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遅咲きアーティストの秦 基博、10年目にして叙情性溢れる歌が評価

 来年でデビュー10周年を迎える秦 基博の約2年ぶりとなるアルバム『青の光景』(16日発売)が、初週に42,2万枚を売り上げ、12/28付週間アルバムランキングで2位に初登場した。アルバムでは、『Signed POP』(2013年1月30日発売)と『Documentary』(2010年10月6日発売)が最高3位。今作で1位には届かなかったものの、自身の最高位記録を更新。これまでも高い評価を得てきた一方で、ここに至るまでに約10年かかった“遅咲き”のアーティスト。彼の音楽性や歌声が10年かけて浸透してきたことで、ファン層を広げている。

デビュー当時から業界内で評価が高く、“逸材”と言われてきた

  • 秦 基博のアルバム『青の光景』

    秦 基博のアルバム『青の光景』

 秦は、2006年11月にシングル「シンクロ」でメジャーデビュー。アコースティックギターをかき鳴らしながら歌う叙情性あふれる音楽性は、当時から評価が高く逸材と言われてきた。特に力強さと繊細さを兼ね備えた歌声に対する注目度は高く「鋼と硝子でできた声」と評され、全国43局のFMラジオで、パワープレイ決定数の新記録を樹立したほど。「鱗」(2007年)や「朝が来る前に」(2009年)、「アイ」(2010年)といった曲は特に人気が高く、バラードの「朝が来る前に」や「アイ」は、広いレンジを使ったメロディで、ひんやりとした質感と胸の奥から感情がわき上がるような歌声が印象的だ。

 また、杏子や山崎まさよし、スキマスイッチ、元ちとせなどの実力派が名を連ねるオフィスオーガスタに所属することからも、実力の高さがうかがえる。決して派手に活躍するタイプではないが、寡黙に「いい曲」を作り続ける姿勢と楽曲のクオリティには、その先輩たちも太鼓判を押す。それは他のアーティストからも同様だ。

 秦への評価が高まるきっかけは、昨年8月に発売された映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌「ひまわりの約束」。郷愁に溢れたメロディと切なくも清々しい歌声が、多くの人の胸を掴んだ。最高位10位とランキングは振るわなかったが、映画のヒットと共に楽曲は一般のリスナーへと幅広く広まってロングセールスを記録するに至った。その後は、河瀬直美監督の映画『あん』主題歌の「水彩の月」、映画『天空の蜂』の主題歌「Q & A」が続き、一躍彼の名前は誰もが知るところとなった。それは業界も同様で、映画『あん』では、河瀬直美監督が彼の本物の歌声に惚れ込んでの直々のオファーだった。実際にアルバム『青の光景』収録曲の約半数には、何かしらのタイアップが付いている。このことからも、様々な業界が彼の歌を高く評価していることがうかがえる。

デビュー10周年を目前にしてのブレイクは必然

 ここまで来るのに10年かかったが、スタンスは昔から決して変わってはいないのも事実。では何が変わったのか?本物の歌を求める本物志向のリスナーが増えたことがひとつあるだろう。時代を反映した流行の楽曲にはない、「本物」の音楽を欲するリスナーが増え、彼らが求める本物が、秦 基博の音楽にはあったのだ。今月23日発表のオリコン年間カラオケランキングでは、秦 基博の「ひまわりの約束」が2位を獲得。これは多くの人が彼の本物の歌を求め、リスナー自身が歌いたいという気持ちに至った結果と言える。

 そんな「本物」が味わえるライブは、非常に人気が高い。10年でオリジナルアルバム5枚の発売に対して、2枚のライブアルバムと配信限定で3作、さらにライブ映像作品などライブに関わる作品を多く発売しているのも、そうしたファンの声の反映だろう。なかでもアコースティックライブは人気で、静まりかえった会場の真ん中にポツンと佇み、スポットをライト浴びながら聴かせるバラードは天下一品。歌声ひとつで観客を引きつける魅力を持っている。ライブの良さが、徐々に口コミで広まっていったことも、今年の活躍につながっている。

 この10年について秦は「あっという間でした」と言う。「特に最初の5年は早かった。そこから地に足をつけて、これからどうするんだ? って、いろんなことを試行錯誤し始めたので、全体的にはあっという間ですが、後半の5年は長かったです」。今後については「より好き勝手にやりたいです」と、世の中の評価などどこ吹く風といった様子で、実にマイペースだ。決してブレることなくストイックに音楽と向き合って来た秦 基博。流れの激しい音楽業界にあってそれを維持することはとても難しいことだが、それができたのは彼の中に、「本物」が備わっているからこそ。その本物に対する正当な評価がなされたことは、実によろこばしいことだ。

(文:榑林史章)
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