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『Fate』15周年、ソシャゲ業界の“逆”をいく「KPI度外視」と「“活字”重視」

  • 『Fate/stay night 15th Celebration Project』のビジュアル (C) TYPE-MOON All Rights Reserved.

    『Fate/stay night 15th Celebration Project』のビジュアル (C) TYPE-MOON All Rights Reserved.

 PCゲーム『Fate/stay night』が1月30日、発売から15周年を迎えた。本作は2004年1月30日にPCゲーム(発売:TYPE-MOON)として発売され、その後、『Fate』の世界観をベースにしたさまざまなゲームやアニメ、映画として展開。中でも、『Fate/stay night』を元として製作されているスマートフォン専用ロールプレイングゲーム『Fate/Grand Order』(フェイト・グランドオーダー/通称:FGO)は、世界的な規模で支持される人気コンテンツとなっている。そこで今回、『Fate』という人気IP(知的財産)に携わる・アニプレックス宣伝担当の金沢利幸氏と、『FGO』 第2部の開発ディレクター・カノウヨシキ氏に、『Fate』が15年にわたって支持される理由を聞いた。

クリエイターの数だけ世界観が拡大、『MARVEL』や『DC コミックス』に近い作品性に

――『Fate』シリーズが2004年にスタートしてから15年が経過しましたが、コンテンツとして拡大しつづけ、さらに幅広い層を取り込み支持を拡大しています。
カノウ『Fate』コンテンツには、魅力を一言で語れない懐の深さがあると思います。ストーリー、キャラクター、作画はもちろん、サーヴァントの詳細な設定にハマる人もいます。そんな、さまざまな魅力があるのがコンテンツの力とも言えると思います。

――ストーリーといえば、シナリオを手掛ける奈須きのこさんへのユーザー支持は圧倒的です。
カノウ『Fate』シリーズは毎年さまざまな新作が生み出されていますが、この15年間、話がどんなに枝分かれしても、奈須さんの構築した世界観が根底としてあるため、“Fateらしさ” がまったく損なわれないのだと思います。

金沢『Fate/stay night』から始まり、多くの作品へ広がっているという意味では、「『MARVEL』や、『DC コミックス』に近い作品性になってきているのでは」という話をしたことがあります。まず、奈須さんと武内さんが中心となって作り上げたシリーズの原典となる『Fate/stay night』があり、そこから派生した『Fate』作品に多くの作家さんやイラストレーターさんが加わり、関わったクリエイターの数だけ世界が広がっている。それが『Fate』が15年続いている要因の一つなのではないかと思います。

――15年経ってもコンテンツとして色褪せないのは、幹となるストーリーが強固だからなんですね。
金沢奈須さんの描かれたストーリーや、武内さんが描かれたキャラクターが15年を経ても色褪せず、むしろさらに進化発展しているというイメージです。

ゲームのトレンドは他者との“繋がり”、『FGO』では物語を体験することを優先

――モバイルゲームにおける、昨年上半期(2018年1月〜6月)の売上1位は『Fate/Grand Oder(以下、FGO)』という調査結果もあります(Mobile Index調査)。2015年7月30日にリリースしてから3年以上が経ちますが、その人気に衰えは見えません。とはいえ、人気IPをゲームとして成立させ、人気を維持する難しさはあるかと思います。
カノウそうですね、昔からの人気ゲームやアニメをリメイクする際と同じで、ファンの皆さんが思う「こうあるべき」っていう理想と、新しく接する人に楽しんでもらうための“新要素”を両立させる難しさはあります。ただ、他の『Fate』関連の新規作品の制作と同様に、奈須さんをはじめとしたTYPE-MOONさんのお考えを軸に制作していくことによって、『Fate』ファンの期待を裏切ることは決してないと考えています。

 それがまさにTPIという言葉に凝縮されています。これは造語なんですが,“TYPE-MOON Performance Indicator”の略です。具体的には、企業の一般的な指標になるKPIなどデータに基づく意思決定を優先せず、誰よりもコアユーザーであり、『Fate』シリーズを愛しているTYPE-MOONさんの導く指標に従っていれば、ユーザーの想いに対して絶対的に応えられるはずだ、という考え方です。

