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フジテレビの希望? 作り手の“意図”が明確に見える『人生のパイセンTV』

 フジテレビで放送中のバラエティ番組『人生のパイセンTV』(毎週日曜 24時30分〜)は、昨年10月よりレギュラー化され、強烈なインパクトを持つ素人をいじり倒す番組として人気を得ている。バカバカしいテーマのもと、素人をプロ以上に面白く見せようする作り手の意図が明確に伝わってくる番組であり、低迷するフジテレビの“希望”として注目されている。

過剰な素人いじりは今のテレビ界では抜きん出る

  • 『人生のパイセンTV』でMCを務めるオードリー(左から)若林正恭、春日俊彰 (C)ORICON NewS inc.

    『人生のパイセンTV』でMCを務めるオードリー(左から)若林正恭、春日俊彰 (C)ORICON NewS inc.

 『人生のパイセンTV』は、「人からバカにされようが己の生き方を貫き通している人生の先輩=パイセンから人生を楽しむコツを学ぼう」をテーマに、オードリー・若林正恭と春日俊彰(番組内のクレジットは“春日きんにくん”)がMCを務めるバラエティ番組(当初からのMC・ベッキーは休業中)。これまでも、バカだと思われても自分を貫く人たちやポリシーを持った愛すべきおバカな大人たちから、人生を楽しむコツを学ぶべく様々な素人が注目されてきた。

 年商10億円以上というアパレル会社の“短パン社長”は、ジャケットとともに超短すぎる短パンを一年中履き続け、“EXILE・ATSUSHIマジリスペクトパイセン”のRYOは、見た目はもちろん生き様までATSUSHIに染まりきり、「偽物ATSUSHI、11人による大運動会」なんておふざけ企画に参加する。その他、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)になりきった“ジャック・スパロウパイセン”やら、氣志團風の“ぶっこみバンド”ブレインコミックスにいたっては、「前向きすぎる歌が意外といい」としてファンが増えたという。さらには番組ナビゲーターの磯田誉博も、“EXILEに憧れるチャラすぎる市議会議員”として同番組に登場するも、批判を浴びて即辞職した(埼玉県三郷市の市議会議員を3期務めタレント転向)という過去さえ持っているのだ。

 「『パイセンTV』の主役は、もちろんこういった強烈な素人さんたちですが、影の主人公は演出を担当するディレクターの“マイアミ・ケータ”こと萩原啓太さんでしょう。まだ29歳というフジテレビ最年少の演出家、かつ日サロで焼いたクロ肌でボディビルにも挑戦するという、わかりやすいというか、“フジテレビっぽい出たがりディレクター”なんですが(笑)、過剰な素人いじりは今のテレビ界では抜きん出ているし、あのデコデコのテロップ、乱雑でありながら的確なテロップのツッコミには目を見張るものがありますね」(バラエティ番組制作会社スタッフ)

“ユルい”番組が多い現在、チャラいフジテレビを逆手に

 番組タイトルの“パイセン”(先輩)もそうだが、テレビ業界特有の“逆さ言葉”がテロップにもしばしば登場。萩原氏もさすがあの全盛期のフジテレビの落とし子だとの感を強くするが、そもそも『オレたちひょうきん族』に代表されるフジ全盛期のバラエティ番組は、明石家さんまやタモリ、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンなど、“大物芸人まかせのバラエティ”が得意だったはずで、いわゆる“スタッフ内輪笑い”などの業界ノリも、とんねるずがネタにしたからこそ一般にも知られたのである。そこに日本テレビの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』や『進め!電波少年』などの“素人いじり”と“暴走ノリ”が台頭してくるわけで、その流れは現在、ひな壇で括る『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、企画ありきで素人もいじる『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、ロケの集大成『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)などに受け継がれている。

 そうした意味では、素人を過激にいじる『パイセンTV』は本来フジテレビのお家芸とは言えないが、それだけ制作側の熱意や“明確な意図”が見て取れるのだ。実際、萩原氏は「愛のある密着VTRを作りたい」として、それぞれに濃厚なキャラを放つパイセンたちに長期間密着し、“バカっぽい”演出をほどこしながらも、実は彼らを真摯にリスペクトし、最大限に面白さを引き出そうとしている。そのあたりが視聴者にも不快感を与えず好感を持たれる理由であるし、この番組の“意図”でもある。

 リアルタイムでは見てないとしながらも、萩原氏はリスペクトするというテリー伊藤が演出した『元気が出るテレビ』の素人をタレント化する手法を踏襲し、さらにBPOの規制に挑戦するかのように、かつての『電波少年』のような“ムチャ”がどれだけできるかを追求していく。テレビ東京的な、ある意味で“ユルい”番組が多い現在、二番煎じや柳の下のどじょうを狙わず、『パイセンTV』はオンリーワンのオリジナリティや新しさを獲得しようと努力しているのである。さらに萩原氏は、自身もマイアミ・ケータとして番組に出演し、チャラ男のキャラクターを演じながら、演出サイドの意図や思いをわかりやすく伝えようとする。“バカバカしいもの”を真剣に制作するスタッフのそんな姿勢に出演者たちも信頼をおき、実際オードリーのふたりなどは、他の番組では見ることのないのびのびとした姿を披露しているのだ。

 今では視聴者にもおなじみになったカンペや、台本すらないというこの番組は、出演する芸能人やスタッフを含め、関係者全員が“自由に企画して、番組を絶対に面白くしてやろう!”という意気込みに溢れている。かつては「面白くなければテレビじゃない!」と豪語していたはずが、今では低迷を余儀なくされているフジテレビ。ここにきてようやく明確な意図を持ったスタッフによって、過激で面白いバラエティ番組が作られたようである。“フジ反撃の狼煙”は『人生のパイセンTV』から上がるのかもしれない。

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