• ホーム
  • 音楽
  • 【Mr.Childrenライブレポート】久々のホールツアー武道館公演、朝ドラのあの曲に込めた想い

【Mr.Childrenライブレポート】久々のホールツアー武道館公演、朝ドラのあの曲に込めた想い

 11月21日にファイナルを迎えたMr.Childrenの『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』。ドームやアリーナ、スタジアムを主戦場にする彼らにとって、ホールツアーは久々。「ホールならではの音」を求めて、数々の名曲からNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の主題歌「ヒカリノアトリエ」(1月11日発売)も披露された、10月7日、東京・日本武道館公演の模様をレポートする。

どうして彼らの曲には、つい聴き入ってしまうんだろう?

 幽かな光の中、すこし厳かな雰囲気に包まれて、彼らの音楽は始まった。1曲目は、「お伽話」。アコーディオンの音色が、“お伽話”に出てくる移動楽団のような雰囲気を醸し出しているせいだろうか。新曲なのに、どこか懐かしさが漂う。その一方で、耳に飛び込んでくる歌詞は、音色の長閑さとは対照的にとても生々しくて、心を包み込む薄い皮膜をヒリヒリさせた。歌の主人公を演じるように、身ぶり手振りを交えて桜井和寿は言葉に心を乗せていく。

 どうして彼らの曲には、つい聴き入ってしまうんだろう? どうして、彼らはライブの1曲目にこの曲を選んだんだろう? 音楽に心を掴まれながら、いくつか頭に浮かんだ疑問符は、2時間半のライブの最中に、徐々に氷解していった。驚きやざわめきに始まり、覚醒し、高揚し、発見し、その先で迷いを脱し、希望を掴む。まるで一本の映画を観るような、ドラマティックなライブだった。

“飛び級”してきたミスチル、来年の25周年を前に

 4月から始まったMr.Childrenのホールツアーが、11月21日の鎌倉芸術館でファイナルを迎えた。10月7日の日本武道館公演では、桜井自身が、「会場の入り口に、『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』って書いてあるのを見て、“ここホール?”って思った。ホールにしちゃでかいんだよね」とMCで言及していたけれど、来年25周年を迎えるにあたり、やってないことを考えたら、ホールツアーが浮かんだという。アリーナ、ドーム、スタジアムと、“飛び級”で次々に大きなステージを踏んできた。「でも今回は、ホールならではの選曲で、音で触れ合いたい。音で鼓膜をくすぐって、心を揺さぶって、捕まえて、引っ掻き回す。そんなライブにしたい」と、3曲目の「Melody」を歌い終わった後のMCで、桜井は語った。
 シンプルな舞台装置、金管楽器とアコーディオンを加えただけのシンプルなバンド編成。でも、だからこそ“音”そのものと、桜井の紡ぐ“言葉”とすぐ近くで対話したり、シンクロしたり。ミスチルの音楽の原風景に一緒に立ったような、嬉しい錯覚に浸ることができた。「クラスメイト」「PIANO MAN」で、桜井は歌いながら、身体の動きをリズムにシンクロさせていた。ステップを踏んでいたので、それは“踊る”という行為に当たるのかもしれないけれど、でも、視覚的に音を鳴らしているようにも見える。たとえるなら、桜井自身が“見るパーカッション”みたいだ。身体全体で、躍動していて、疾走していて、アップテンポの曲では、“ロック”の激しさがほとばしる。かと思うと突然、空気の当たりが優しく緩やかになり、「しるし」で、武道館の中の丸い空間を、恋情で埋め尽くす。1曲1曲のドラマ性もすごいが、このホールツアーならではのアレンジで響く「しるし」が、まさに心を揺さぶり、捕まえ、引っ掻き回すのだ。この距離で、このアレンジで聴く、一回性の「しるし」が、まさに骨身にしみていく。一度しか聴けないからこそ、忘れられない体験となる。

