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デビュー20周年の相川七瀬、波瀾万丈のアーティスト人生とは

 デビュー20周年を迎えた相川七瀬が、織田哲郎の楽曲をカバーしたアルバム『TREASURE BOX』を発売。制作にあたり何度もやり直しをして織田サウンドを 追求した“師弟”エピソードのほか、サウンド同様、まさにロックな波瀾万丈のアーティスト人生について相川七瀬が語った。

相川七瀬の良さは、パンチがあるということ

――デビュー20周年目にして初のカバーアルバムが発売されましたが、相川さんにとって“師匠”でもある織田哲郎のナンバーだけを集めたかなりコンセプチュアルな作品になっていますね。
相川 実は15周年のときにこの企画をやりたいと思っていたんですけどOKが出なかったんです。自分的にもその頃は新しい方向性を模索していた時期だったので、そのタイミングでカバーアルバムを作るのは不十分だよねって、スタッフとも話になって一旦、延ばしたんですね。で、20年目の今回、改めて織田さんにやりたいって言ったら、アレンジに関して一定のクオリティが出ない限りは認められないよって話になりました。そこから1年ぐらいかかってアレンジの方向性をみんなで出し合いながら、やっとここまで辿り着きました。

――楽曲のセレクトはどのように?
相川 楽曲をどうするかという話の前に織田さんから、どういうアレンジで作るのか考えなきゃいけないってすごく言われたんですよ。織田さん自身、自分の提供した曲をカバーした「Songs」っていうアルバムを出しているんですが、「俺ですら(自分の曲を)すごく考えてカバーしたんだから、相川は自分がやる意味ってものを明確にしなきゃいけない」と。だからまず、全体のアレンジコンセプトを練るのが大変でした。最初に、「世界中の誰よりきっと」と「いつまでも変わらぬ愛を」をやりたいって話をしたら、当初、織田さんにはものすごく反対されました。この2曲のアレンジが一定のクオリティに仕上がったら、レコーディングしてもいいよって“宿題”を出されました。(笑)

――厳しいですねぇ。
相川 そうですね(笑)。それで、「世界中の誰よりきっと」で数パターン作って歌入れも終わったものを聴いてもらったんですけど、結局「これじゃ、ダメだな」と言われました。

――ダメだった理由は?
相川 織田さんが言ったのは「相川七瀬の良さってものは、パンチがあるっていうこと。誰もお前にまとまった綺麗な歌を歌って欲しいなんて思ってない、お前に求められているものはパンチだ!!」って。その言葉で爽快に目が覚めたというか方向性が見えた。私自身がここに収録する曲を大事に思いすぎて原曲に忠実にアレンジした方がいいのではないかと思っていたところがあったので、この言葉は私に取ってとても“パンチ”のあるアドバイスでした。それまでやっていたものを1回、全部無しにして、アレンジチームを組み直し改めて取りかかりました。レコーディング自体は根を詰めて3週間ぐらいでしたが、そこまでの足踏みがすごく長かったです(笑)。でも、織田さんのサウンドへのこだわりとか、コンセプトを構築していく感じっていうのを久しぶりに体感して勉強になりました。こういう風に作っていくんだ! ってこの節目に、織田さんの元で仕事をやらせてもらえて良かったなと思います。

――ちなみに最初、織田さんが「世界中の誰よりきっと」と「いつまでも変わらぬ愛を」をすごく反対した理由って何だったんですか?
相川 「世界中の誰よりきっと」よりも「いつまでも変わらぬ愛を」を私が歌うのが、とてつもなく抵抗があったみたいですよ(笑)。この曲って王道のポップスじゃないですか。でも相川七瀬はロックで真反対の世界観だから、そういうキャラクターではないだろう!?という気持ちがあったらしくて。それは最後までとても話し合った部分でした。私としては織田さんの曲を歌うアルバムなのに「いつまでも変わらぬ愛を」が入っていないのはやはり、寂しい。でも織田さん自身「いつまでも変わらぬ愛を」は大切な曲だし……というところがあったのだと思います。でも出来上がってCDを渡したときは、「聴いたけどかっこ良かったよ!」と言ってくれたのでホッとしました(笑)。

