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安全地帯の2人によるユニット・ワタユタケが語る、音楽業界の現状と長く続けられた理由

 来年結成35周年を迎える安全地帯のギタリスト、矢萩渉と武沢侑昴の2人がユニット「ワタユタケ」を結成。クラウドファウンディング「muevo」にて限定CD『TWIN GUITAR』を発売し、目標を上回る達成率をあげた。ファンからの要望により、同作に2曲プラスされた完全版CDが3月23日にユニバーサルミュージックから発売される。長年第一線で活躍する秘訣、新たな販売スタイルや音楽業界の現状など、ワタユタケの2人が率直に語った。

新たな販売形態クラウドファウンディングへの挑戦とは

  • (左から)矢萩渉、武沢侑昴

    (左から)矢萩渉、武沢侑昴

  • (左から)矢萩渉、武沢侑昴

    (左から)矢萩渉、武沢侑昴

――どういう経緯で、ワタユタケを結成することになったのですか?
矢萩 これまでも、2人で新人のアーティストをプロデュースしたり、作品を作ったりということはやっていて。やっぱり歌モノが好きだから、歌モノに関わるようなことはずっとやっていました。
武沢 一方で安全地帯は、ずっとツインリードギターと玉置の歌という形でやってきて。インストの曲もたまにやったりしていたんだけど、せっかくツインリードでやっているんだから、インストで楽しんでもらえるものもやってみてもいいんじゃないかって。
矢萩 それと、プロデューサーの末崎正展さんから薦められたというのもありますね。

――おふたりのアルバム『TWIN GUITAR』は、インストですが、歌心を感じる作品だと思いました。
矢萩 インストだからと言って、フュージョンみたいにテクニックを聴かせるようなものにはしたくなかった。
武沢 もともと泣けるようなメロディが好きなので、ギターでもそれは同じなんです。

――収録曲は、新曲もありながら、クラシックや安全地帯のカバーも収録されていて。
矢萩 プロデューサーを含めた3人で、それぞれがこの曲をやりたいというアイディアを出し合いました。「アメイジング・グレイス」は、僕がやりたいとアイディアを出しました。これはすごく有名な名曲だし、歌詞の荘厳な内容も含めて、簡単に手を出していいものか? と、最初は少し迷ったんですけど。ずっと昔から好きな曲なので、この年齢まで頑張ってきた自分へのご褒美として、やってもいいかなって。
武沢 「ツァラトゥストラはかく語りき」は、僕からの提案です。小学生のときに観た映画『2001年宇宙の旅』で使用され、宇宙が舞台のお話とクラシックの交響楽曲という組み合わせに衝撃を受けました。そういう交響楽団が何十人で出す音を、ギターを中心にした少人数編成でやったら楽しいんじゃないかと思って。

――安全地帯のカバーについては?
矢萩 個人的には「時計」という曲をやりたくて。構成はすごくシンプルなんですけど、昔から良い曲だと思っていたんです。実際にインストで演奏してもいい曲だと実感したし、やっぱり玉置はすごいなって思いました(笑)。玉置には、メールでこれとこれをカバーさせてもらうという報告はしましたよ。「わかったよ」くらいの簡単な返事でしたけど。まだ聴かせていないので、聴いてどんな反応をするか楽しみです。

――今回は、クラウドファウンディングというやり方での発売になったわけですが。
武沢 こういうやり方は初めてです。でも、自分たちの演奏もすごくノッて録れたので、それをたくさんの人に聴いてもらえたらいいなと。
矢萩 最初は何のこっちゃ? という感じでしたよ。でも、わからなかったからこそ、じゃあやってみようかなと思えたのも事実です。ただ、ファンも50代後半〜60代が増えていて、クラウドファウンディングと言われても、わからない人が多いだろうと思うので、実はそこが不安なところでもあります(笑)。でもまあ難しく考えるよりも、ネットで買い物をする感覚でいいんじゃないかなって思います。

――クラウドファウンディングというと、制作資金集めに使われるわけですが、今回は資金集めにとどまらないものになっているんですね。
末崎 CD制作からリリースパーティーの開催、さらには、おふたりが所有するギターをプレゼントさせていただくという、オークション的な要素も含めています。制作費を調達しながら制作が進んで行くわけですが、その進行状況がおふたりからもその都度みなさんに報告されていきます。制作の過程から楽しんでもらえるという点では、参加意識とか応援意識がより生まれるんじゃないかと思います。あと、参加していただいた方の名前が、ブックレットにクレジットされます。そういう意味では、アーティストとファンの距離がより近い手法だと考えています。

――ただCDを作って売るだけでは、なかなか聴いてもらえない時代。おふたりは、そういう音楽の最前線に長年立たれていて、どんな風に感じますか?
武沢 どんどん売れなくなりましたね。もう6〜7年前からだと思います。ここ数年は、それがよりひどくなっているなと実感しています。もちろん売れている方もいるでしょうが、厳しいのが現状です。
矢萩 でもそれは、仕方のないこと。音楽のあり方や聴き方が、まったく変わったので。僕らが始めた30年くらい前は、アーティストというのは限られた人だけがなれる特殊な職業だった。それが今は、極端なことを言うと誰でもなれるものになってしまった。それだけ音楽が日常に浸透しているわけだけど、そのぶんアーティストの数もものすごくたくさんいる。そりゃあ、みんな大変ですよ。

