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三浦友和、良き父からコワモテまでこなす“円熟味”

 初回視聴率が11.0%、その後も安定した数字で推移している『就活家族〜きっと、うまくいく〜』(テレビ朝日系)で17年ぶりに連続ドラマの主演を張った三浦友和。昨年公開の主演映画『葛城事件』と『64‐ロクヨン‐』では、『第8回TAMA映画賞』最優秀主演男優賞を受賞するなど、近年ますます渋さと重厚さを増す演技に若年層からも評価が集まっている。若かりし頃は、二枚目なアイドル俳優的ポジション、そして“山口百恵の夫”として誠実で実直なイメージが強かったが、65歳となった今、名実ともに硬軟こなす名優となった三浦友和の魅力に迫ってみたい。

“誠実で実直”、パブリックイメージからの脱却に苦戦した時期も

  • 良き父からコワモテまでこなす三浦友和(C)ORICON NewS inc.

    良き父からコワモテまでこなす三浦友和(C)ORICON NewS inc.

 『就職家族』の三浦は、有名企業の人事部長ながらリストラされてしまう一家の長という、数十年来の三浦の定番イメージでもある“父親”役を演じている。かつては1970年代を代表する二枚目俳優としてアイドル的な人気を誇り、“正義感”“誠実”“爽やか”というキャッチフレーズとともに、映画『伊豆の踊子』(1974年)やドラマ『赤い疑惑』(同/1975年)に始まる一連の「赤いシリーズ」で、“惹かれ合うけど実は兄妹”、“難病の百恵を見守る恋人”といったポジションで山口百恵との共演作が次々とヒットし、百恵と友和は“ゴールデンコンビ”と言われることになる。しかし1980年の山口百恵との結婚後、国民的超ビッグアイドルの妻だけに、どちらかと言えば“山口百恵の夫”との肩書が先行しがちであった。1987年の記録的大ヒット大河ドラマ『独眼竜政宗』(NHK総合)で主人公・渡辺謙の忠実な片腕役を好演し、役柄もあるが主役を支えるバイプレイヤー・三浦友和をお茶の間にも印象づけたが、二枚目で実直なパブリックイメージからなかなか脱し切れなかった感がある。

 それでも三浦は年齢を重ねながら良き父親や社会的地位の高い役をこなしてきたが、『松ヶ根乱射事件』(2006年)ではいいかげんでダメダメな父親、『転々』(2007年)では見た目も主役のオダギリジョーばりのすだれ髪に無精ヒゲという変貌を見せ、これまでのイメージを覆す怪演で両作品は『第81回キネマ旬報ベストテン』の助演男優賞を受賞。さらに2009年は『独眼竜政宗』と同じく『沈まぬ太陽』で渡辺謙と共演し、誠実で実直な渡辺と対極をなす傲慢で出世欲に目がくらんだ男を熱演、翌年からの北野武監督『アウトレイジ』シリーズ(2010年、2012年)では、非道なヤクザにも挑戦する。

 その“極悪キャラ”はドラマ『極悪がんぼ』(フジテレビ系/2014年)でも発揮され、髪を「道行く人に指をさされた」(2014年4月8日/ORICON NEWSより)という“おじさんド金髪”に染めるまでに至り、三浦は“ホームドラマのお父さん”から“渋いおじさま”、さらに“強面”までこなす、文字通り硬軟両面を併せ持つ“名優”となった。映画に比重を置き、主演ではなくバイプレイヤーとして着実にキャリアを積み重ねてきた結果が、実績としても日本アカデミー賞やブルーリボン賞等、数々の映画賞獲得へと繋がり、2012年秋には紫綬褒章も受章することになる。

ダメ親父から極悪までこなす怪演! 紆余曲折経て結実した俳優人生

 そして昨年、主演映画『葛城事件』では、家族を支配して、息子を自殺や無差別殺傷事件の犯人に追い込むという最悪な父親を演じ、観客をして「アウトレイジよりも怖い」と言わしめた。三浦自身も、「芸能人として大事なもののひとつ、”好感度”をなくしました」と初日舞台あいさつで冗談交じりに嘆き、さらに試写会の感想を「『邦画史上、類を見ない家庭崩壊映画の誕生』『二度と見たくない名作』『血の気がひくくらいのエグさ』『みないと一番後悔する映画』……」と自身で読み上げ、本人も満足気な様子を見せたが、実際に三浦は鬼気迫る演技でさらに新境地を切り開いたと言え、その怪演ぶりは観客に強烈なインパクトを残したのである。

 ただ、そうした“極悪三浦”のキャラも、「プライベートではよき夫・父」と誰もが知るイメージがあるからこそ引き立つのも事実。実際、明治安田生命が毎年発表する『理想の有名人夫婦ランキング』では、三浦夫妻は昨年で何と11年連続の1位。先の『第8回TAMA映画賞』受賞の際にも、「私がこうしていられるのも、妻のおかげが大きい」と感謝の言葉を捧げている。

 今回の『就活家族』第1話で三浦は、故・忌野清志郎さんと高校の同級生でもあり、自身ももともとはミュージシャンを目指していたというだけに、ドラムをたたくシーンでその腕前を披露して見せた。三浦は「『音楽の才能ないから別のことやったら?』と言われて、いまの事務所を紹介してもらって、俳優になった」と忌野さんの勧めもあって、「それから45年、いろんな作品に恵まれてきました」と先に授賞式でしみじみと語っていた。ドラマの役どころとしては、実直で尊敬すべき上司・父親がエリートから転落。妻・水希(黒木瞳)のホストクラブ通いや息子・光(工藤阿須加)の怪しげな就活塾通いなど、ひと筋縄でもいかない家庭と自身の問題に葛藤する様を描いている。ネットでも「エリートから転落する様が切ない」「ズキズキと胸が傷んだ」「感情移入し過ぎて胃が痛くなる」と役を通して、「三浦友和がさらに好きになった」と俳優としての年輪を経てさらに“円熟味”のある演技が光っている。本人も「とても幸せな仕事だと感謝しています! このドラマを撮影し、でき上がったものを見るたびにこの家族が愛おしく感じるようになっています」(2017年1月29日/ORICON NEWSより)と充実した仕事に喜びを感じているようだ。

 45年の俳優人生で若いころから主演を張り、一般層からのイメージが“足かせ”になりながらも、バイプレイヤーとして実績を積み重ね、さわやかな二枚目から最悪な父親、非道なヤクザまで、硬軟いずれもこなせる“名優”となったのも、さまざまな紆余曲折を乗り越えてきたからこそだろう。ここにきて年齢相応もしくはそれ以上の円熟味で演技力に結実した三浦友和は、これまで以上の“全盛期”を迎えるはずだ。

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