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【連載番外編】SMAPベスト盤を読み解く PART.1「世界に一つ」を生んだデビュー曲
阪神淡路大震災のあと、日本全国を励ました「がんばりましょう」
林田健司作詞作曲の「$10」(39位)は、アーティストに楽曲提供を受けた初めてのシングル曲。ゴリゴリのダンスミュージックに乗せた“テンダラー”と“淫ら”で韻を踏むような遊び心のある歌詞、恋愛の駆け引きを歌う木村の色気(この年、木村がフジテレビ系ドラマ『あすなろ白書』でブレイクする)。どこか反抗的な、退廃的な曲を、まだ半数以上が10代のアイドルグループが歌うことは、当時としては衝撃的だった。『ナカイの窓』(日本テレビ系)に佐藤アツヒロが出演したとき、「“$10”を初めて聴いたとき、SMAPはカッコイイ歌歌えていいなぁと羨ましかった」と語っていた。SMAPがこれまでのアイドルとは違う、ということを印象付けた一曲だった。
デビューから4年、SMAPの音楽とメンバーの歌声の変化を知る
もう一つの聴きどころは、デビューから4年のうちに、6人が6人とも、歌声が大きく変わっていることだ。94年までのシングルのミックスは、森の声が比較的大きく聴こえることが多かったのが、木村の声に男っぽさが増してきていたり、香取の低音が艶めいてきたり、中居の声がセンチメンタルな色合いを見せたり、稲垣が香取とは対照的な軽やかさでユニゾンに彩りを与えたり、草なぎの少し鼻にかかった声が全体のポップさに拍車をかけたり。一人一人の声の変化を感じられるのも、アイドルグループ草創期の楽しみの一つだ。
今回収録される全50曲のうち、ここまでの10曲が“森のいた時代”。SMAPで一番アイドルらしい声をした森の抜けた“喪失感”を埋めるべく、5人の歌は、ココカラまた劇的な成長を遂げるのだった。
(文/菊地陽子)
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