――そういうなかで、今回の制作でよりこだわったことは?
武沢 聴いて心にくる気持ちの良い音ですね。それは音質のいい音という意味に限らず、たとえばアナログレコードの音はどんどん劣化していくけど、すごくいい音だなって思うんです。録音技術だけのことではなく、いいと感じてもらえる音にしたいと思いました。ある程度まではマイクとか機材の問題はあるけど、その上でどういう気持ちで弾くかということを考えました。
矢萩 テクニカルな問題はどうでもいいわけではないけど、変にそこにこだわるより、もっとこだわるべきところがあるという感じだと思います。気持ちとかニュアンスとか。

安全地帯を長く続けられた理由は、まったく分からない

  • (左から)矢萩渉、武沢侑昴

    (左から)矢萩渉、武沢侑昴

――ところで、安全地帯は2017年で結成35周年とのこと。長く活動されてきた秘訣みたいなものは?
矢萩 よく聞かれますけど、まったく分からないです(笑)。彼(武沢)と玉置は中学校の同級生ですし、僕とドラムの田中は、6歳のころからの幼なじみで。1個1個までは覚えてないけど、もちろんケンカもありましたし。
武沢 若いときは、酒を飲んでるうちに、気がついたらつかみ合いになっていたとか(笑)。

――今回のように、そのときどきで新しいことを採り入れながらやっていくことも、長く活動する上で大事なことでしょうね。
矢萩 そうでしょうね。アーティストは、サメやイルカと同じで、常に泳いでいないといけない生き物なので。常に頭は柔軟にしてアンテナをいろんなところに張っています。それに昔のことにこだわっていると、それ以上いい音楽は作れない。古い考えを捨てなければ前に進めないのなら、どんどん捨てていくという考え方です。
武沢 それが、音楽を続ける上での楽しさにも繋がっています。
矢萩 特に安全地帯は、昔からそういうところがあって。楽器も含めて、すべてアナログだったものからデジタルに変わって行く、そのすべてを経験して来ました。レコーディングにデジタルを採り入れたのも、一番最初だったんじゃないかな。
末崎 1986年のアルバム『安全地帯V』は、アナログ盤で3枚組でしたからね。新曲だけで30曲以上収録していたんです。当時のトップバンドが、普通はやらないことにチャレンジをしていることが衝撃でしたね。
矢萩 そういうアイディアは、たいてい玉置が思いつきで言い出すんですよ。でも、彼は技術的なことには無頓着だから、彼のアイディアを実現するためにはどうしたらいいか、そのフォローは全部我々がやるわけです。だから、けっこう大変でしたよ(苦笑)。
武沢 その3枚組のときも、全部タイプが違う曲でそれぞれのアレンジを考えていく作業は大変でしたけど……それも含めてあれだけの曲をやれたのは、単純に楽しかったですね。

――若いバンドに向けて言いたいことは?
矢萩 何も言えるようなことはないですよ。僕らの時代と今では、あまりにもあり方が違いすぎるので。でも思うのは、我々の時代よりも今バンドを組むほうが、よほど大変ですよね。昔は、レコード会社や事務所がバンドを抱えて、ちゃんと面倒を見てくれたり育てたりしてくれていましたけど、今はそういうことをやってくれるところはないですから。1枚出してダメならハイさよならって感じ。昔は、いろんなところで人と人との繋がりがあって、みんなでなんとかしようぜっていう一体感や熱さがありました。でも今はすごくシビアと言うかクールになっている感じです。
末崎 今回のクラウドファウンディングというやり方は、ネットを介してはいるけど、お客様の声を聞きながら進めて行くという部分でも、人間くささがあると思います。そういう意味では、おふたりが楽しそうにやってくださっているのは、昔のような人間くささや普遍的なアーティストとファンの信頼関係を感じてもらえているということじゃないかって思います。

(文:榑林史章)

RELEASE

【タイトル】ツインギター(完全版)
【発売日】2016/3/23
【価格】¥3,300(税込)
【品番】UICZ-4348
【収録曲】
1.「ツァラトゥストラはかく語りき」 作曲:リヒャルト・シュトラウス 編曲:武沢侑昂
2.「冒険者」 作曲、編曲:矢萩渉 作詞:村上明彦
3.「組曲(惑星)より(木星ジュピター)」 作ホルスト 編曲:武沢侑昂
4.「夕暮れ」 作曲:武沢侑昂 編曲:武沢侑昂
5.「La-La-La」 作曲:玉置浩二 作詞:松井五郎 編曲:武沢侑昂/安全地帯
6.「時計」 作曲:玉置浩二 作詞:松井五郎 編曲:矢萩渉/安全地帯
7.「2010」 作曲編曲:矢萩渉
8.「Tristeza〜悲しみ〜」 作曲編曲:武沢侑昂
9.「アメイジンググレイス」 作曲:不詳 作詞:ジョンニュートン編曲:矢萩渉
10.「Misterio〜神秘〜」 作曲編曲:武沢侑昂
11.「 olvidando〜忘却〜」 作曲:矢萩渉 武沢侑昂 編曲:矢萩渉
12.「楽園の君に」 作曲、編曲:矢萩渉 作詞:村上明彦
13.「impression〜印象〜(月とペンギン)」 作曲編曲:矢萩渉
14.「春風」 作曲編曲:武沢侑昂
ワタユタケ オフィシャルサイト(外部サイト)
クラウドファウンディング「muevo」(外部サイト)

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