• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
(更新: ORICON NEWS

【連載7】SMAP 5人の役割を考察:木村拓哉 バッシングされるスーパースター、逃げない男の真実

木村拓哉ほどバッシングや誹謗や中傷に晒されてきたアイドルはいない

 SMAPの解散騒動以来、その原因を“内部分裂”ということで片付けようとする人たちによって、「木村がスタッフに“だったら4人をクビにして”と言った」「“スマスマ”収録の雰囲気は最悪」などと、悪意を感じさせる報道が続いている。木村が、とても尊大で不遜な人物のように書かれた記事を目にしたこともある。先にも述べたとおり、長く活躍するタレントの中で、彼ほどバッシングや誹謗や中傷に晒されてきたアイドルはいない。同時に、彼ほど誤解されやすいアイドルもいないと思う。

 SMAPの中でも、中居正広、草なぎ剛、香取慎吾は、“バラエティ班”として、長年にわたってトークを鍛えられた。稲垣吾郎は、カルチャー担当ポジションで、映画や書籍に対するコメント力を鍛えてきた。5人をインタビューして思うのだが、SMAPで一番口下手なのは、木村のような気がする。語りの哲学がしっかりしている中居、対話を楽しむ稲垣、天然な草なぎ、緻密なアーティストの香取がいて、木村はやはりSMAPの俳優部なのだろう。イマジネーションは豊かだが、意外と、自分語りが得意ではない印象がある。

アイドルは“いいヤツ”であるべきか? だが「悪い人間じゃない」

 ところで、アイドルは、“いいヤツ”であるべきなのだろうか。解散発表があって以降、追われるように観てしまっているSMAP関連のDVDの中で、三谷幸喜が書き下ろし、1999年に放送され30%以上の視聴率をあげたドラマ『古畑任三郎VS SMAP』(フジテレビ系)の中に、興味深いセリフがあった。ドラマのストーリーは、同じ施設で育った5人が集まり結成されたアイドルグループSMAPが犯した完全犯罪を、古畑(田村正和)が推理し、5人の犯行であると暴いていく内容。最後に古畑は、「彼らは悪い人間じゃないよ。でなきゃ、あんなに大勢の人を夢中にさせることはできない」と相棒の今泉(西村雅彦)に語りかける。今泉はSMAPファンで、古畑がSMAPに殺人の疑いをかけていると知ると、「あいつらが人を殺すはずがない! あいつらいいヤツだもん!」と言ってべそをかいた。その、今泉の思いに対する、古畑なりの返答だった。

 「このスキャンダルが明るみになったらSMAPは終わる」と宇梶剛士演じる冨樫に脅されたとき、中居演じる中居は、「SMAPは終わらせない」と呟いた。今回の解散騒動で木村が発したとされる言葉に、「だったら4人をクビにして」というのがあったが、そのセリフは、このドラマからの引用のようにも思える。ドラマの中で、殺人は、SMAPのコンサートの直前という慌ただしい時間の中で行われるのだが、それぞれのアリバイ作りのために、まずは木村と香取が喧嘩を始める。2人で散々言い合った後に、マネージャーから、「拓哉、あんたどうしたいの?」と聞かれ、木村役を演じる木村は、「慎吾外して」と一言。すべては殺人計画のための芝居なのに、木村には、どうしても“俺様”で“ワガママ”なイメージがつきまとう。でも、ファンはちゃんとわかっている。長年SMAPを続ける中で、メンバーは常に、自分の果たすべき役割を全うしているのだと。

自分1人で罪を被ろうとした中居、最後まで絶対に逃げない木村

 古畑がSMAPのことを、“友情で結ばれた5人”と評したとき、木村だけが、古畑を挑発した。自分たちの完璧な計画を、切り崩せるものなら切り崩してみろ、と。結局、木村自身が墓穴を掘って犯行を認めることになるのだけれど、ずっと突っ張って弱みを見せずに来た木村が、その時初めて、メンバーの前で「ごめん、俺のせいだ」と謝る。もちろん、このドラマの中の木村は本当の木村拓哉ではない。でも、自分1人で罪を被ろうとした(中居演じる)中居がいる一方で、あくまで、それがたとえやせ我慢でも、自分の決めたことを信じて、最後まで絶対に逃げない(木村演じる)木村。2人揃ってこそ、SMAPはここまで大きく、強くなれたのだと、私たちは、ドラマの中に現実の2人の姿を重ねずにはいられない。

 ライブのステージで、生の木村拓哉を観たことのある人ならわかる。あんなに生き生きと輝いている人が、あんなに、情感を込めて歌を歌える人が、悪い人間のはずがない。いい人の定義なんてわからないけれど、ああまで人を魅了できる人が、SMAPへの、メンバーへの愛に溢れていないわけがない。
(文/菊地陽子)

【連載8】に続く

【連載1】SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?
【連載2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」
【連載3】SMAPきょう25周年 記者が見た5人の真実 PART1
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART2 〜中居正広と木村拓哉の素顔〜
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART3 〜稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の素顔〜
【連載4】逆境に強いSMAP ライブで見せた成長と結束の物語
【連載5】SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日
【連載6】SMAP 5人の役割を考察:中居正広 自分たちのことでタブーは作らない、“自虐”という神センス

あなたにおすすめの記事

 を検索