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T.M.Revolution、デビュー20周年を振り返る「乱気流みたいな20年」

高橋みなみの才能をみすみすムダにするのはもったいない

――そこにはメンタル的な危機感もあるんですか? 「明日、突然モチベーションが下がったらどうしよう」みたいな。
西川貴教 あ、それはないです。本当に日々、生きることに精一杯だし、漫然と生きるのは嫌だなって常に思っているから。僕、毎日がサプライズみたいな人生がいいんですよ。

――それはそれで疲れそうですが(笑)、単調な生活を送りたいとは思わない?
西川貴教 思ってないんでしょうね。単調になったことがないから想像がつかないんだけど。その代わり、何をやってもうまくいかなくて、どうなっちゃうんだろう? ってことも散々あった。だけど、今こうやって何となくですけど、みんなから「コイツは次に何をするのかな?」って興味を持っていただけている状況はすごくありがたいし、かつ僕にとって一番、自分を活かせる状況かなと思っています。だからその分、家にいるときは、ぼんやり生きてますよ。

――でもそれはほんのつかの間の時間で、何日も休みをとってダラーッと休むことはないですよね。
西川貴教 自分をストイックに追いつめて制限しているわけじゃないんだけど、少ないですね。だからこの生活サイクルに合わせて一緒に遊べる人はなかなかいない。

――20周年関連事業の企画・運営のために西川さんが設立した「株式会社突風」の特別顧問は高橋さん。一緒に運営するようになったいきさつは?
西川貴教 5〜6年間、高橋みなみさんの仕事ぶりや周りの人に対する接し方を見ていて、ここで培われたせっかくの才能をみすみすムダにするっていうのはもったいないと思ったんです。それを公で生かせる機会を作れたらいいなと思って起用しました。

――高橋さんも常に全力で仕事に取り組む印象がありますし。
西川貴教 そうですね。そこらへんの性格は僕と似ている。でも普段は本当に普通の女の子ですよ。ていうか、僕もみなさんが思っている以上にか細いから、もっと優しく接した方がいいですよ。

――接してるつもりですが(笑)。
西川貴教 いや、もっと優しく。もっと気にかけたほうがいい(笑)。もう正直、毎日叩きのめされていますから。だけどそこで動くことを辞めたら、そのなかで経験できたことを手放すことになる。それは20年やってきて感じているから、やり続けるしかないんです。

――20年間で自分自身も変わったと思います?
西川貴教 いや、性格的なものは変われないです。そろそろいい大人なんだから、丸くなりたいけど、ダメですね。だって、できるできない関係なく、やっぱりまだまだ上にいきたいですもん。

――そのためには“角”を失いたくないと。西川さんの場合、そこでぶつかるエネルギーが次の壁を越える尋常じゃない原動力になっている気がします。『イナズマロック フェス』なんかも当時、アーティストがフェスを開催するなんて誰も思いつかなかったですよね。
西川貴教 でも、今でこそ少なからず地域や社会にいい影響を与えられたと思ってやっていますけど、スタート時は僕もそんな崇高なものは考えてなくて。そもそもは自分の家族とか身近な人を幸せにしたいって思ったところが『イナズマロック フェス』を始めるきっかけだったんですよ。

良くも悪くも音楽性なんてありゃしない

――ではここまで続くとは思っていなかった?
西川貴教 続けたいとは思ってましたけど、自分ひとりの力には限界があるから、組織作りとか、それに賛同してくれる人を集めないといけないじゃないですか。そこらへんは未知数でしたよね。

――そういうビジネス的な思考とアーティストとしてのクリエイティブな部分を両立させているところが、西川さんの希有なところですよね。
西川貴教 いや、両立できていないし、難しいですよ。毎日、そこはぶつかっていて、どっちかに集中したいとも思うし、そうなれたらいいなと思う。でも、性格的にやらなきゃ気がすまないんです。心では誰かやっといてよって思うんだけど。いつかそうなれたらいいなぁ……。

――願望ですか(笑)。プロデューサー・西川貴教から見ると、T.M.Revolutionはどんなアーティストだと思います?
西川貴教 良くも悪くも音楽性なんてありゃしないんだけど、お題を与えると、いろんな風に形や色を変えられる人かな。そういう意味ではひとつのキャラクターとして存在している感じがするし、アーティストとかミュージシャンっていうカテゴリーにはいない気がする。もっと別のものっていうか。だからこそ“彼”にはできないこともあって、そういった部分をどういった形で取りこぼさず具現化できるかってところを“西川貴教”がやっているんだと思います。10周年のときにabingdon boys schoolをやったのも、そういうことですからね。

――abingdon boys schoolの活動は今振り返ると?
西川貴教 いまだに「abingdon boys schoolはどうなってるの?」って言われますからね。僕の中でも、全く過去のものではないので折に触れてどっかできちんと活動していきたい。なんせ体はひとつだから、いろいろ難しい部分があります。

――a.b.s.のときはインタビューでも西川さんの雰囲気が違いましたよね。メンバーの一員という感じである意味、“まかせている”感じもあった。
西川貴教 自分本位でできるのがソロの醍醐味でもあるけど、バンドとなるとバンドの意志っていうものがありますから。そこらへんがおのずと表にも出ていたんじゃないですかね。ただ、10周年のときにa.b.s.名義でバンド活動をやったように20周年ってタイミングでもまた、次のフェーズに入っていく気がするんですよ。例えば韓国のガールズグループのA0Aから声を掛けてもらってコラボレーションしたっていうのも、オファーを受けたのは厳密に言うとT.M.Revolutionじゃないですからね。そういった部分が伸びることで違った可能性が見えたらおもしろいかなと。

――さらにボーダーレスな活動を増やしていきたい?
西川貴教 そうですね。特に今年は20周年というのもあるから、ファンの人に会う機会を作りたいし、国外のみなさんとも会えるチャンスがあったらいいなと思います。その一環としてAOAとコラボレーションしたことで、K-POPでもJ-POPでもないおもしろいものが生まれたし、期せずして7月には台湾のプロダクションと「Thunderbolt Fantasy」というファンタジー人形劇でひとつの作品を作ることにもなっていて。そういった国や地域をまたいだ作品作りを含めて、いろいろ活動を広げて行きたいです。

――初めての人とコラボレーションしたり新ジャンルに挑戦すると、やっぱりアガるものですか?
西川貴教 いや、緊張しますよ。だからやらないほう本当はラク(笑)。でも、どうなるんだろう? って不安や緊張ときちんと向き合えばそれが形になって、少なからずみんなからも結果として喜んでもらえるものになる。で、結果やっておいて良かったなと思うことが多いんです。

――では、最後に20年は短かった? 長かった?
西川貴教 そりゃ、短いでしょ。あっという間ですよ。みんな同じこと言わない?

――THE ALFEEさんは「長い間、いろいろあった」とインタビューで言っていました。
西川貴教 だってあっちは40年以上でしょ?! 俺の倍だもん、それは長いよ! そこと比べちゃ悪いでしょ(笑)。

(文:若松正子)
T.M.Revolution オフィシャルサイト(外部サイト)

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