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山下智久ライブレポート “茨の道”を選び10年、ソロの王道アイドルを目指して

  • ツアー『FUTURE FANTASY』は8月31日、再び東京国際フォーラムでファイナルを迎える。

    ツアー『FUTURE FANTASY』は8月31日、再び東京国際フォーラムでファイナルを迎える。

 約2年半ぶりとなるツアー『TOMOHISA YAMASHITA THE BEST LIVE TOUR 2016 FUTURE FANTASY』を開催中の山下智久。同ツアーの6月16日、東京国際フォーラム公演の模様をレポートする。懐かしいジャニーズJr.時代の映像や数々のヒット曲、さらに新たな試みにも挑戦した山下。事務所に入所してから20年、ソロデビューから10年。グループを脱退し、自らソロアーティストの道を選んだ山下は、いまステージの上でどんな姿を見せてくれるのだろう。

30代のアイドルは、自分を磨いてダイヤモンドのように

 10代の、少年の日のアイドルは、しばし硝子にたとえられる。限りなく透明で、周りの光を集めて、混じり気がなくキラキラ光っているけれども、繊細で、危うくて、脆い――。壊れそうなものばかり集めてしまうのが10代なら、自分を磨いて磨いて、ダイヤモンドのような強さと複雑さで、でも妖しさも失わぬまま自由に輝けるのが、30代のアイドルなのかもしれない。東京フォーラムで開催された山下智久のソロコンサートを観ながら、ふと、そんなことを思った。

 大袈裟に聞こえるかもしれないが、山下智久というアイドルを何か美しいものにたとえるなら、花とか星とか太陽とか、動物とか架空の生物というより、宝石が一番ふさわしい気がする。それも、ルビーとかエメラルドとかサファイヤのような色のついた石ではなく、無色透明なダイヤモンド。彼のソロコンサートに足を運んだのは久しぶりだが、MCにしても演出にしても、前回の印象より数段洗練され、歌やダンスのスキルもアップしていたことにまず驚かされた。

新たなサプライズに、「抱いてセニョリータ」などヒット曲も満載

 ジャニーズ伝統の後輩Jr.がバックダンサーを務めるような演出は一切なく、女性2人、男性4人のプロのダンサーとともに、ダンスで魅せるだけでなく、フレアバーテンダーのパフォーマンスで会場を沸かせたり、光るコップを使って“カップス”を披露したり。「EVERYBODY UP」ではアコースティックギターの弾き語り、「君の瞳の中に見えた丸くて青い星」ではブルースハープを演奏するなど、“こんなことまでできちゃうの?”というサプライズ感が満載だ。もちろん、「抱いてセニョリータ」「SUMMER NUDE’13」といったヒット曲も、今の彼らしい大人っぽさで歌い上げる。

 ダンサーの一人が、「山Pは楽屋でもずっと筋トレしてる」と話していたけれど、たしかにその肉体のフォルムも、動きのしなやかさも、日に日に進化していっているのがわかる。ソロは、自分との戦いだ。グループのように、役割分担があるわけではないから、ライブ中は一切休むことはできない。不得意なものを、メンバーに任せることもできない。頼ることもできない。でも、逆に言えばこのコンサートでは、ソロでしかできないことに溢れていた。結局、カッコイイところも、カワイイところも、ただただ美しいところも、スリリングなところも、ストイックなところも、お茶目なところも、やんちゃなところも、全部出し尽くしてこその山下智久なのだ。

グループではなくソロで……山下が志す王道アイドルの道

 グループのライブの場合、人と人との戯れによって独特の空気が生まれたり、激しいぶつかり合いによって火花が散ったり、信頼関係の中で新たなステージにたどり着くことができたり、その場で目撃することのできる物語がたくさんあることも魅力だ。ソロを選んだということは、あえて茨の道を行く決心をした、ということなのだろう。そして、ソロでやっていく資質と情熱を持っている人は、本当にごくわずかしかいない。それだけでもかなりの希少種だ。

 彼が、どんなにトロッコに乗って会場を回っても、ファンと次々にハイタッチを交わしても、どこか寂しそうな孤高の存在に見えるのは、たぶんそのストイックさゆえだ。彼が好きな音楽は、応援ソングよりもラブソングで、健全さよりも大人っぽさや妖しさや切なさを、共有しようとしているのではないだろうか。

 ジャニーズ事務所に入所して20周年、ソロデビュー10周年の節目となる今年、MCの後にジャニーズJr.時代の映像が流れ、『8時だJ』(98年〜99年、テレビ朝日系で放送のバラエティ番組)などでJr.たちに歌い継がれた「Can do! Can go!」を当時の振り付けそのままに披露した。10代のときも、20代のときも、31歳になった今も、彼は特別に美しい生命体であり続ける。グループとしての仲の良さよりも、絆よりも、ただ個が持つ輝きを多面的に見せていくという意味で、彼は必死で、ソロとして王道のアイドルのあり方を守り続けているのかもしれない。集団で進化するよりも、個人で進化する方がずっとずっと難しいはず。でも、31歳の山下智久は、誰にとっても“観てよかった”と思える充実のステージを提示していた。
(文/菊地陽子)

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