 中盤、日替わりで桜井の弾き語りコーナーがあった。この日はギター1本で「Over」を披露。23歳のときに作った曲で、当時の仮タイトルは「ツービートでKAN」だった。同時に、ギルバート・オサリバンの「Alone Again(Naturally)」のように、明るい曲に別れの歌詞を乗せたいとも考えていた。「人の心を掴みたくて掴みたくて、“Alone Again”の人懐っこいメロディに乗せた歌詞の痛々しさを参考にしてできた曲」と説明しながら、“Alone Again”のメロディを口笛で吹いてから、「Over」を歌い始めた。粋な演出だった。

“心のまま僕は行くのさ”と歌う心の純度は変わっていない

 「掌」では、くるくる回ったり、ジャンプしたりして、人間パーカッションとして暴れまくり、「ランニングハイ」では走りまくった。ライブでの桜井は、熱くて激しくて湿っぽい。息づかいまで聴こえてきそうな距離で、叫んで、吠えて、唸って、熱唱して、囁く。「PADDLE」では、熱くなった観客と手拍子で息を合わせ、「終末のコンフィデンスソング」「血の管」「旅立ちの唄」のような、メッセージ性の強い曲では、音の楽しさを身体に感じさせつつ、言葉で心に余韻を残していく。

 武道館の夜に捧げられたのは、「東京」と「足音 〜Be Strong」。本編最後の曲は、「虹の彼方へ」と、終わりが近づくに連れて、音と言葉の色彩感が一気に鮮やかになった。アンコールの1曲目「名もなき詩」では、全員がサビを大合唱。「Tomorrow never knows」を歌うときの桜井は、今まさに湧き上がる心の声を歌にしているようで、22年前の曲なのに、“心のまま僕は行くのさ”と歌う心の純度が、昔も今もなんら変わっていないことが伝わってくる。

熊本地震の影響を受けた人々へのメッセージが、そのまま歌に

 NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の主題歌「ヒカリノアトリエ」を披露する前には、曲が生まれる経緯を説明してもくれた。曰く「もともと曲はあったんです。ホールツアーに入る前、デモ曲をルルルー、ラララと歌っていたら、何となく、“虹”って言葉が入って。ツアータイトルは、“虹”がいいと思ったんだ。ツアーが始まってすぐに、熊本で地震があって、九州での公演に来られなくなった人もいたけれど、その人たちにメッセージを送らせてもらったの。やまない雨はないし、雨がやんだら、空には虹が出るかもしれない。でも、出ないかもしれない。だけど、その虹が出たとき、見逃さないために、できるだけ前を、上を向いて、歩いていってください、と。その言葉がそのまんま歌になったような曲です」。そんな説明を聞いてから聴く「ヒカリノアトリエ」は、彼らの今の純粋さを、確かに象徴しているように感じられた。

 大勢の人が一つの場所に集まって、音楽によって温かい感情をシェアできることは、幸福である。でも、ミスチルの音楽は、それを聴いてただ楽しかったり、興奮したり、歓喜したりするだけじゃない。むしろ、痛みや、痺れや、疼きを感じることもあって、ライブは壮大な、“切なさ”の共有であるような気さえする。いくつになっても、生きることと傷つくことは切り離せない。ちゃんと生きて、ちゃんともがいて、ちゃんと傷ついて、前に進もうとするMr.Childrenの歌は、聴き手にとって、明日への希望を繋いでくれる“ヒカリノアトリエ”なのだろう。
(写真/薮田修身(W) 文/菊地陽子)

『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』10月7日(金)東京・日本武道館

SET LIST
1. お伽話
2. 水上バス
3. Melody
4. You make me happy
5. クラスメイト
6. PIANO MAN
7. しるし
8. Over(桜井弾き語り)
9. もっと
10. 掌
11. ランニングハイ
12. PADDLE
13. 終末のコンフィデンスソング
14. 血の管
15. こころ
16. 旅立ちの唄
17. 東京
18. 足音 〜Be Strong
19. 通り雨
20. 虹の彼方へ
EN1. 名もなき詩
EN2. Tomorrow never knows
EN3. ヒカリノアトリエ
EN4. 僕らの音

オリコンニュース公式SNS

Facebook、Twitterからもオリコンニュースの最新情報を受け取ることができます!