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ドラマ減退傾向のなかで気を吐く『金曜ナイト』、確立された“ブランド枠”

ドラマ視聴率の低落傾向が続き、2015年には連ドラ枠の廃止が続いた。『水戸黄門』『大岡越前』などを生んだTBS系「月8」、『HOTEL』『渡る世間は鬼ばかり』などの同「木9」、『古畑任三郎』『踊る大捜査線』などのフジテレビ系「火9」が相次ぎバラエティ枠に。フジテレビ系の昼ドラ(月〜金曜13:25〜)も2016年3月で終了という。

『TRICK』の大ヒットが契機、プライムにない自由さがウリ

 そんななかで、安定した視聴率と独自のカラーを維持しているのが、テレビ朝日系「金曜ナイトドラマ」(23:15〜)だ。2015年には7月期の『民王』が「ザテレビジョンドラマアカデミー」の最優秀作品賞ほか4部門を受賞するなど、高い評価を受けた。その枠としてのブランド力はどう培われてきたのか。

 「金曜ナイトドラマ」は2000年4月からスタート。2作目の『TRICK』が人気を呼び、続編や劇場版、スピンオフの『警部補 矢部謙三』まで制作された。以後、映画化や続編ができた作品には『スカイハイ』『特命係長只野仁』『時効警察』『スシ王子!』『都市伝説の女』などがある。視聴率は最高が2007年の『特命係長只野仁 3rdシーズン』の平均14.3%(最終回17.0%)で、深夜帯では破格の数字。他にもヒット作は10%を越え、多くが7〜8%台と安定している。

 人気の要因は最初のヒットとなった『TRICK』に集約されている。まず、適度なユルさ。『TRICK』は、ストーリー的には救いのない結末が多いミステリーだったが、仲間由紀恵が演じるマジシャンと阿部寛が演じる物理学者の軽妙な掛け合いや散りばめられた小ネタからコミカルな印象が強く、肩の力を抜いて観られた。多くの視聴者が1週間の仕事を終えてクールダウンする気分に合っていた。

 そして、プライムタイムにない自由さ。仲間は今でこそトップ女優だが、『TRICK』以前は並外れた美貌ながらパッとせず、これが初の連ドラ単独主演。美人女優の彼女に、堤幸彦氏の演出で“貧乳”呼ばわりされる三枚目的な役を振り、そのギャップが新鮮だった。阿部も“巨根”という設定があったり、登場人物は変人ばかり。それでいて新興宗教や悪徳商法など、ドラマで扱いにくい題材にも切り込んだ。

 『特命係長 只野仁』シリーズも、主演の高橋克典が「大人が悪ふざけで作っている」と語っていた。主人公は昼は窓際係長、夜は会長直属のトラブルシューターとの設定だが、髪形を変えてメガネを外しただけなのに同一人物と気づかれないなど、ツッコミどころは満載。しかしそこはお約束で、サラリーマン活劇として楽しめた。毎回のお色気シーンも深夜ならではの“サービス”だった。

継承される金曜深夜の空気感

 そうした作風は2015年の『民王』でも継承されていた。総理大臣と息子の人格が入れ替わる設定は荒唐無稽ながら、強面の遠藤憲一が“女子力男子”になって可愛らしい振る舞いをするのが笑いを誘ったり。遠藤と菅田将暉が親子役で主演というキャスティングもプラムタイムなら難しいところだが、実力は申し分ない2人だけに振り切った演技で盛り上げていた。菅田がかつて主演した『仮面ライダーW』の決め台詞が入るなど、小ネタも多く盛り込まれていた。

 テレビ朝日では月〜木曜の同時間枠「ネオバラエティ」で実験的な番組作りに取り組み、『アメトーーク!』が定番となって、『ナニコレ珍百景』などはゴールデンに進出した。「金曜ナイトドラマ」もドラマにおける実験枠だったが、深夜といっても23時台でマニアックに走りすぎず、幅広い視聴者が楽しめる良い意味で“B級”を貫くような路線が定着した。さらに、昨今は民放5局が連携した公式ポータル『TVer』などで、テレビ番組をネットで好きな時間に観られるが、「金曜ナイトドラマ」は金曜深夜に観てこそハマる空気感を大切にし続けている。

 視聴者的にはジャンルやキャストに関わらず、ハズレは少ない安心感と目新しいものが観られる期待感が根付いた。視聴率が深夜帯としては悪くない数字で安定しているのは、枠自体の固定ファンが少なくないから。ドラマでは今や貴重な“ブランド枠”となっている。
(文:斉藤貴志)?

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