“本当の自分”と“アーティストの自分”は別モノ

――でも、“織田哲郎”に特化したカバーをできるのは、やはり“相川七瀬”だけなのかなと。そこは相川さんもこだわりがあったんじゃないですか?
相川 そうですね、ありましたね。10曲に収めるのが大変だった(笑)。織田さんの曲といっても他のアーティストさんの楽曲をカバーをするとなると、ファンの方の思いなどもありますし、そこは丁寧に敬意を込めてやりたかった。私のやりたいって想いと、そういった状況が合致した曲がここに入ってきた感じです。

――そのなかでも、歌ってみて特に難しかったもの、改めて印象が変わった曲を挙げるなら?
相川 どれも歌詞カードを見なくても歌えるぐらい歌い込んできた大好きな曲だったので、歌のチューニングができないってことはありませんでした。でも自分の名前で出す限り自分のサウンドで歌にしないといけい。そこで、どう相川七瀬ってものを出しながら原曲を伝えるのか。その置きどころですごく迷ったのは「碧いうさぎ」と「翼を広げて」でした。特に「翼を広げて」はメッセージ性プラス、別れの淋しさとか切なさのある曲なので、切なさを全面に出していくのか、それとも別れの先にある出会いを見据えていくのか。どっちの方向に向くかってところはディレクターとものすごく話し合って歌を作っていきました。

――そういう意味ではカバーではありますが、相川さんのオリジナル曲以上に“相川七瀬”色が出ている気がしました。
相川 それは嬉しい言葉ですね! これが他の方が書いたメロディだとこうはならなかったと思います。織田哲郎のメロディだからこそ、もっと理解したい気持ちが強くなったし、他の人の曲ではあるけれど、限りなく自分に近い人の曲を歌わせてもらってるという感覚もあって。

――どの曲も根っこには織田哲郎の共通DNAが入っていると。
相川 そう。だから歌っても違和感がない。そこは自分でも不思議な感じでした。

――あと今回はゲストボーカル陣も豪華で。特に寺田恵子さん、杏子さん、中村あゆみさんを迎えた「BOMBER GIRL」は、文字どおり爆発してました(笑)。
相川 もうね、狼の吠え合いですよ。それぞれの狼が山から下りてきたような、白熱感がすごくてブースの中が戦場になってました(爆笑)。

――お三方の中でも、特に寺田さんの貫禄は圧倒的。男性よりも女性ロッカーの方のほうが年齢を重ねるとより男前になっていく気がしますね。
相川 やっぱり、男性ボーカリストのほうがウェットなんでしょうね。だから女の人が聴くと沁みる。疑似恋愛も出来てしまう。でも女性ロッカーは限りなく突っ張っているんですよ。精一杯の強がりを歌う。私なんかは典型ですね。(笑)

――「世界中の誰よりきっと」でコラボした、つるの剛士さんはいかがでした?
相川 つるのくんとは同い年で共通点も多くバラエティでも、歌の現場でもよく一緒に仕事をさせてもらっています。「世界中の誰よりきっと」を一緒にやりたいってお願いしたら、案の定、聴いていた世代が同じで。阿吽の呼吸で、すごくマッチしました。

――そういったゲストボーカルとの楽曲も含めて、改めて“相川七瀬”らしさを追求したことで、再発見したことや感じたことはありましたか?
相川 “本当の自分”と“アーティストの自分=相川七瀬”って、別モノなんだなと。自分を出したいっていう時期もあったけど、ある意味、与えられたペルソナを通して発信していくそういう職業なんだろうなっていうのは、今回のアルバム制作ですごく考えました。それを踏まえて、みんなが求めてくれる「夢見る少女じゃいられない」や「恋心」を歌っている相川七瀬を、旧譜じゃなく今流に再現したかった。今のサウンド感やリアルとして表現していく、それができたので良かったなと思います。

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