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ローリング・ストーンズ、11年ぶりアルバム秘話明かす

 ブルース曲をカバーして、ロンドンのクラブで演奏していたザ・ローリング・ストーンズが、半世紀以上の時を経て、自らのルーツに敬意を表する11年ぶりのアルバム『ブルー&ロンサム』を制作。長年の友人であるエリック・クラプトンも同じスタジオでレコーディングしていた縁で、同アルバムに参加。ストーンズのメンバーと共同プロデューサーのドン・ウォズが、彼らのルーツを遡り原点回帰したアルバムとバンドについて語ったインタビューをWEB独占入手。

音楽をシンプルな方法で伝え続けて行く必要がある

  • (写真:Mikio Ariga)

    (写真:Mikio Ariga)

――この『ブルー&ロンサム』は、ストーンズの何を伝えているのですか?
ミック・ジャガー このアルバムは僕たちが音楽をプレイするきっかけを作ってくれた大好きな人たちへのオマージュなんだ。彼らの音楽があったから僕たちはバンドを始めた。僕たちはブルース音楽の運動家だった。結局、今でもそうなんだけれどね。
ロニー・ウッド ジェシー・ディランと話していたときに、俺たちは絶滅危惧種なのか、それとも今後も存続して行くことができるのかと彼に聞かれた。子供の頃からの情熱を思い出しながら、常にそのような心構えでツアーを続け、学び、音楽をシンプルな方法で伝え続けて行く必要があると思っている。絶滅しないことを望んでいるし、俺たちは新たな世代が俺たちの後を継ぐためのスタンダードを確立していると思っている。
キース・リチャーズ 『ブルー&ロンサム』には、俺たちが今までやりたかったことがすべて詰まっている。50年も経って、やっと今、ブルースのアルバムを作ることができた。でも忘れないでくれ、俺たちは1964年にハウリン・ウルフの「リトル・レッド・ルースター」のカバーでランキングの1位を獲得しているんだ。当時は、ブルース曲のカバーでそんなことを成し遂げたバンドはいなかった。俺は以前から“ちゃんと受け渡したぜ”ってことだけを伝えたかった。そしてそんな俺の願いは『ブルー&ロンサム』でやっと叶った。
ドン・ウォズ(プロデューサー) バンドとして何十年もの間共にプレイし、人生を共に過ごして経験を積んだ彼らが最初に始めたときの曲に再挑戦するというのは、歌詞にしても、22歳のときとはまったく異なった感情で曲へのアプローチができるし、彼らにとっては1周回って完璧な円が完成した感じだ。常に何かを得て何かを作り出すという性質は、このバンドの中に織り込まれているものだと思う。ローリング・ストーンズというのは独特なバンドだと思う。彼らは非常に即興性の高いバンドで、計画的に何かをやるということはない。同じ演奏を2回することもない。メンバー全員が、常に互いのプレイに耳を澄ませ、アイディアを出し合って、即座に呼応している。相当遠くまで引っぱりながら、それでも、うまくまとめていく技術には驚かされる。経験のなせる技だ。

――オリジナル曲でのアルバムを作るはずが、どうしてブルースのカヴァー曲というプロジェクトに変わったのですか?
ミック・ジャガー 実は新曲もかなりレコーディングしていたんだ。ある日、新曲をプレイすることに飽きてね。こういうことはよくあることなんだけど、そこでブルース曲をプレイし始めて、次から次へとブルース曲をプレイした。そこで、僕はこう言ったんだ。「よし、明日また来て、3、4曲ブルース曲をやろう」。そんな感じで、あっという間に決まった。
キース・リチャーズ 俺が計らずにも煽動したようなものなのさ。10月(2015年)にロニーに連絡して「このリトル・ウォルターの「ブルー&ロンサム」を聴いてみてくれ」と言っていたんだ。スタジオではよくウォーミング・アップを兼ねて知っている曲をプレイしたり、行き詰まったときに、ちょっと他の曲をプレイしたりする。ロンドンでこの新しいスタジオに入って、最初の何日かは新曲に取り組んだ。その後、ロニーに「そろそろ、あのブルース曲をやろうぜ」と言ってプレイし始めたら、それがとってもうまくいった。そしたら突然ミックが「じゃあ、ハウリン・ウルフをやろう」と言い出した。それも最高だった。その後はミックが止まらない状態になってさ。俺は、最高だ、と思って、じゃあこのままやろうや、となったわけだ。本当にたまたまそうなったんだよ。
ドン・ウォズ どんなセッションでも少し休憩したいときがあるものだ。そんなときに、キースがリトル・ウォルターのかっこいい「ブルー&ロンサム」をやろうと提案した。今、作業をしている曲に戻る前に、少しクリエイティヴ面で口直しをしようという感じだった。で、その演奏が素晴らしかったんだ。とても強烈でソウルフルだった。プレイバックしてみて、誰もがその結果に驚いていたと思う。その日の終わりには、既にブルース曲を6曲も録り終えていた。彼らは、昔パブでプレイしていた曲の名前を挙げながらどんどん演奏していって、その光景は見ていて最高に楽しかった。ほとんど仕事という感じでもなかった。しばらく前から沸々としていたものが音楽的な喜びと共に爆発した感じだったね。

ミック・ジャガーが、いつも以上にバンドの一員になりきっていた

――曲の選択はどのような感じで行なわれたのですか?
ミック・ジャガー 最初に演奏したのは「ブルー&ロンサム」だった。この曲はとても風変わりで感情的なブルースだ。心の琴線に触れるような曲で、大好きなんだ。皆、この曲を、思いを込めてとても力強くプレイした。明日、どの曲をやろうかな?と思い、家に帰って自分のコレクションを眺めた。ブルース・ファンにとってあまり有名ではない曲を選びたかったんだ。俺たちが繰り返し演奏していたのは、そういう曲だったから。だから、あまり知られていない曲の中から、できる限り、リズムや、感情、フィーリングや拍子などが違う曲を選んで、バラエティに富んだ組み合わせにした。
キース・リチャーズ 俺はミックの情熱に従っていた。彼には、好きなようにやってもらいたかった。ただ、途中でミックが飽きて、「ブルース曲をレコーディングするなんて、俺たち何やってんだ?」なんて言い出さないことだけを願っていたよ。夢中になっているミックの様子は見ていて楽しかった。ミックがここまで熱心にレコーディングに打ち込んでいるのを見たことはなかったよ。それに、彼はいつも以上にバンドの一員になりきっていたね。

――曲は学び直したのですか? それとも体が覚えていたとか?
キース・リチャーズ クラブ時代以来、一度もプレイしたことがなかった曲も何曲かあった。でも驚いたよ。実は、覚えているかどうか不安だったけれど、そんな心配は無用だった。指が覚えていたんだ。それに自由な感じが最高だった。
チャーリー・ワッツ ほとんど覚えていなかったけれど、(でも)思い出したよ。
ロニー・ウッド いくつかの曲は覚えた。「ライド・エム・オン・ダウン」などは知らなかった。聴き覚えのあった曲もあったし、知らない曲はキーと構成だけを教えてもらって、それでレコーディングした。この手の曲は演奏してみてうまくいくかどうかが重要だったし、特に計画もなかったしね。「リトル・レイン」は変わった選択だと思った。この曲は今では双子の娘たちへの子守唄になっているよ。子供たちは寝る前にこの曲を聴くのが好きなんだ。

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