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戸田恵梨香の“リセット力” あえて印象を残さず新たな姿を更新

 「今期一番」と評しているSNSユーザーも多い秋ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)。ムロツヨシ初の恋愛モノ、サンドウィッチマン・富澤たけしの自然な演技、小池徹平の怪演など、話題にも事欠かない今作のヒロインを演じるのが戸田恵梨香だ。知名度やキャリアのある女優であるが、「戸田の印象は?」「どんな女優?」と問うた時に印象が十人十色で、定まったイメージが出にくいことにも気付く。そんな“作品と役柄を生きる”女優・戸田恵梨香の類まれな“リセット力”に迫る。 

10代から第一線で活躍し続ける 貴重な“正統派女優”

 戸田恵梨香は1988年生まれ、今年30歳を迎えた。05年のドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)の準ヒロイン、06年の映画『デスノート』シリーズのミサミサ役など、10代から女優として注目を集め、07年のドラマ『LIAR GAME』(フジレビ系)でその人気は決定的に。その後も『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジ系)、『流星の絆』(TBS系)と続々と話題作に出演し、『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBS系)ではこれまで演じていた役柄の印象をガラリと変えた好演&怪演&熱演を披露。『リスクの神様』(フジ系)など苦戦した作品もあるが、概ねヒット作に導いた女優というイメージまでは、ほとんどの方が同意ではないだろうか。

 30代に突入した現在も先述の『大恋愛』はもちろん、19年後期のNHK連続テレビ小説『スカーレット』のヒロイン役に決定するなど順調にキャリアを積み重ねている。このように、10代からずっとメインキャストで、しかも今も第一線で活躍という“貴重な正統派女優”という評価も誰もが否定しないところだろう。

 現在放送中の『大恋愛』も、『オリコンドラマバリュー』の満足度で毎回1〜2位を争う高ポイントを続けている。徐々に若年性アルツハイマー病に侵されていくヒロイン・尚(戸田恵梨香)と小説家・真司(ムロツヨシ)の“美女と野獣”の構図でも、「こんな美人がこの男を好きになるはずがない」などの違和感の声が噴出することもなく、視聴者は2人の恋物語に没頭しているようだ。また今作で戸田は実年齢の4つほど上の年齢を演じており、さらにここから10年の大恋愛を描くというのだから、戸田が新たな幅を魅せる可能性もあるとして注目を集めている。

ヒット作に恵まれながらも、いい意味で“一定の印象を残さない女優”

 だが「戸田の印象は?」「どんな女優?」と考えた時に、なぜかすぐには定まったイメージが出てこない。『SPEC』では人格破綻気味な女刑事役、『コード・ブルー』(フジテレビ系)ではキツイ性格の医師、『デスノート』では国民的アイドル、『流星の絆』では詐欺師な、バラエティ豊かな“濃い”役を演じているものの、SNSなどで以前演じた役と比較される声も少ない。つまり演じた役柄のイメージをいい意味で次の役に残してない。

 「同世代の女優で言うと、例えば新垣結衣さんなら優等生かつ清純派。石原さとみさんならファッションアイコン、小悪魔系など、視聴者はある程度の印象はあるもの」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「だが戸田さんは、ドラマが決まっても、“次はこんな役柄かな”というのが想像しにくい。ここまでの知名度とキャリアがありながら、“定まった印象”がないんです。ですから“濃い”役柄を演じても違和感がない。いい意味で“一定の印象を残さない女優”と言ってもいいと思います」(衣輪氏)

 多くのヒット作に出演し、日本を代表する女優のひとりであるにも関わらず、不思議なことに“戸田恵梨香ってこうだよね”という印象を残さない。衣輪氏がいうように戸田は、“戸田恵梨香”というイメージを探すと、逆にその本質から遠ざかってしまうタイプの女優なのかもしれない。

あえて地声で演じることも作戦? “作品に馴染む”ことで役を視聴者に押し付けない

 これは戸田が女優のジャンルとして“作品に馴染むタイプ”だからということもあるだろう。例えば『大恋愛』でムロのことばかりが記事に取り上げられるのも、彼女が作品とその雰囲気に同化しているからと考えられる。また“代表作(役)”、“女優としてのイメージ” が強く着きすぎてしまうと武器になる場合もあるが、役の幅が狭まる可能性もある。故・渥美清さんはそれで悩んだといわれているし、今年2月に高橋一生が「ルーブル美術館展」オフィシャルサポーター就任の会見で「印象に残らないほうが芝居はしやすい」と語ったのも同じニュアンスといってよいだろう。

 そんな中で、「私は戸田さんがいい意味で印象を残さない理由のひとつにあのハスキーな“声”があると考える」とも衣輪氏。「音も声も視聴者に訴えかける重要な要素。戸田さんは若手女優がやりがちな“作り込んだ可愛い声”ではなく“地声”で演じている。それだけで自然ですし、いい意味で“作っていない”分、役のイメージの“決定”を視聴者に押し付けない。押し付けられる違和感がないため視聴者の受け取り方にも空白ができ、気付かないうちに“今”画面で演じる戸田さんに集中してしまっている」(同氏)


 その結果、前の作品が“風化”してしまうように感じるのかもしれない。有村架純や木村文乃らからも“憧れの女優”と慕われる戸田恵梨香。過去のORICON NEWSのインタビューでも「イメージが確立されるのが怖いという気持ちはあります」と語っているが、むしろ作品に合わせて印象を変え、“戸田恵梨香”を匂わせていない。彼女はまだ30歳になったばかり。今後どう飛躍していくのか興味津々だ。

(文/中野ナガ)

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