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女性ウケだけじゃない、年間トップ・白石麻衣写真集ヒットの裏にWEB戦略
L.A.撮影の発案は白石本人、自ら知り合いのスタッフにヒアリング
白石本人からも、「同性の女性から支持されるようなものにしたい」という要望があった。そこで谷口氏は「それを今、一番表現できるのは誰か」と考え、まずは『anan(アンアン)』(マガジンハウス)や『sweet』(宝島社)など数多くの女性誌のカバーを撮影しているカメラマン・中村和孝氏に白羽の矢を立てた。そして、スタイリストやヘアメイクも女性誌で活躍するスタッフを集めていったのだという。
「米L.A.で撮影したいと発案されたのも白石さん。L.A.では都会的なニュアンスも表現できますし、海もある。さらにオシャレなホテルなどもあるので、幅広い表現ができました」(谷口氏/同)
同作には、フリーマーケットでリラックスした笑顔を見せる白石の姿もあるが、これも白石からの発案。自ら知り合いのスタッフにヒアリングを行い、おかげで「食べている写真も多く撮影できた。ファンから“食べ石さん”と呼ばれるチャーミングさも表現できた」と胸を張る。
アイドル、モデル、グラビアの3つの柱が噛み合った白石
「ただキレイなだけだったら、おそらくそこまでは売れない。白石さんには、モグラ(モデル・グラビア)女子的なニーズに加えて、アイドルという大きなバックボーンがある。アイドル、モデル、グラビアという3つの柱が噛み合った方だと思うのです」
そう考えた谷口氏は、改めて白石の魅力を探った。ファッショナブルであれば、女性ウケは狙える。だが「色気が下品にならない」ということは、一般のグラビア好き男性ユーザーに対してはマイナスに働く可能性がある。そこで男性が「お!」と目を引く、キービジュアルになるセクシーな写真も狙った。さらに谷口氏は彼女のファンについても思いを巡らせて、親近感のある笑顔や変顔風のアップも掲載した。実際に、女性読者、一般男性読者、ファンの読者で、ウケの良かった写真はそれぞれ異なるそうだ。
全写真の3分の1、約60点をWEBで見せる…業界の常識を覆すプロモーション
谷口氏が施行したのはWEBを利用したプロモーションだった。「業界では、一番いい写真は写真集を買った人のためのもので、WEBで見せてはダメだ、というのが半ば常識でした。ですが、それで誰にも知られず終わっていく写真集は山ほどある。そこで、かなりの部分を見せるプロモーションを仕掛けたのです」。
その写真の数は約60点。これは写真集の全写真の実に3分の1に相当する。果たして、これが功を奏した。中でも最もインパクトを残した写真は、露出の多いデニム素材のオーバーオールから、白石の美乳がうかがえる横からの写真。谷口氏は「あの写真が載っている写真集だよね、という“アイコン”を作れたのも大きいですね」と分析する。
“売れている”こと自体がニュースになり、転がり続けていく
「あくまで結果論ですが、一般の方に手にとってもらうためには、そうした社会性、ニュース性を持ったキャッチコピーが大切ではないかと思いました。“売れている”こと自体がニュースになり、転がり続けていく。今は、さまざまなものがあふれる中、アタマ一つの抜け出るためのストーリーが重要なのかもしれません」
谷口氏は現在、写真集業界で新たな潮流を作ろうと模索中だという。果たして今後、谷口氏のどのような“戦略”が世を騒がせていくのか。白石麻衣の写真集は、白石にとっての新しい世界への“パスポート”となっただけでなく、写真集業界で新たな扉を開く“パスポート”になっているのかもしれない。
(文:衣輪晋一 写真:中村和孝撮影 写真集『パスポート』より)