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【連載13】騒動が引き金に、あらためて気づく自分の中の“隠れSMAP”

これまでSMAPが見せてきた、アイドルとしての誠意と優しさ

 SMAPのコラムを書きながら、たびたび、中学のときに読んだ本の一節を思い出す。そこには、“人生とは、人の優しさと出会う旅である”と書いてあった。14歳のときは、大人から優しくされることは当たり前だと思っていたし、“人に親切にする”ということの意味ぐらいは理解できても、“優しさとは何か”ということまで、思いを巡らせたりはしなかった。でも、大人になってみてつくづくわかった。人生で、人の優しさに出会えることは、そんなに多くはない。“働く人々”は案外忙しく、余裕がない。都会では、“人にやさしく”することが、お節介やありがた迷惑だととられることもあるし、逆にあらぬ誤解を生んで、関係がこじれることもある。

 でも、そんな世知辛い世の中で、SMAPというアイドルからは、チームの関係性だったり、後輩とのやり取りだったり、アイドル以外の大人の人たちとの関わりの中で、人の優しさや思いやりを感じさせてくれることが何度となくあった。ただ美しいとかカッコイイとか上手いとか若いとか、そういう記号的なわかりやすい魅力ではなく、もっと人間臭い、もがき足掻いている感じがあった。そんな彼らが<どんな時も くじけずにがんばりましょう>と歌い、右も左もわからないバラエティ番組にたった1人で放り出されたりしながらも、6人が集まると、ピッカピカのオリジナルスマイルを見せてくれたりすることに、彼らの全力の、アイドルとしての誠意と優しさを見た気がした。

 とりわけ、96年5月の、森且行がSMAPを脱退することになった最後の6人での『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)。そのとき6人で歌った「BEST FRIEND」は、それぞれの仲間に対する優しさに溢れていて、どんなドキュメンタリー映画を観たときよりも、どんな壮大な物語を読んだときよりも“人間っていいな”“仲間っていいな”“SMAPっていいな”と思えた。ライブに足を運べば、直接、そんな彼らの人間力を目の当たりにすることができた。ライブでの彼らは、いつも全力で、自由で、献身的で。芸事に対して謙虚な分、とても一つ一つのパフォーマンスがとても誠実に感じられた。SMAPの歌に“心”があるというのは、技術が足りないと自覚している部分を、誠意や情熱で補おうとしているからかもしれない。仕事柄、海外の大物アーティストのコンサートから新人アーティストのライブまで、幅広く足を運んでいるつもりだが、もちろん高揚したり、感心したり、興奮したり、感動したりはしても、SMAPのコンサートのように、優しさと出会えたような温かい気持ちになることは、まずない。

せめてできることを……、そんなファンの活動を誰が責められるのか

 東京新聞の掲示板に思いを綴ったメッセージを投稿したり、「世界に一つだけの花」のトリプルミリオンを達成しようと呼びかけたり、解散阻止の署名活動をしたり、自分たちにできる形で、SMAPのストーリーを終わらせないための活動に勤しむファンがいて、それに対し、「決まったことなのだから、放っておいてあげたら」とコメントするタレントや著名人がいる。もちろんファンは、SMAPを困らせたいわけじゃない。ただ、ずっとそうやって誠実に、献身的に優しさをくれた彼らに、せめて自分たちなりの愛を届けられたら、と思っているだけだ。“ずっとずっと好きでいる”とか“ずっとずっと信じてる”という思いは、言葉にしなきゃ届かない。ファンの思いなんて、いくら言葉にしたって、スターである彼らに届くはずはない。ならばせめて、できることをしたい。言葉じゃなく行為で、思いを届けたい。そんな優しい気持ちを、誰が責めることができるだろうか。

 人生は、人の優しさと出会う旅。SMAPのファンになってから、彼らからもらった優しさは計り知れない。そしてさらに、私はこの一連の騒動を通じて、SMAPファンの優しさにも、たくさんたくさん出会うことができたと思っている。
(文/菊地陽子)
【連載14に続く】

【連載 1】SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?
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【連載3】SMAPきょう25周年 記者が見た5人の真実 PART1
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