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三浦友和、良き父からコワモテまでこなす“円熟味”
“誠実で実直”、パブリックイメージからの脱却に苦戦した時期も
それでも三浦は年齢を重ねながら良き父親や社会的地位の高い役をこなしてきたが、『松ヶ根乱射事件』(2006年)ではいいかげんでダメダメな父親、『転々』(2007年)では見た目も主役のオダギリジョーばりのすだれ髪に無精ヒゲという変貌を見せ、これまでのイメージを覆す怪演で両作品は『第81回キネマ旬報ベストテン』の助演男優賞を受賞。さらに2009年は『独眼竜政宗』と同じく『沈まぬ太陽』で渡辺謙と共演し、誠実で実直な渡辺と対極をなす傲慢で出世欲に目がくらんだ男を熱演、翌年からの北野武監督『アウトレイジ』シリーズ(2010年、2012年)では、非道なヤクザにも挑戦する。
その“極悪キャラ”はドラマ『極悪がんぼ』(フジテレビ系/2014年)でも発揮され、髪を「道行く人に指をさされた」(2014年4月8日/ORICON NEWSより)という“おじさんド金髪”に染めるまでに至り、三浦は“ホームドラマのお父さん”から“渋いおじさま”、さらに“強面”までこなす、文字通り硬軟両面を併せ持つ“名優”となった。映画に比重を置き、主演ではなくバイプレイヤーとして着実にキャリアを積み重ねてきた結果が、実績としても日本アカデミー賞やブルーリボン賞等、数々の映画賞獲得へと繋がり、2012年秋には紫綬褒章も受章することになる。
ダメ親父から極悪までこなす怪演! 紆余曲折経て結実した俳優人生
ただ、そうした“極悪三浦”のキャラも、「プライベートではよき夫・父」と誰もが知るイメージがあるからこそ引き立つのも事実。実際、明治安田生命が毎年発表する『理想の有名人夫婦ランキング』では、三浦夫妻は昨年で何と11年連続の1位。先の『第8回TAMA映画賞』受賞の際にも、「私がこうしていられるのも、妻のおかげが大きい」と感謝の言葉を捧げている。
今回の『就活家族』第1話で三浦は、故・忌野清志郎さんと高校の同級生でもあり、自身ももともとはミュージシャンを目指していたというだけに、ドラムをたたくシーンでその腕前を披露して見せた。三浦は「『音楽の才能ないから別のことやったら?』と言われて、いまの事務所を紹介してもらって、俳優になった」と忌野さんの勧めもあって、「それから45年、いろんな作品に恵まれてきました」と先に授賞式でしみじみと語っていた。ドラマの役どころとしては、実直で尊敬すべき上司・父親がエリートから転落。妻・水希(黒木瞳)のホストクラブ通いや息子・光(工藤阿須加)の怪しげな就活塾通いなど、ひと筋縄でもいかない家庭と自身の問題に葛藤する様を描いている。ネットでも「エリートから転落する様が切ない」「ズキズキと胸が傷んだ」「感情移入し過ぎて胃が痛くなる」と役を通して、「三浦友和がさらに好きになった」と俳優としての年輪を経てさらに“円熟味”のある演技が光っている。本人も「とても幸せな仕事だと感謝しています! このドラマを撮影し、でき上がったものを見るたびにこの家族が愛おしく感じるようになっています」(2017年1月29日/ORICON NEWSより)と充実した仕事に喜びを感じているようだ。
45年の俳優人生で若いころから主演を張り、一般層からのイメージが“足かせ”になりながらも、バイプレイヤーとして実績を積み重ね、さわやかな二枚目から最悪な父親、非道なヤクザまで、硬軟いずれもこなせる“名優”となったのも、さまざまな紆余曲折を乗り越えてきたからこそだろう。ここにきて年齢相応もしくはそれ以上の円熟味で演技力に結実した三浦友和は、これまで以上の“全盛期”を迎えるはずだ。