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(更新: ORICON NEWS

テレビから消えゆく“未成年の主張” その背景は?

 V6の20周年を記念して先日、かつての人気番組『学校へ行こう!2015』(TBS系)が一夜限り7年ぶりに復活した。名物企画「未成年の主張」のダイジェストも流されたほか、新たに収録もされ、視聴者からも「やっぱり面白い」「再レギュラー化できないのか」などと歓喜の声があふれ、平均視聴率も17.4%と好調だった。かつては、『真剣10代しゃべり場』(当時NHK教育)や『天才・たけしの元気が出るテレビ』(日本テレビ系)、『さんまのSUPERからくりTV』(TBS系)などにも、多くの一般の10代学生や天才小学生たちが出演していたが、近年はそうした10代の未成年たちの声をテレビで聞く機会がめっきり減ってきている。こうした流れの背景にはいったい何があるのだろうか?

かつては未成年の本音が垣間見える討論番組も

 『学校へ行こう!』は1997から2005年に放送され、V6がレギュラー出演し、中高生を中心とした学生たちを応援する人気バラエティ番組である。特に「未成年の主張」コーナーは番組のウリであり、校舎の屋上から主張者の学生が「〇〇したいことがある!」と叫ぶと、校庭にいる全生徒が「なーにー?」と聞き返し、主張なり告白が始まるのだが、“アソコに毛が生えてきた”“(姉が弟に)もう一緒にお風呂に入らない”“〇〇さん(くん)が大好きだ”といった、ちょっと恥ずかしくて普段は言えないようなことを思い切り叫ぶというもの。

 思春期の男女なら誰もが思い悩むことを、衆人環視の中で(それもテレビで)告白する勇気に校庭の生徒も視聴者も共感し、あるいは身にもつまされて感動したのである。『真剣10代しゃべり場』(2000〜2006年)も中学生以上の未成年たちが、台本も司会者もなく自由に討論するといった形式が話題になり、類似番組として『世代密林〜ジェネレーションジャングル』(2002〜2003年)いわゆる“ジェネジャン”も放送された。ジェネジャンはKinKi Kidsの堂本光一が司会をし、いじめやセクハラ、自殺など、けっこうヘビーなテーマを本気で熱く語り合う内容でも注目された。

 こうした未成年たちが、“腹を割って”“本音”をぶつけ合う姿を見せる番組は、同世代の若者たちにとっても、共感・反感はあるせよ、ある種の問題意識に気づくきっかけになる。それは保護者や大人たちも同じで、反抗期の子どもとの疎通がなくなった親や、普段未成年と接する機会がほとんどない大人たちは、そうしたテレビ番組を通して、彼らの“生”の声をある程度聞けたわけである。

“SNS”の拡大で“テレビ”から消えた未成年たち

 しかし、2007年以降、SNS利用者が1000万人を超えたあたりから、こうした未成年たちがテレビから消え始める。先述の『元気が出るテレビ』や『からくりTV』などにもさかんに登場し、お茶の間を楽しませてくれた天才小学生や、個性あふれる小学生たちもほとんど見なくなった。それはmixiなどの既存のSNSに加え、ブログやツイッター、フェイスブックなどが爆発的に普及し始め、テレビに出ずとも多くの人間との対話・討論が可能となったことにもよるだろう。さらに、『学校へ行こう!』の灘高のダンスユニット「灘6」や、『元気が出るテレビ』の企画「ダンス甲子園」、『からくりTV』で有名になった“ギター少年”などに代表される、パフォーマンスの表現媒体としても、今やYouTubeやインスタグラムなどの動画・画像共有サービスがあれば十分なのである。
 
 10代の未成年たちがテレビで扱われなくなってきた背景には、もちろんそうしたIT事情のみならず、プライバシーのセキュリティ問題がある。SNSやインターネットによって、テレビに映った学校名や名前、さらに住所や家族構成その他の個人情報が拡散されるリスクも増えているのだ。また、テレビへの露出や発言が賛否両論を呼び、第三者から嫌がらせを受けたり、画像や映像を悪用されたり、イジメに繋がったりすることまでも考慮しなければならなくなったのである。

 最近ではBPO(放送倫理・番組向上委員会)の影響も強くなっており、番組制作側も未成年の取り扱いに関してはどうしても慎重にならざるを得ない。何かが起こってからでは遅いので、必然的にコンテンツから一般の未成年をはずしていくという流れになるのだ。

テレビから未成年が消えたことによる“未成年と大人のミゾ”

 もちろん未成年を犯罪から遠ざけるという意味で防犯意識は大事だし、実際に未成年の露出を控えればトラブル回避にも繋がる。しかし一方では、SNSの爆発的普及や各種アプリ開発によって、未成年と大人たちの間にあるミゾがどんどん深まり始めているのも事実なのだ。テレビの現場から一般の未成年が消えたことにより、少子化が進む中、大人たちが未成年たち(学生・子ども)のリアルな現状を知る選択肢がなくなってきているのである。あるいは、彼らのことはSNSに書き込まれる情報やネット、実際の事件の報道などでしか知ることができなくなっていると言ってもいいかもしれない。このままだと未成年と大人のミゾは、ますます深くなっていくような気もする。

 今回の『学校へ行こう!2015』への絶賛ぶりを見ても、こうした市井の未成年がリアルな言動を見せるコンテンツは、今でもまだまだ需要があるということだ。現在の多くの視聴者たちにもきっちりと“刺さる”企画なのである。

 時代が移り変わるにつれて、情報手段もどんどん更新されていく。もちろんテレビのあり方も変わっていくだろう。しかし、ネットやその他の媒体にはないテレビの役割や意義があるはずだし、そうしたものを打ち立てていく姿勢は見失わないでほしいものである。

(文/五目舎)

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