――昨年、ゲーム内でのメインストーリーの第2部がスタートしました。『FGO』といえば、ストーリーの文量も話題になります。
カノウ以前は『FGO』の文字数は200万字以上と公表していましたが、現在では500万字以上になっていますね。

――膨大な量ですね!しかも、ユーザーは『FGO』においてそのストーリーを楽しみにしているという点が、他のスマホゲームと大きな違いかと思います。
カノウ1冊300ページの文庫本がだいたい10万〜15万字ですから、『FGO』をプレイしている方は、単純に文庫本を40冊くらい読んでいることになりますね。一般的なスマートフォン向けゲームなら、逆に文字数は制限するのが普通ですから、『FGO』ならではの魅力だと思います。

――昨今のゲームのトレンドはソーシャル、いわゆる他者との“繋がり”です。しかし、『FGO』では物語を体験することを優先していると。
カノウ第1.5部からは、集中してストーリーを読んでいただきたい部分については、バトルが必ずあるわけではないという構成になっています。ライターのみなさまが描く物語、世界観、キャラクターが一番の魅力であるという理解の元、いかに世界観に浸ってもらえるかを考えた結果、ゲームの都合を優先するのではなく、その演出も感じながら自然とストーリーが頭に入ってくるようにしていきたいと考えています。

課題は既存と新規ユーザーとの差「みんなを満たすために葛藤」

――『FGO』の次の一手として、アニメ化の展開があるとお聞きしました。

金沢アニメ化に関しては、「第七特異点 絶対魔獣戦線バビロニア」と「第六特異点 神聖円卓領域キャメロット」、この2つのエピソードを今回アニメ化することになりました。この2作に関しては、2018年の1月に実施したユーザーアンケートの中でも、特に印象に残ったエピソードの第1位、第2位に選ばれています。第七特異点については2018年12月31日の年末特番でキャラクタービジュアルを発表させていただいて、この先もメインキャラクターのビジュアルを続々と公開していきますので、そちらも期待していただきたいです。

――1月12日より公開している『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly」』が土日2日間(1月12日〜1月13日)の全国映画動員ランキングで1位を獲得しました。ゲーム、アニメ、映画などすべてで順調ですが、スタッフ内で共有している課題などはありますか?

カノウこれだけ長く運用しているタイトルですと、既存と新規のユーザーさんとで差がついてきます。そこをいかに埋めていくかは課題です。新規の方に向けての施策も大事ですし、これまでプレイしてくださっているファンの方への施策も必要です。いろんなプレイスタイルの方がいて、みんなを満たすためにはどうしたらいいのか?という葛藤は常にあります。

――アニメ関連での施策はありますか?

金沢昨年12月から全国4都市をめぐる「FGO冬祭り」を開催したり、国内最大級のアニメイベント「AnimeJapan」への出展をさせて頂き、ゲーム外でユーザーの皆さまにお会いできる体験型の機会を作っています。『Fate』シリーズには15年の歴史がありますので、長く親しんでいただいている方にも、新たに入ってきた方にも楽しんでもらえるプロモーション企画を考えています。

――体験型のリアルイベントを大事にすることで生まれるものとは?

金沢例えばリアル脱出ゲームやオーケストラコンサートなど、ゲームを触れる方法とは異なる側面から『FGO』という作品を楽しんでいただいいて、新たな発見をしていただきたいですね。

――今はSNSがあるので、体験を誰かに伝えたい、共有したいという感情が自然と芽生えますね。

金沢コンテンツの面白さを、その場で一緒に共有できるのがイベントの醍醐味です。一人だけ楽しいというのではなくて、みんなで楽しむ、という体験。誰かにこれを伝えたいねって共感しつつ、それを共有ができるという意味では、今後もリアルイベントやゲーム外での展開に積極的に取り組んでいきたいと思います。

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