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櫻井翔、“完璧さ”の余白としてポンコツを解禁 “ゆるさ”を恐れず見せたことが付加価値に
“抜けている”イメージは役柄だけではない、ドラマとバラエティで魅せる共通項
Twitterではおおむね好意的だが賛否両論。「ポンコツ役かわいい」「嵐の冠番組『VS嵐』『嵐にしやがれ』で見せていた部分をまた見られてうれしい」といった声が多数を占めるが、なかには「エリート櫻井翔にポンコツ役ははまらないな」という意見も。確かに櫻井は家柄、学歴、人気もすべてが完璧。“しっかり者”“知的”なイメージが強く、前評判では「ポンコツ役を櫻井が?」という懐疑的な声も聞かれた。
「もちろん完璧で“しっかり者”“知的”のイメージは間違ってない」と話すのは長くテレビ誌などで嵐を取材してきたメディア研究家の衣輪晋一氏。「しかし、ファンはもちろん、嵐の冠バラエティ、その他の出演バラエティ、そしてライブなどの初回特典映像を観た方からすれば、“ポンコツ”の一面が櫻井さんの長所であることは広く知られていること」(同氏)
例えば単独の冠番組『1億3000万人のSHOWチャンネル』(日テレ系)。芸能人やアスリート、視聴者の「やってみたい」「見てみたい」企画を実行するバラエティだが、櫻井のチャレンジ回では番組側が本気で櫻井をイジりにくる構成に。バク転ができない櫻井がバク転に挑戦する回では櫻井は練習中、「めっちゃ怖い」「放送しないで。お願い」とヘタれぶりを発揮。スタジオで実際に披露した際も明らかな“補助付き”のバク転であり、共演者から総ツッコミを受けていた。
初のケーキ作り回も同様。メモを自分で作ったにも関わらずその意味を忘れてしまいミスを連発。薄力粉をふるいにかけるシーンでは、薄力粉をふるいに入れた後で、そのふるい器自体をトントンと振って粉を細かくする工程があったが、櫻井の場合はふるいの上に薄力粉の入った皿を構え、横に振り振り…。もちろん粉は落ちてこない。その謎行動にスタッフも「怖っ!」とツッコみ、ファンからも「あれは恐怖を感じた(笑)」「新たな伝説が生まれた」などの声があがっていた。
イジられ役は二宮和也の功績? “イジり”許容の英断で“優等生キャラ”プラスα
なかでも有名なのは、私服のダサさ(?)。2009年の『ひみつの嵐ちゃん』(TBS系)のダサいコーディネートを決める「マネキンファイブ」で櫻井はグレーとグレーのパーカーを二枚着用する“やらかし”を。この「ダブルパーカー」にはスタジオの観客からも悲鳴があがっていた。
また強烈な印象を持って知られる櫻井の“迷彩好き”。2015年に放送された『櫻井有吉アブナイ夜会』(TBS系)で、櫻井は台湾日帰り旅をしたゲストの多部未華子に「一番良かったことは?」と聞くと多部は「茶器を買ったところ。海外に行ったら思い出と一緒に食器を集める」と回答。これに有吉が「櫻井くんもそうじゃないの? 各国の迷彩を」とイジると櫻井は「軍事評論家じゃないから」と笑いながら返していた。
「迷彩好きに関しては少々誤解があり、2017年放送『メレンゲの気持ち』(日テレ系)でも、メンバーが櫻井さんへの迷彩イジりを気に入って、メンバーからの誕生日プレゼントが“迷彩縛り”になったこと、実は迷彩は好きではなく“そのイジり、もういい!”と思っていることが明かされています。ですが櫻井さんはこれを許容。今年になって『news zero』で二宮さんから誕生日に迷彩マスクのプレゼントを受け取ったと報告している。こうしたイジられポイントを見せて、優等生キャラ知的キャラと対比するギャップ、余白をつくることができたからこそ、嫌味のないキャラになれた」
「またジャニーズで高学歴となると、共演するタレントや芸人で、櫻井さんに対してどこまで言っていいのか悩む人も多かったはず。だが“イジリもOK”の立場を明示することで、番組内で様々な展開を生み出すことが出来るようになった。実際、メンバーがいない『夜会』でも有吉さんからの“イジり”を許容し、そこから生まれる笑いも多いですし、先述の『メレンゲ』内で、不得意なのを知った上で後輩の伊野尾慧さんから『櫻井くんはバク転どうですか?』とイジりが。これにも笑顔で『この話題終わりましょう』と応えて笑いを誘い、後輩と自分、どちらの株も上げていました」(衣輪氏)
高学歴ジャニーズのロールモデルにして唯一無二の立ち位置
例えば先日放送された『news zero』。山本紘之アナウンサーが体操・内村航平選手へのインタビューの感想として「(心意気に感動して)開いた口が塞がりませんでした」と言い間違いを。SNSはプチ炎上状態となり、番組ラスト近くで山本アナは「舌を巻くが正しい表現」と訂正。これに有働由美子アナが「『開いた口が塞がらない』を使ってしまったことに、『開いた口が塞がらない』と、きっと豊田アナが怒っているのでは?」と、「鬼教官」で有名な豊田順子アナの名を引き合いに出すと、櫻井はすかさず「(お2人の)やり取りに舌を巻きました」とフォロー。有働アナが「うまいなー! 全部拾っていきました」と絶賛する場面があった。
こうした櫻井の活躍は後輩である小山慶一郎や、中丸雄一、中間淳太、河合郁人らにも多大な影響を与えており、情報番組の出演するアイドルが増加したほか、『Qさま!!』など高学歴メンバーがクイズ番組に出場するまでに。いちはやく“ギャップ”を提示し、大卒アイドルの先駆者として活躍した櫻井の功績は大きい。
アイドルとして天下をとったが、単独でもさらに存在感を増している。頭脳明晰とポンコツを両立させ、ゆるさをさらに開放できたことが飛躍のカギに。「インタビューをしても、歳を重ねてますます大人っぽく、許容度も増している印象。今後、どんな新たな価値を生み出してくれるか楽しみ」と衣輪氏。櫻井翔という人物のピークはここから始まりそうだ。
(文/中野ナガ)