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アナログ全開の“童心回帰”系のテレビ番組が人気の理由は?

  • 『池の水ぜんぶ抜く』のMCロンドンブーツ1号2号・田村淳 (C)ORICON NewS inc.

    『池の水ぜんぶ抜く』のMCロンドンブーツ1号2号・田村淳 (C)ORICON NewS inc.

 テレビ東京で不定期に放送されている『池の水ぜんぶ抜く』が話題を集めた。手付かずに放置していた池の水を抜き、そこにどんな生物が棲み着いているか検証する企画だ。SNSなどの評判を見ると、「ワクワクする」「深海探索レベルでドキドキする」など、子どものようにはしゃぐ意見が散見されるほか、池の水をキレイにしていく面白さについて、土地を整備し農作業がよく育つようにする『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)を引き合いに出しての感想も見られる。そのどちらも内容的にはアナログで、かつ人類の営みに沿った“根源的”なものが描かれているように思うが、技術が発展した今、なぜこのような番組が人気を博するのか?

ネット技術の躍進により多様化するコンテンツ 光る“アナログ”系番組

 かつて娯楽と言えばテレビが中心。だが今や時代は進み、インターネットの技術が躍進し、SNSや動画配信サイトなど人々の楽しみ方は多様化している。さらにWEB番組、LIVE配信にも注目が集まっており、視聴者の意識はますます変化。だがテレビ局が手をこまねいて見ていたわけではなく、テレビもこれら技術を使い様々な試みに挑戦した。CG技術を使った表現方法はもちろん、データボタンやSNSなどでの視聴者参加型が台頭。2013年には、ドラマとクイズを融合し、視聴者も家庭から物語に参加できる『リアル脱出ゲームTV』(TBS系)のような実験的な番組も制作されている。

 では、娯楽を取り巻く環境が目まぐるしく進化していった今、敢えてアナログ的な『池の水〜』を見る楽しさとは何なのか。メディア研究家の衣輪晋一氏は「環境問題や人間の無責任さなどの社会問題に人々が共感していることも挙げられますが、今年6月に放送された『池の水〜』に立候補して出演した伊集院光さんの言葉が、その楽しみを端的に表わしていると思われます」と解説する。

人気のポイントは童心に返って子ども心を刺激してくれる“ドキドキやワクワク”

 番組内で伊集院は「なんでこの番組そんなに出たいんですかって聞かれたんですけど、出たくないですか、逆に!? 子どもの頃、ドブさらいとかやってると何出てくるのかなって。水が減ってきて魚の背中が見えてくるとすごくワクワクしなかったっすかね?」と話している。つまり、伊集院はすっかり“童心に返って”この番組を楽しんでいるのだ。衣輪氏は「それが同番組の人気のポイント」と語る。

 何が出てくるか、何が起こるか分からないドキドキやワクワクが楽しめる番組と言えばほかに、『世界の果てまでイッテQ!』(日テレ系)、『陸海空 こんな時間に世界征服するなんて』(テレビ朝日系)、『クレイジージャーニー』(TBS系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などが挙げられるが、ネットなどを含め、どれも話題になっている。「視聴者層の高齢化が叫ばれ、低視聴率も叫ばれる昨今ですが、子どもが楽しむようなワクワクドキドキの番組に人気が集まっているこの傾向から、視聴者の心に届く番組とは何か、その鍵が見つかるかもしれない」(衣輪氏)

 確かに『〜イッテQ!』『陸海空〜』『クレイジー〜』は、冒険や探検、さらに怖いもの見たさといった子ども心を刺激してくれる。さらに『池の水〜』『〜DASH!!』『水曜日の〜』も入れれば、やってみたかった(好奇心)けれど、自分ではできなかったことを、テレビの企画力と資金力で実際に実行してしまう部分にも面白さが見つけられる。前出の衣輪氏は「これは、スポーツ中継にも似た面白さではないか」と持論を展開する。

“やってみたかった”ことを“やってみた”、単純で普遍的な内容の強さ

 「スポーツは、極論を言えば、誰もが自分でプレイして楽しむことは可能。ですが、プロの試合では、自分では到底到達出来ないレベルの表現法や技術が見られます。資金力もありますが、いずれにせよそれは”憧れ”にもつながり、その想いは”童心”も蘇らせる。現在、You Tuberが小中高生に人気がありますが、これも同じ理屈ではないか。ちなみにYou Tuberがやっていることは、実質的には過去にテレビがやっていたこと。先日、あるキー局のプロデューサーに“テレビも過去に回帰していく流れにあるのか”と質問したことがあるのですが、“回帰しているのではなく、多様化していくことで逆に”普遍”がクッキリと見えることがあるのではないか”と話されていました」(同氏)

 普遍的な面白さとは純粋で単純、かつ馴染み深いため、見ていてほっとする。老若男女の“共通言語”ともなり得るため、お茶の間で番組から流される内容を共通の話題として盛り上がっていた、かつてのテレビの姿も彷彿とさせる。さらに言えば『池の水〜』は企画のアプローチ的に「データから見て、今視聴者に求められるものは何か」という大人の判断だけがスタートではなく、「こういうこと興味ある、やってみたい!」という純粋な想いが始まりだったと聞く。制作側も、企画を通す側も、”童心に返った”…あの頃自分が楽しんでいたものに対する興味をもっと重視することで、より”普遍”的で、爆発力のある番組が生み出せるのかもしれない。

(文:西島享)

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