooN」を設立することも明かしている。こうした動きから、“日本発webtoon”の発掘や映像化は、さらに加速していきそうだ。

日米韓の状況に違い、アメリカではアメコミと融合

  • アメコミと融合、米国の大ヒットwebtoon『ロア・オリンポス』

    アメコミと融合、米国の大ヒットwebtoon『ロア・オリンポス』

 そもそもwebtoonが誕生した背景には、2000年代初頭の韓国で「デジタル普及に伴う出版マンガ市場の崩壊」があったことを金氏は証言する。

 「それまで紙の雑誌で描いていた作家さんが発表の場を失ったのです。そうした中でポータル事業を手掛けていたNAVERが、ユーザーにより良いコンテンツを届ける一環として着手したのがウェブコミックでした。やがてユーザーに身近なデバイスがPCからスマホへと移行していく中で確立されたのが、縦スクロールで読み進めるwebtoonというフォーマットです」(金氏)

 2010年代には、スマホの普及とともにwebtoonもアジアを中心に世界に広がっていった。さらに同社では、同じく出版マンガ市場が崩壊しつつあったアメリカにおいても作家を支援。従来のアメコミとwebtoonのフォーマットを融合したマンガ表現を確立していった。先ごろ、アメリカで“マンガ界のアカデミー賞”とも言われるアイズナー賞でベストwebコミック部門最優秀賞を受賞した『ロア・オリンポス』(2018年〜)などの大ヒット作も続々と誕生し、今やwebtoonは欧米でも一大マーケットを築いている。

 一方、日本では出版マンガ市場は崩壊しておらず、現在も良質な作品が生み出されている。昨年は電子書籍市場が紙の市場の2倍を超えたが、マンガ大国・日本においてwebtoonはどこまで普及しているのか。

 「現在は出版マンガもスマホで読んでいる人が多くなってきました。またwebtoonも世界と同様に人気を伸ばしており、両者が共存している状況です。やはりユーザーはフォーマットではなく、作品の面白さで判断します。たとえばゲーム。かつて携帯電話の普及でシンプルなソーシャルゲームが登場した頃には、家庭用機のハイスペックなゲームと比較した懐疑的な見方もありました。ところが今では市場を逆転するまでになっています」(高橋氏)

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