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世界的ダンサーの菅原小春が語る、世界と日本のダンサー事情の違い

コレオグラファーは、観察して想像することが大事

――ダンサーとしての菅原さん、コレオグラファーとしての菅原さん。ふたつの面を持っているわけですが、どのような違いがありますか?
菅原 自分が踊らずにコレオグラフだけする場合は、そのアーティストさんのどの角度がカッコイイか、どの角度がキレイとか、人間として美しく見える角度や部位を見つけて振りを付けます。そこには自分のスタイルも上手く落とし込みたくて、どうやったらフュージョンできるかをすごく考えますね。でも、やっぱり私は振りを考えるときって、ファーストインプレッションでやるのが基本なので、アーティストさんのために考えるときは、いつも以上にすごく時間がかかってしまいます。

――『情熱大陸』でも、首のラインが女性らしさを出すポイントだという話をしていましたが。
菅原 首の話はあくまでも自分の場合で、自分の身体の長所や短所を、どう活かしてどう隠すかというセルフプロデュースの話の一貫で、そういう話をしたのだと思います。男性は男性でカッコイイパーツは別にあるし、その人その人にいいパーツがあって、振りを考えるときはそれがベースになっていることが多いです。でも、単純に人を見て、ここがカッコイイなとか思ったり……人間観察が好きなんです。

――振り付けは人間観察から始まると。
菅原 確かにそうです。あまり考えたことがなかったんですが、言われてそう思いました。アーティストさんのMVやライブ映像を観て、この人はこういう性格なのかな? って想像するし。それが当たってるかどうかは別で、観察して想像することが大事なのかなって。

海外はダンスそのものにフォーカスが当たっている

――世界30ヶ国以上で活動されていると菅原さんから見て、海外と日本ではダンサー事情はどう違いますか?
菅原 日本のようにアイドルとかジャンルではなく、海外はダンスそのものにフォーカスが当たっていると感じます。一般の人もみんな注目していて、ダンス番組も多いし。専門のエージェンシーもあるし、大規模なコンペティションも頻繁に行われています。だからと言って、私が率先して日本をそういうレベルにしていきたいとか思ってるわけではなくて。むしろそういうことすら越えて、もっと違った次元で活動していきたいんです。誰も見たことがないものをつくりたいので、それを見つけてクリエイションしていく作業が好きなんです。日本は右向け右で、どうしても枠の中で踊ってるイメージですね。その枠をボンって壊してグチャグチャにしてもいいから、枠を越えて個性を出している人は、本当に少く感じます。なので、そういう人をたまに見つけたときは「うわっ!」って思います。テクニックって練習すれば誰でも身につくものですが、そこからどう色付けしてクリエイトして、自分というものを知って、いかにセルフプロデュースしていけるかが大事だと思います。

――実際に「うわっ!」と思った人は?
菅原 アーティストで自分の個性でダンスの振り付けや構成までやっている三浦大知さんは尊敬しています。歌、歌詞、ステージ演出まですべてやっているので。歌もダンスもやって、新しいことにも挑戦している。本当にすごいなって思います。

――そんな日本と海外の違いも分かったうえで、菅原さんのスタンスはどういうものですか?
菅原 ダンスはダンスじゃないというのが、私のモットーです。世の中から言われるいわゆるダンサーと言うのは、誰々の後ろで踊ってたとかCMにちょっと出てたとか、そういう人のことを指しますが、「それは何でだろうな?」って思うんです。たとえばダンサーが服を着たら、その服の見せ方の幅をモデルさんよりも広げられたりだとか、持ってるパワーをいろんな方向に向けられるのに、その可能性があまり認められていないと感じます。なので、それを証明したいと思っていて。

――アーティストの歌や画家の絵のように、ダンスを作品やメッセージとして伝えていきたいと?
菅原 言葉は言葉でしかないけど、何かを行動で示してもらえたら、みんな嬉しいと思うんです。たとえば口約束って簡単に出来るけど、それを行動で示すのはすごく大変なこと。私はこういう人だ、こんなにスゴイんだって口で言うのではなく、言わなくても自分のダンスや表現だけで、相手に伝わったり心に届けられたらいいなと思っています。

――ちなみに『情熱大陸』の中で、「5年経ったら辞める」と言っていましたが。
菅原 5年経ったら心も体も持たないくらいになって……というくらいに今突っ走っていますという意味で言いました。そのくらい1つひとつ取り組まないと気が済まない性格なんです。どんなに疲れていても100%出して、それで身体が折れても明日死んでしまっても、悔いが残らないように日々全力を尽くしていたいという気持ちのあらわれです。

――目標や目指すものはありますか?
菅原 目標とする人はいません。常に自分が目指す自分になりたいと思っています。自分の感情にどれだけ勝って、強くなって、どれだけ課題をクリアしていくかということ。だから、ここまでやったらゴールみたいな、具体的なものはないです。今興味あることに対して、全力でやるだけ。昨日できなかったことを今日はできるようにして、ダンスの幅を少しずつでも広げていって。その姿をより多くの人に知ってもらって、クリエイションしている感覚を自分でも楽しんでいたいです。

(文:榑林史章/写真:下田直樹)

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