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(更新: ORICON NEWS

『シン・ゴジラ』、フルCGへの期待と不安

この夏の一番の話題作である、本家・東宝が12年ぶりに制作する『シン・ゴジラ』(7月29日公開)。その劇場公開日まであと3週間ほどに迫るなか、90秒の予告映像は解禁されているものの、フルCGで制作されているゴジラの仕上がりやストーリーのメッセージ性など作品の全容への情報が少なく、ゴジラファンを中心に渇望感が高まっている。

『エヴァ』を踏襲する、庵野総監督流の戦略的な作品情報出し?

 現時点で作品情報が少なく思われるのは、配給宣伝の戦略的な意向によるものだろうか。作品の完成自体が遅れているのかもしれないが、いまだメディアを通して伝えられている情報量が多くなく感がられるのだ。そこからは、意図的に外に出す情報を抑え、作品の全容をあえてつかませないようにしていることも考えられる。庵野総監督といえば、コアなファンを多く持つ大人気シリーズの新劇場版『エヴァンゲリオン』公開時においても、事前の試写を行わないなど徹底した情報管理を戦略的に行っていた。今回もそんな庵野総監督の意向が働いていることも予想できる。
 『シン・ゴジラ』は、これまでに公開されている90秒の予告映像では、ゴジラ史上初となるフルCGの全身ビジュアルが映し出され、その圧倒的な迫力は往年のゴジラファンからも好評だった。しかし、庵野総監督と樋口特技監督のタッグによる、着ぐるみゴジラが使われるような特撮への期待も高かっただけに、フルCGというファンにとっては予想外の完成版に対して、複雑な思いもあるようだ。また、一方で“水爆実験の影響で生まれた怪獣”であるゴジラが現代社会に投げかける作品テーマやストーリーの詳細が明らかになっていないことには、期待と不安の両方の声が混在している。

 今作のフルCGゴジラのビジュアルはというと、ハリウッド版を含めて史上最大となる全長118.5メートルで、巨大な尻尾が特徴的。1954年に公開された初代ゴジラを彷彿とさせる、腕が小さく、直立した姿勢でありながら、不規則に並んだ歯や、内側から赤い発光を感じる表皮など、随所に庵野総監督こだわりの本作オリジナル設定が見受けられる。予告映像では、“現代日本に初めて現れたゴジラ”という設定のなか、街を動きまわるその巨大な容姿への地上からの視点も含まれ、建物のすぐ上を通り過ぎる尻尾の臨場感と迫力に圧倒される。

アナログ特撮のキャリアと愛が詰め込まれたフルCGゴジラ

 往年のゴジラファンをはじめ、多くの映画ファンの間での大きな注目ポイントになっているのが、特撮への強いこだわりを持つ樋口監督が特技監督として参加しながら、フルCGによってゴジラが描かれること。樋口監督といえば、日本の特撮における第一人者であり、日本を代表するビジュアルクリエイターとして海外からも高い評価を受ける実力者。

 特殊造形助手として『ゴジラ』(1984年)の現場に参加したキャリアを持ち、平成『ガメラ』3部作(金子修介監督)では特技監督を務め、視覚効果デザインなどを含めた特撮技術が脚光を浴びた。樋口監督の特撮へのこだわりと愛はファンの間でもよく知られており、同3部作の映像は特技監督であった樋口監督の特撮技術が存分に発揮され、作品としての評価への貢献度の大きさは語り継がれているほど。

 そんな樋口監督と盟友である庵野総監督も、学生時代から『ウルトラマン』に傾倒し、昭和『ゴジラ』シリーズを手がけてきた本多猪四郎氏や円谷英二氏を敬愛する特撮に魅了されたクリエイターとして知られる。『シン・ゴジラ』制作発表時の「日本を代表する空想特撮作品を背負って作る」という力強いコメントも記憶に新しい。

 庵野総監督は、自身が脚本を手がけた短編映画『巨神兵東京に現わる』では、CGを一切使わないという条件のもと樋口監督に作品を預けた。その結果、同作で樋口監督は、大迫力の映像で日本の特撮技術の底力を見せつけるとともに、庵野総監督の期待に見事に応えることで、ふたりの信頼関係の強さを浮き彫りにしていた。

 今回の『シン・ゴジラ』がフルCGによって制作された経緯や意図は明らかになっていない。しかし、予告映像に映るゴジラの体を見て驚いたファンも多いことだろう。フルCGとは思えぬような、着ぐるみを使っていたかつての特撮ゴジラを思わせるアナログっぽさが随所に見受けられ、その巨大感と威厳といったリアルさ、そして躍動感がしっかりと映し出されているのだ。フルCGでありながら、そんなアナログな特撮っぽさが垣間見えるのが、庵野総監督と樋口特技監督のキャリアと愛が詰め込まれている所為なのだろうか。日本を代表するふたりのクリエイターによる新たなゴジラの姿、その作品の全容にいま熱い注目が集まっているのは間違いない。

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