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“そっくり俳優”たちが続々とブレイクのきざし

 福士蒼汰に続く中川大志、広瀬すずに続く大友花恋、二階堂ふみに続く山本舞香など、ここのところネットを中心に、人気俳優とブレイク中の若手を「似ている」とする話題が目立っている。若手ではないが、前期のドラマでは大谷亮平も竹野内豊似と盛り上がっていた。個性が重要な俳優業において“そっくりさん扱い”されるというのは、俳優としての立ち位置を確立するのにデメリットのようにも思えるが、例えば中川大志は、自らお互いの口元を隠した福士蒼汰との2ショット写真を公開。中川を良く知らなかった層へのアピールにも繋がり、これまでの中川人気に拍車をかける結果ともなった。ほかの若手を見ても、最近はむしろ“そっくり”であることを“売り”にしているような傾向が見受けられるようだ。

ネットでは俳優、タレントの“そっくり”ネタが大賑わい

 人気ミステリ小説&アニメ『氷菓』(2017年)の実写化でヒロイン・千反田えるを演じることが発表され、妹・広瀬すずとともにブレイク中の広瀬アリスは、今月2日に放送された『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』(テレビ東京系)の番宣用にSNSを更新し、『釣りバカ〜』で共演した比嘉愛未との2ショット写真を掲載。広瀬は「比嘉愛未さん。大好き。似ているとよく言われます」とアピール。これが広く拡散され、「似ている!」「(広瀬すずさんと)3姉妹ですね」など愛のあふれるコメントが多く寄せられた。

 また現在、草なぎ剛主演『嘘の戦争』(フジテレビ系)に出演中で、モデル、女優として活躍中の山本美月は、2014年に発売されたファッション誌『CanCam』5月号の表紙で、妹分の堀田茜のそっくり2ショットを披露していた。堀田はその後、女優業もスタートし、『遺産争族』(2015年/テレビ朝日系)や『家政夫のミタゾノ』(2016年/同系)などに出演。2月19日にフジテレビTWOで放送される『感情8号線』の第6話では主演を果たす。
 そのほかにも、“完全一致”とまではいかないが、井浦新とディーン・フジオカ、長澤まさみと鈴木ちなみ、川口春奈と竹富聖花など、人気俳優と売り出し中の俳優を“そっくり”とするネタは、だれもが気になっていた軽い興味関心をくすぐるのか、発掘してそれが共感される喜びがカタルシスになっているのか、ネットに多く散見される。過去にも中谷美紀と柴咲コウ、竹野内豊と金城武などあったが、ネット社会となった今は、こうした話題の盛り上がり方がますます加速しているように見える。

そっくりネタで話題になったあと、いかに個性を打ち出すか

 人気イケメン俳優、美人女優に似ていると言われれば世間の注目を浴びやすく、本人的には不本意かもしれないが、新人などこれからの俳優にとっては、売れる取っ掛かりになることもある。これはSNSなどによるバズ効果が見込める現代ならではの現象だ。また、すでにブレイクを果たしている俳優同士でも、瀬戸康史と千葉雄大、篠田麻里子と優木まおみ、向井理と田中圭、吉田鋼太郎とリリー・フランキーなどが“似ている”と注目されているが、テレビやスクリーンに露出していないときでも、労せず顔と名前を覚えておいてもらうことができるので、ありがたい傾向とも言えるだろう。

 木村拓哉主演の『HERO』(フジテレビ系)第2シーズンでは、田村(杉本哲太)の妻が、その父親である牛丸次席(角野卓造)に似ているという設定を活かし、劇場版ではついに妻役として近藤春菜が登場。ネタが“実”となったことでドラマファンから拍手喝さいを浴びた。現状の人気に刺激を与えることにも繋がるので、芸能プロダクションやメディアが敢えて“そっくりネタ”を仕掛けることも少なくはない。若手の営業にこれを使う敷居も低くなっていることだろう。

 人気俳優にそっくりと言われる若手俳優たちにとってこの風潮は、売り出される手段の幅が広がるのでありがたいこと。だが難しいのはそれからだ。注目を集めやすいぶん、「似ている」と言われる俳優と比較されたり、同じイメージや芝居にならないよう気遣わなければいけないなど、制約やプレッシャーも多くなる。一時の注目で埋もれてしまわずに、そこから本人の資質をどう活かすか、またどう異なる個性を打ち出していくかが重要になる。

世間の興味本位の視線さえも利用して生き抜く強さや機転が必要

 前出の中川大志などは、始めこそ福士蒼汰と「イメージまで一緒」「キャラかぶり」とも言われていたが、きわどい下ネタ満載の『監獄学園-プリズンハイスクール-』(2010年/TBS系)で振り切った芝居を見せたり、昨年のNHK大河ドラマ『真田丸』で凛とした豊臣秀頼役を好演するなど、作品出演を積み重ねることで若手実力派としての存在感を存分に示している。今では福士蒼汰と重ねられることもほとんどないようだ。

 二階堂ふみに似ていると言われる山本舞香もドラマ『南くんの恋人〜my little lover』(2016年/フジテレビ系)や映画『桜ノ雨』のヒロイン、三井のリハウスCMなどでしっかりと独自のカラーを打ち出して爪あとを残している。このようにイメージが似ていたり、キャラがかぶっていたりということも、最終的にはあまり大きな問題ではない。

 実際、山崎努と故・緒形拳は雰囲気や演じる役柄が似ていて、かつては混同する視聴者も一部にはいたが、両者ともにその卓越した演技力で存在感自体が揺らぐことはなかった。中川大志をはじめ、最近の“そっくり俳優”を見ると、いつの間にかしっかりと“別の俳優”としての存在感を示すことが出来ている者が多い。

 そこに至るまでには人知れず苦悩を経ているのだろうが、それをバネにする強さと、何より個性の磨き方と光らせ方、見せ方を身に着けてこそ生き残れるのが芸能界。今の時代の俳優には、世間の興味本位の視線さえもうまく利用して生き抜く強さやしたたかさも必要となる。“そっくり俳優”として世に出ることは、自然と個性の活かし方を学んでいくことにつながっているのかもしれない。それをチャンスと捉える俳優も多いのではないだろうか。
(文:衣輪晋一)

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