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過熱する“チケット転売問題” アーティスト側、ファン側それぞれの思いとは?

 ライブ・マーケットが盛り上がりを見せ、それとともにチケットの争奪戦が過熱を帯びてくるなか、大きな問題となっているのが「チケットの転売」だ。先般のμ’sのライブではチケット転売サイトで数十万の値がつきネットで話題となったが、人気の高いライブのチケットには、法外とも言えるような価格が設定されていることも少なくない。「その値段でもいい」というファンがいるから取引が成立しているわけでもあるが、けっして“健全”なチケットの譲渡とも思えない。こうした状況を憂うアーティスト、作り手サイドでは、“本意ではない”チケットの横行に歯止めをかけるべく、嵐が今回のツアーから導入した「顔認証」のように様々な“規制”を設けざるを得ない状況になっている。そこで、ORICON STYLEでは、チケット転売対策の厳格化に対するユーザーの意見、さらに音楽業界側、双方の意見について取材し、この問題に迫っていく。

理解は示しながらも「気軽に行けなくなる」という意見も

 ORICON STYLEでは、10〜50代の男女1000人に、コンサートの転売対策に関するアンケートを実施した。「コンサートチケットの転売対策が厳しくなることについてどう思いますか?」という質問では、【賛成】が72.6%と、【反対】を大きく上回る結果となった。コメントを見ていくと、【賛成】と答えた人では、「転売でファンでもない誰かの利益にするより、適切な値段で本当に参加したい方々が買えた方が、アーティストにとっても嬉しいと思うし、もちろんファンにも良いと思う」(岐阜・10代女性)、「金儲けしたいだけの人へチケットが回ってしまうのは許せない。チケットを取れなかった人がそこに手を出してしまうのは、本当に行きたいと思う気持ちが強いから仕方ないこと。とにかく、転売目的の人が買えないようなシステムにするのは賛成」(大阪・30代女性)と、“規制はやむなし”という声が多かった。しかし、基本的には【賛成】としながらも、「ある程度の規制には賛成。でも、厳しくなりすぎるとめんどくさいだけかも。転売を擁護するつもりはないが、それで高額になるということはそれだけ人気なんだと、一種のバロメーターのようにも思える」(神奈川・30代男性)という意見もあった。

 【反対】では、悪質な転売に対する規制には理解は示しながらも、「確かにダフ屋や、高額に転売する人は許せないが、仕事の都合などで行けなくなった人が低価格で転売するのは、チケットの有効利用になるし、コンサート会場で空席があるのは寂しく思う」(広島・40代男性)、「運営側の気持ちもわかるが、顔認証など本人が当日どうしても行けなくなった場合のことを無視したやり方が目立つような気がする」(神奈川・30代女性)、「転売の悪用はだめだと思うけれど、行く側にも都合が悪くなってしまうこともあると思うし、気軽に行きづらくなる」(北海道・20代女性)など、現状の規制方法には問題があるとする意見も少なくなかった。

「チケット転売サイト」高額取引を問題視 法整備も課題

 コンサートを運営している音楽業界は現状をどのように捉えいるのか。現在、業界として問題視しているのが、「チケット転売サイト」での高額なチケット取引だ。「転売サイトの存在が、転売目的でチケットを購入する人たちの増加につながっていて、純粋にコンサートを観たいと思っている人たちが、チケットを買えない状況になってきています」と話すのは、音楽プロダクション231社が加盟する日本音楽制作者連盟の野村達矢氏。「アーティストに愛情を持って観たいとチケットを求めている人たちにコンサートを観てもらいたいし、正規の値段でチケットを買ってほしいというのが我々の基本姿勢です。こちらが打ち出しているチケット料金というのは、それより高い値段で見てほしいとは一切思っていないもので、制作費等を切り詰めながら、熟考の末、ぎりぎりの利益を残すくらいのところで設定しているものです。高額でのチケット取引により、本来ならばグッズ購入や他のアーティスト公演鑑賞など、アーティストや主催者サイドに還流されていたかもしれない収入が減ってしまうと、僕らが次の投資につなげられない。先々、音楽を楽しむこと自体を、お客さん自身がつぶすことにもなるということはわかってほしいなと思います」(野村氏)

 しかし、現在、チケット転売サイトでの取引はどんなに高い価格がついていても、転売目的であったと認められなければ、規制する手段はない。また、ユーザー側に高額な取引=ダフ屋行為と変わらない、という“罪”の認識がなく、だんだんエスカレートしていっていることも問題だ。「法的な部分での違法性が追いついていない部分があるので、マナーとか倫理観を持って接してほしいということをお願いするしかありません。CMも流れているから、僕らも認めているもののように思われるのは明らかな誤解です。多くのアーティストも含めて僕ら主催者、制作者側は、むしろやってほしくない行為だと思っていますし、あってほしくないサイトだと思っています。僕らもIDチェックしてから入場させる、というのは意図することではない。やりたいからやってるわけではなく、現実的に、そういうことをやらざるを得ない状況になってきているんです」(野村氏)

 ただ、コンサートプロモーターズ協会 会長の中西健夫氏は、転売対策を厳格化することに対しての懸念についても語る。「僕らも、今のチケットの売り方、価格設定が正しいかどうかというのは、当然考えています。例えば、チケットを購入して、急用ができても、『転売禁止』と謳っていると誰かに渡すことはできない。それも含めて、どう考えていくかということも必要だし、転売サイトで法外な値段で売られていても、『それでも欲しい』というファンの心理もわかる。需要があるから成立しているという事実は、僕は否定しません。でも、これ以上こうした状況がエスカレートしてしまうと、コンサートそのものが根本から崩れそうなくらい怖いことだと思っているんです」。

 実際に、アーティストにとって目に見えて良くない影響も起こっている。「転売目的でチケットが大量に買われ、それらが高い値段でサイトに出てきますよね。けれども結局売れなくて、大量に余るケースもある。チケットは売れているのに転売が成立しないから空席というのは、アーティストが一番悲惨な思いをする。加えて、最初は高い値段ついているものが3日前くらいになると値崩れを起こすんです。そうすると、まるで競りにかけられているみたいで、本当に悲しいことです」(中西氏)

 実は海外でも同様にチケット転売問題が表面化している。それに対して様々なアーティストが遺憾の意を表明しており、ノエル・ギャラガーは「偽造チケットを手にしているのと一緒」としながらも、チケットの転売が合法である限り「政府がカタをつけないかぎり、続いていくことになる」と語っている。現状の法整備のもとでの抑止力として講じられているのが、一連の“規制”なのだが、あまりに厳しくしてしまった結果、コンサートそのものの楽しさを損なうことにもなりかねない。中西氏、野村氏によると、現在、業界をあげて新たな仕組み作りに乗り出しているというが、まだ追いついておらず、現状ではユーザーの倫理感にゆだねられている状況だ。まずは今一度利用するユーザーが、チケットの転売にまつわる問題を明確に理解し、倫理をもって接していくことが必要になるのかもしれない。

(文/田井裕規)

集計期間:2016年3月28日(木)〜4月5日(火)
調査対象:合計1000名(自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】会員10代、20代、30代、40代の男女)
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査

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