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「バーテンダー世界一」金子道人が語る、世界がうらやむ“おもてなし術” とは?

 バーテンダー世界一を決定する世界大会「ワールドクラス」の2015年日本代表に選出された金子道人さん(奈良県「LAMP BAR」)が、8月31日から9月3日にかけて南アフリカで行われた同大会の「グローバルファイナル 2015」に出場。各国の予選を突破した54ヶ国の代表が集まるなか、見事総合優勝を飾った。同大会は今年で7回目を数えるが、日本人としては2011年の大竹学さん(パレスホテル東京)以来、2人目の快挙。そこでORICON STYLEでは、帰国したばかりの金子さんにインタビューを敢行。現在の心境と今後についての思いを聞いた。

世界大会は、自分がどのレベルにいるのか、全然わからなかった

  • 「ワールドクラス」の2015年日本代表に選出された金子道人さん

    「ワールドクラス」の2015年日本代表に選出された金子道人さん

 「(優勝者として)名前を呼ばれた瞬間は嬉しかったですけど、全然英語ができないので、よくわからなかったです。司会者の女性の方も、ビヨンセみたいな感じの人で、この人と目を合わせると質問されるから、絶対目を合わせんとこうと思いました(笑)」と、冗談めかしで表彰式のことを語る金子さん。だが、「大竹さんの優勝に続けたことはすごくうれしいです」と、やはり日本人2人目という偉業に、喜びもひとしおだ。

 「世界で2人のチャンピオンを出した国はなかったんです。採点競技ですから、同じ国からチャンピオンになるのは難しそうじゃないですか。でも、そういう意味で、より難しいことをクリアでき、タイトルを引き戻せたというのは、大きく自信を持っていい部分かなと思いました」。
 この世界大会では、合計6種目の競技(チャレンジ)を行うが、金子さんによると、「日本大会よりも、時間などがかっちり決まっている感じではなかった」そう。しっかりと準備をし、気持ちを高めていくタイプの金子さんにとっては、合わないスタイルだが、逆にそれが奏功したと笑う。「ミスはもう仕方がないと思ってやりました。なので、今まででもっとも緊張しませんでした」と、勝因の一つを説明する。

 「それに、日本大会はライバルと戦ったというイメージが強いんですが、世界大会は、自分がどのレベルにいるのか、全然わからなかった。もうとにかく自分を貫くしかない、自分の技術や味には自信を持って、それを100%表現することが大事だなと。それだけしか考えていませんでした」。

 ちなみにこの大会は、作品としてのカクテルの味を競うものと思われがちだが、そうではない。「よく、『優勝カクテル、ちょうだい』って言われるんですが、これはカクテルコンクールではなくて、バーテンダーコンクール。だから、『あなたの好きな味を言っていただいたら、そのカクテルをつくります。そのためのコンクールですから』と言うんです」と金子さん。同大会では、各審査員がお客様であり、誰かのためではなく、その人のために考えたカクテルを出さなければいけない。加えて、所作やサービスなど、バーテンダーとしてのすべてが審査される。

日本人は世界のバーテンダーの目標の一つになっている

 それだけに強みとなるのが、じつは「日本の“おもてなし”」だと金子さんは言う。「日本のバーテンディングはよくガラパゴスと言われています。海外は、生産性とか合理性を求めますが、日本はおしぼりを出すところから始まって、コースターにこだわっていて、所作にこだわっていて、という対応。ちょっとしたことに気づくとか。毎年、日本人バーテンダーのところには海外の選手が来て、全部研究していきます。そういった意味で、日本人は世界のバーテンダーの目標の一つになっています」。

 ただ、だからといって、日本人なら簡単に優勝できるわけではもちろんない。最高の“おもてなし”をするための、金子さんの普段の練習や準備は半端なものではない。「もし、間違えて何かを出したときのためのこともやっていました。緊張して、何か違うことを言ってしまったらどうしようというときのための逃げ方も全部つくっていました。やっぱりいちばん大事なのは、失敗の練習をするかどうか。それがいちばん失敗しない方法かな」。
 金子さんは、こんな興味深いエピソードも明かしてくれた。「2日目に、1人のバーテンダーが挨拶してきたんです。その方が僕の仕事を見て、『普通の出場者は、何か説明するときに、一つひとつ止まりながら説明するけれども、あなたは常に体や手を動かしながら効率よく、つくっている。所作が、身に染みついている。それは世界であなただけだから、たぶん優勝するんじゃないか』みたいなことを言われたんです。僕は全然気づいていなかったですし、そういうところが着目されるとも思っていなかったんですが、それって練習量じゃないですか。練習量と、日頃からどう意識するか。普段から緊張して練習しているか」。

 そんな金子さんの不断の努力を支えているのが、じつは奈良県の並み居る先輩たちだという。「奈良は、第1回大会は誰もエントリーしなかったんですが、第2回からはベスト10にずっと残っていて、日本チャンピオンも僕を含めて3人がなっています。また、コンクールに参加していない方でもすばらしい技術、知識を持っている人がたくさんいます。みんな、技術提供とか知識提供を率先してやりますし、僕が世界大会に出るとなったら、歴代のチャンピオンが、『ウチの弟が出るから』みたいにバックアップしてくれるんですよ。練習のときもいっぱい集まって、僕の練習を支えるというのを徹底してやってくれました。だから僕は、プレゼンテーションなどの練習は、1人では1回もやってないんです」。

 それだけに、金子さんの今後の目標も、「伝えていくこと」にある。しかも、その視線は世界へも向けられている。「大会から帰るときに、海外の人に、『ぜひ、私の国に、日本のバーテンディングを教えに来てくれ』と言われたんです。海外の人が僕の技術や所作をマネすると、1杯つくるのに40分かかるそうで、『だから、みんなやらない。できないからやらないんだよ。あなたは2分ぐらいでつくれるでしょ。教えてくれ』と。日本のバーテンディングの技術を、今度は海外のバーテンダーができるように教えていけたらと思いますね」。

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