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【連載番外編】SMAPベスト盤を読み解く PART.1「世界に一つ」を生んだデビュー曲

阪神淡路大震災のあと、日本全国を励ました「がんばりましょう」

 テレビ番組で歌われたことで、楽曲の持つ意味合いが変化したのは、「がんばりましょう」も同様である。阪神淡路大震災直後の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、この曲を歌い踊ったSMAPに、励まされた人も多いのではないだろうか。シャカリキに、暑苦しく、正論を振りかざすのではなく、眠気だらけの顔をしながら、“どんなときもくじけずに”と語りかける。そのスタンスが、アイドルというよりも、ストリートから自然発生した楽団のようでも舞踊団のようでも劇団のようでもあり。バラバラの、自然体の、でもひたむきな感じが、新しい時代のカッコ良さを印象づけた。

 林田健司作詞作曲の「$10」(39位)は、アーティストに楽曲提供を受けた初めてのシングル曲。ゴリゴリのダンスミュージックに乗せた“テンダラー”と“淫ら”で韻を踏むような遊び心のある歌詞、恋愛の駆け引きを歌う木村の色気(この年、木村がフジテレビ系ドラマ『あすなろ白書』でブレイクする)。どこか反抗的な、退廃的な曲を、まだ半数以上が10代のアイドルグループが歌うことは、当時としては衝撃的だった。『ナカイの窓』(日本テレビ系)に佐藤アツヒロが出演したとき、「“$10”を初めて聴いたとき、SMAPはカッコイイ歌歌えていいなぁと羨ましかった」と語っていた。SMAPがこれまでのアイドルとは違う、ということを印象付けた一曲だった。

デビューから4年、SMAPの音楽とメンバーの歌声の変化を知る

 「俺たちに明日はある」(48位)は、木村がダウンタウンの浜田雅功とW主演したドラマ『人生は上々だ』の主題歌である。木村主演のドラマで、SMAPが主題歌を担当した初めての曲で、それまでにないロックな曲調やスタンドマイクを使ったパフォーマンスが新鮮だった。当時から、木村はアメリカンなロックな雰囲気を漂わせていて、なんとなく、SMAPというよりも木村拓哉その人に書き下ろした曲っぽくもある。とはいえ結果的に、アイドル曲から始まって、ヒップホップやラップ、ファンクやソウルのようなブラックミュージックに寄りがちだったSMAPの音楽性が、この曲で一気にまた新しい局面を見せていく。

 もう一つの聴きどころは、デビューから4年のうちに、6人が6人とも、歌声が大きく変わっていることだ。94年までのシングルのミックスは、森の声が比較的大きく聴こえることが多かったのが、木村の声に男っぽさが増してきていたり、香取の低音が艶めいてきたり、中居の声がセンチメンタルな色合いを見せたり、稲垣が香取とは対照的な軽やかさでユニゾンに彩りを与えたり、草なぎの少し鼻にかかった声が全体のポップさに拍車をかけたり。一人一人の声の変化を感じられるのも、アイドルグループ草創期の楽しみの一つだ。

 今回収録される全50曲のうち、ここまでの10曲が“森のいた時代”。SMAPで一番アイドルらしい声をした森の抜けた“喪失感”を埋めるべく、5人の歌は、ココカラまた劇的な成長を遂げるのだった。
(文/菊地陽子)
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