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増加傾向の限定ライブ アーティスト、ファン、誘致側の心理は?

 ももいろクローバーZが10月31日に福岡県太宰府市の国特別史跡・大宰府政庁跡で開く男性客限定のライブ『男祭り』に関して、地元の女性団体などから「市が絡む公の記念行事が、なぜ男性限定なのか」という疑問の声が上がり、様々な議論が巻き起こったことは、主要メディアで既報の通りだが、この“○○限定”について世の中はどう捉えているのだろうか。アーティストの立場、ファンの立場、そして開催地の人々の立場で考えてみたい。

多くのアーティストが開催する“○○限定”プロジェクト

 ライブを“○○限定”で行うというプロジェクトは、ももクロが生み出した企画でもなければ昨日今日始まったものでもない。2007年には長渕剛が「Lady’s Night 2007―Acoustic―」と銘打った女性限定のライブを開催しているし、GACKT、T.M.Revolution、UVERworld、福山雅治といったアーティストはみな男性限定ライブを行った実績を持っている(福山は女性限定ライブも開催)。そして、当然のことながら今回のような“疑義”が噴出したケースはなかった。

 ジェンダー(性)に特化しなければ、もっとインパクトのある限定ライブも存在する。前述のGACKTは「ビキニ着用でヘソ出し、お腹出しマスト」というドレスコードを用いた水着着用限定ライブやその逆を行く重ね着限定ライブを敢行し、マキシマムザホルモンにいたっては「白Tシャツ縛り」「体重70キロ以上の男子限定」「体重55キロ以下の男子限定」「身長160cm以下限定」はまだしも、「入場時に生ニンニクを丸かじり、ライブ中長袖ダウンジャケット着用」「入場時に牛乳一気飲み」「ライブ中はおしゃぶりを銜え続け声を発することができず、落とせば退場」といった「罰ゲームですか?」と思えそうな条件を提示しライブを行ってきた歴史がある。当然のことながら、これらに対しても暴動が起こったことはなく、むしろ喜んで参加するファンがいるというのが現状だ。

 ファンクラブイベントも「限定」であることは同じだし、近年のアイドルシーンに欠かせない“握手会”もまた、そこに参加するための条件をクリアした人々だけの「限定」イベントだと言える。エンタテインメントの世界では古くから行われてきたものであり、参加する側もそれに従ってきた。

限定コンサートを開催する意図は?

 アーティストにとって限定ライブを行うことは、通常のライブとは異なるスタイルで挑めるというメリットがあるということ。いつもとは異なる客層、異なる景色を想定してのセットリストや演出も施せるだろうし、新鮮な感覚でステージに立つこともできるだろう。誤解を恐れずに言うなら、ライブのマンネリを打破する上でのカンフル剤ともなり得るプロジェクトだと考えられる。

 一方、ファンにとっては、ある種の制限がかけられることで、参加する条件を持った人の数が絞られ、通常よりも参加しやすくなるという点が大きい。ライブに対する関心が高まっている昨今は、チケットの入手も困難になり、とりわけ人気の高いアーティストのライブともなると、ダメだった場合を見越して数か所の会場にわたってチケットのオファーを出してもすべてハズレというケースさえある。そんなプレミアム化したチケットをゲットする際にライバルの“分母”が減るということは当然、当選確率も高まることを意味する。つまりは、アーティストにとっても、ファンにとっても、限定ライブはお互いメリットの多いイベントだと言えそうだ。

なぜ、ももクロの限定ライブに批判の声が挙がったのか?

 では、なぜ今回そんな盛り上がり必至のイベントに冷や水が浴びせられる(太宰府市の方には申し訳ない表現だが)こととなったのか。そこには、そのイベントを誘致した自治体の意向が関わってくる。これも報道で数多く述べられてきたので、誰もがよく知るところだろうが、今回のももクロのイベントは、太宰府市、同市の名所である太宰府天満宮、イベント起案の発端となった開館10周年を迎えた九州国立博物館などが実行委員会を立ち上げて計画したものだ。

 太宰府市は、2003年(平成15年)4月に「太宰府市男女共同参画プラン」を策定、2009年4月に「太宰府市男女共同参画プラン後期基本計画」、2013年5月に「第2次太宰府市男女共同参画プラン」を策定し、男女共同参画施策を総合的に推進してきたエリアである。「男女共同」を謳う市が、「男性限定」のイベントを行うのはいかがなものかというのが議論のポイントとなったわけだが、これについては、事前にもっとこうした背景についての説明がなされるべきではなかったのかと思うし、アーティストサイドもおおよそのガイドラインを太宰府市側に提示しておくべきだったようにも感じてやや残念な印象も残る。

 今回は、予定通り「男祭り」が開催されるということで、ひとまずは安心だが、近年はジェンダーフリーを宣言するエリアも少なからず生まれており、今後こうした問題が生まれないとも限らない。個人的には、ライブシーンを活性化する「限定ライブ」には大賛成だが、開催する地域の事情とのすり合わせも今後は重要案件となってきそうな気がする。

(文/田井裕規)

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