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新垣隆、クラシック名門レーベルから発売 「騒動以降も音楽に向き合う姿勢は変わらない」

ゴーストライター騒動以降も音楽に向き合う姿勢は変わらない

――「HIROSHIMA」から約13年ぶりの交響曲で、ゴーストライター騒動以降の楽曲になるわけですが、音楽に対する向き合い方は変化しましたか?
新垣隆 音楽に向き合う姿勢は変わりません、音楽は音楽で、それ以上でも以下でもない。そういう意味では、自分自身何も変わってはいないのですが、自分の置かれている状況や自分を取り巻くものが大きく変化しました。また人との関わりという部分で、変化と言うか大きな広がりを持つようになりました。そういう意味では、音楽だけでなく人との真摯な向き合いということも心がけるようになりましたね。だからと言って、それで急に良い曲が書けるようになるわけではないので……(苦笑)。常にベストを目指す気持ちも以前と変わりません。

――作曲家として大切にしていることは何ですか?
新垣隆 常に音に対して貪欲であること。どんな音楽に対しても耳を傾け、演奏家が日々練習を怠らないように、私もひとりの作曲家として、その技術がサビないように日々鍛錬しています。いろんなことに興味を持って影響を受けることもそう。音楽に限らず、映画や本、人と話をすることからもインスピレーションを受けます。

――クラシックは、一般的に敷居が高い音楽と言われることもありますね。新垣さんはそんなクラシックもやりつつ、ポップスの楽曲も手掛けられていて、両者の橋渡しのような存在でもある。クラシックを一般に広めるために、何かやっていることは?
新垣隆 いろいろな音楽ジャンルがあって、それぞれの良さは文化的な背景の違いでもあって。だからこそ音楽は多様なわけですが、クラシックもそのひとつです。クラシックは敷居が高いとよく言われますが、クラシックもポップスやジャズと同じく面白いものなんですね。とにかくクラシックも面白いんだよと、知ってもらうことが第一だと思っていて。こういうインタビューを受けることも、その一貫だと思って活動しています。

――普段ポップスを聴いている人に、クラシックの魅力を伝えるとしたら?
新垣隆 曲が長いので、それを聴き続けるのは確かに大変なことだと思います。その点では、どうしても聴き手の心構えに頼るところがあるわけですけど、2時間かけて映画やドラマを見たり、何日もかけて小説を読んだりする気持ちで、何かストーリーを自分の中で想像しながら聴いていただくと、少しでも聴きやすくなるのではないかと思います。

名門サントリーホールでのコンサートは、“まさか!”の出来事

――映画という部分では、映画『君の名は。』のサウンドトラックをRADWIMPSが手掛けて話題になっています。クラシックもサウンドトラックと同じインストゥルメンタル音楽のひとつだと思いますが、そういう部分で何か感じることは?
新垣隆 インストゥルメンタル音楽の肌触りは自分もすごく好きで、私自身劇伴なども手掛けたりとか、ずっと付き合ってきました。電気や歌を通した触感や肌触りとは違った良さがありますよね。

――インストは歌詞がないのですが、それは表現という上では自由度がより高いと言えるのでしょうか?
新垣隆 それぞれの豊かさがあるので、一概にインストのほうが自由度が高いとは言えないと思います。歌詞がある場合は、まず言葉のメッセージがあり、それを音が包み込むようなものになります。インストは、音そのものによって、言葉にならないような感情を想起させることができます。

――クラシックは、その曲を書いた作曲家のバックボーンや曲を書いた時期なども、その曲を解釈するキーになっていると聞きます。そういう意味では、新垣さんに起きた様々な出来事、今回のインタビューでお話いただいたことと併せて聴くと、いろいろな情景が浮かぶかもしれませんね。
新垣隆 そうですね。私の日常や私の体験なども、音のどこかに隠されています。私がどういう気持ちで作ったかなど、想像して聴いていただけたらうれしいです。

――最後に、来年1月23日にサントリーホールでコンサートを行うとのことで、どんなお気持ちでしょうか。
新垣隆 サントリーホールもDecca同様、クラシックを志す者にとっては憧れの会場です。これも、私自身“まさか!”の出来事ですが、日本クラシックの最高峰と言える場所で演奏できるのは、本当に光栄です。これも支援してくださったみなさんのおかげです。緊張感もありますが、感謝の気持ちを込めて、良いコンサートにしたいと思っています。

(文:榑林史章)
新垣隆 オフィシャルサイト(外部サイト)

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